心房細動患者に対するエドキサバンvsワルファリン
ご訪問ありがとうございます。
参考文献 Edoxaban versus warfarin in patients with atrial fibrillation.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24251359
PMID:24251359
研究デザイン:ランダム化比較試験(非劣勢・優越性)
ランダム化されているか?
→ランダム化されている
盲検化されているか?
→二重盲検されている
論文のPECO
P:21歳以上でCHADS2スコア2点以上の中等度~高度心房細動のある患者21,105名
E:エドキサバン(低用量:30mg、高用量:60mg)
C:ワルファリン:INR2.0~3.0になるよう用量調節
O:(Primary) 【有効性】脳卒中と全身塞栓 【安全性】:出血
※CHADS2スコア・・・心房細動患者における脳卒中発症リスクの評価指標。5項目(心不全:1点、高血圧:1点、75歳以上:1点、糖尿病:1点、脳卒中/TIA既往:2点)の合計6点で点数が高いほど、脳卒中発症リスクが高い。
※除外基準
可逆性障害による心房細動、推定クレアチニンクリアランス<30mL/min、高度の出血リスク患者、DAPT、中等度~重度の僧房弁狭窄症、ACS、冠動脈再建術、ランダム化前30日以内の脳卒中、研究の手順を守れない者
一次アウトカムは明確か?
→明確と言える
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
ITT解析を行われているか?
※非劣勢:modified ITT解析 優越性試験:ITT解析
非劣勢マージン:1.38
追跡期間
→中央値2.8年
脱落率は結果を覆すほどあるか?
→追跡率99.5%
結果
★Primary outcome(脳卒中と全身塞栓症)
非劣勢(mITTによる)
・ワルファリン232/7036件 1.50%/年
・高用量エドキサバン 182/7035件 1.18%/年
vsワルファリン HR=0.79(97.5%CI:0.63~0.99) p<0.001
・低用量エドキサバン 253/7034件 1.61%/年
vsワルファリン HR=1.07(97.5%CI:0.87~1.31) p=0.005
※97.5%CIの上限が、非劣勢マージンの1.38を超えていないので非劣勢が認められている
優越性(ITTによる)
・ワルファリン337/7036件 1.80%/年
・高用量エドキサバン 296/7035件 1.57%/年
vsワルファリン HR=0.87(97.5%CI:0.73~1.04) p=0.08
・低用量エドキサバン 383/7034件 2.04%/年
vsワルファリン HR=1.13(97.5%CI:0.96~1.34) p=0.10
★心血管死亡
・ワルファリン611/7036件 3.17%/年
・高用量エドキサバン 530/7035件 2.74%/年
vsワルファリン HR=0.86(95%CI:0.77~0.97) p=0.013
・低用量エドキサバン 527/7034件 2.71%/年
vsワルファリン HR=0.85(95%CI:0.76~0.96) p=0.008
★大出血
・ワルファリン524/7012件 3.43%/年
・高用量エドキサバン 418/7012件 2.75%/年
vsワルファリン HR=0.80(95%CI:0.71~0.91) p<0.001
・低用量エドキサバン 254/7002件 1.61%/年
vsワルファリン HR=0.47(95%CI:0.41~0.55) p<0.001
感想
まず、Primary outcomeの非劣勢に関しては、低用量エドキサバン、高用量エドキサバンともに、97.5%信頼区間の上限値が非劣勢マージンの1.38を超えていないので、非劣勢が示されている(少なくともワルファリンに劣らない)。優越性は、95%信頼区間より差が出にくい97.5%信頼区間を使ったためか、ワルファリンと比較して統計学的有意差は出ていない。
大出血は、ワルファリンとの比較で、高用量エドキサバンはHR=0.80、低用量エドキサバンはHR=0.47といずれも有意に少ないという結果である。
これが妥当な考え方なのか分からないので自信が無いが、大出血のNNHを計算してみると、ワルファリンと高用量エドキサバンでは1471人/年、低用量エドキサバンでは549人/年という事なので、その絶対差としては大きくないように感じた。出血リスクの高い患者は除外されているようなので、このような患者ではややエドキサバンの方がいいかもしれないが。
エドキサバンは薬価もワルファリンと比較すると相当高価なので(ワルファリン1mg=9.6円/1錠、エドキサバン30mg=538.40円/1錠、エドキサバン60mg=545.60円/1錠)、この金額の差を埋められるほどの利益とは言えないかなと個人的には感じた。どうしても納豆を食べたいという患者や、PT-INRを測らなくてもよいというような患者側へのメリットはあるので、この辺りとの兼ね合いも考慮する必要はあるが・・・。他のNOACの比較も気になるので、今後調べていきたい。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。
シロスタゾールで認知症のリスクは抑えられますか?
ご訪問ありがとうございます。
以前も1度同じような内容の研究を取り上げた事がありますが、シロスタゾールと認知症に関する論文です。
アブストラクトしか読めませんが、興味のある分野なので読んでみました。
参考文献 Cilostazol Use Is Associated with Reduced Risk of Dementia: A Nationwide Cohort Study.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=28194663
PMID:28194663
研究デザイン: 一般人口対象コホート研究
論文のPECO
P:もともと認知症の既往が無い40歳以上の患者9148名
E:シロスタゾール服用あり→2287名
C:シロスタゾール服用無し→6861名
O:認知症発症
研究対象集団の代表性
→台湾の国民健康保険データベースが用いられており、大きな問題は無いかと思われる
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
調節した交絡因子は何か?
→年齢、性別、合併症、併用薬(詳細はアブストラクトからは不明)
追跡期間
→不明
結果
認知症発症
調整HR=0.75(95%CI:0.61~0.92)
・シロスタゾールの用量と認知症発症の間に用量依存的な関連性が見られた
★サブグループ解析
・虚血性心疾患を有する患者における認知症発症
調整HR=0.44(95%CI:0.24~0.83)
・脳血管疾患を有する患者における認知症発症
調整HR=0.34(95%CI:0.21~0.54)
感想
シロスタゾールの服用で認知症が予防できるかもしれなという結果。シロスタゾールの服用量との相関も見られたとの事なので、少なくとも認知症発症とシロスタゾール服用の間に関連はありそう。
サブグループ解析では、虚血性心疾患や脳血管疾患を有する患者ではそれぞれ調整HR=0.44、0.34ということで、これらの疾患を有する場合は良いのかもしれない。
以前ドネペジルにシロスタゾールを上乗せするか否かでMMSEの変化を見た研究の論文を読んだが、軽度認知症患者では有意差こそ出ていたものの、スコアの変化量としてはわずかなものだった。
また、具体的な交絡の調整や、認知症の診断を受けた人数がアブストラクトからは分からず、この結果だけをもって認知症予防に対してシロスタゾールを積極的に勧めることは出来ない印象。
個人的にもかなり興味深い所なので、関連論文も読んでみようと思う。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。
納豆を食べると脳卒中は防げますか?
ご訪問ありがとうございます。
先日、スマホのニュースで、納豆と脳卒中に関する記事を読んだので、原著論文も読んでみたいと思い検索してみました。アブストラクトしか読めないものの、簡単にまとめてみました。
参考文献 Dietary soy and natto intake and cardiovascular disease mortality in Japanese adults: the Takayama study.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27927636
PMID:27927636
研究デザイン:一般人口対象コホート研究
論文のPECO
P:岐阜県高山市在住の35歳以上の男性13355名、女性15724名
E:納豆を良く食べる
C:納豆をあまり食べない
O:心血管疾患による死亡
※納豆の摂取量に応じて研究対象集団を4群に分けているよう
研究対象集団の代表性
→岐阜県高山市の一般人口を対象にしており大きな問題は無いかと思われる
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
調節した交絡因子は何か?マッチングされているか?
→アブストラクトに記載なし
追跡期間
→16年
結果
心血管疾患による死亡
納豆の消費量上位25% vs 下位25% HR=0.75(95%CI:0.64~0.88)
※総大豆たんぱく質摂取量、総大豆イソフラボン摂取量、納豆以外の食品からの大豆タンパク質・大豆イソフラボン摂取量によっては、有意な減少は見られなかった。
全脳卒中による死亡
大豆たんぱく質の消費量上位25% vs 下位25% HR=0.75(95%CI:0.57~0.99)
納豆の消費量上位25% vs 下位25% HR=0.68(95%CI:0.52~0.88)
虚血性脳卒中による死亡
納豆の消費量上位25% vs 下位25% HR=0.67(95%CI:0.47~0.95)
感想
アブストラクトのみであり、交絡因子など詳細は分からないが、納豆を食べることにより心血管疾患による死亡、特に虚血性脳卒中による死亡を抑えることが出来るかもしれないといった結果。
上位25%の消費量がどれぐらいなのか?など疑問は残るものの、納豆の消費と脳卒中の発生の間に関連がありそうである。
以前、朝食と脳卒中に関する国内の論文も読んだが、毎日朝食を食べた方が脳出血の発生は少ないという結果であった。
以前の記事はこちら→ http://pharm-niiyan.hatenablog.com/entry/2017/02/05/020259
納豆は朝食べるイメージがあるので、納豆を食べている人は朝食をしっかり食べる傾向にあるということもあるのかもしれない。
いずれにせよ、そもそも自分はしっかり朝食を食べる習慣を身に付ける必要があると感じている。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。
糖尿病患者にはレニン-アンギオテンシン関連薬が他の降圧薬より有効ですか?
ご訪問ありがとうございます。
今回は、糖尿病患者に対するACE-I、ARB使用は、その他の降圧薬(カルシウム拮抗薬、チアジド系利尿薬、βブロッカー)と比べて死亡や心血管イベントを減らす事が出来るかを検討した、システマティックレビュー&メタアナリシスの論文を読んでみました。
参考文献 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=26868137
PMID:26868137
研究デザイン:システマティックレビュー&メタ分析
論文のPECO
P:糖尿病患者25414名
E:レニン-アンギオテンシン関連薬(ACE阻害薬、ARB)
C:その他の降圧薬
O:死亡、心血管死亡、心筋梗塞、狭心症、脳卒中、心不全、血行再建術、末期腎臓病
一次アウトカムは明確か?
→アウトカムが複数存在するので、結果の解釈には注意が必要
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
4つのバイアス
1、評価者バイアス
・3名の評価者がそれぞれ独立して論文選定・データ抽出
※意見が割れた場合は議論
評価者バイアスはさほど問題なさそう
2、出版バイアス
情報元:PubMed、EMBASE、Cochrane
・言語制限なしに論文検索されている
・その他、参考文献等も検索されている
→出版バイアスはさほど問題なさそう
3、元論文バイアス
Cochran risk of bias toolを用いて元論文の質を評価
→Table1より、大体がrisk of biasはlow riskである
元論文バイアスもさほど問題なさそう
4、異質性バイアス
→心筋梗塞、心不全、末期腎不全など異質性のやや高いものもあるが、いずれもフォレストプロットを見た感じでは同じような方向の結果が多い
結果
平均追跡期間:3.8年
死亡
RR=0.99(95%CI:0.93~1.05) I2=0%
心血管死亡
RR=1.02(95%CI:0.83~1.24) I2=2.5%
RR=0.87(95%CI:0.64~1.18) I2=48.1%
RR=0.80(95%CI:0.58~1.11) I2=3.8%
RR=1.04(95%CI:0.92~1.17) I2=12.2%
RR=0.90(95%CI:0.76~1.07) I2=47.7%
血行再建術
RR=0.97(95%CI:0.77~1.22) I2=0%
末期腎不全
RR=0.80(95%CI:0.61~1.05) I2=48.4%
有害事象による薬物中止
RR=0.99(95%CI:0.78~1.28) I2=67.7%
★サブグループ解析
・RAS vs カルシウムチャネルブロッカー RR=0.78(95%CI:0.70~0.88)I2=0%
・それ以外のアウトカムは、RAS vs カルシウムチャネルブロッカー、RAS vs チアジド系利尿薬、RAS vs βブロッカーの間に有意差無し
考察
いずれのアウトカムも、レニン-アンギオテンシン関連薬(RAS)vs その他の降圧薬の間にほとんど差が見られなかったという結果。
サブ解析ではあるが、カルシウムチャネルブロッカーとの比較でRASは有意に心不全を減らす事が出来る(RR=0.78 I2=0%)、そしてそのNNTは41ということで、まずまずの結果かなとは感じた。
しかし、それ以外のアウトカムはいずれも他の降圧薬使用と比較してほぼ同等ということなので、ACE阻害薬ならまだしも、薬価が割高なARBをあえて使うと考えると、そのメリットはあまり大きくないのかもしれない。
今回は、ACE-IとARBをひっくるめた結果だったので、ACE-Iのみ、ARBのみの結果も気になる所。元論文も読んでみようと思う。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。
75歳以上の高齢者はしっかり血圧を下げた方がいいですか?
ご訪問ありがとうございます。
今回は、あの有名なSPRINT試験のうち、75歳以上の患者を対象にしたサブ解析の論文を読んでみました。
参考文献 Intensive vs Standard Blood Pressure Control and Cardiovascular Disease Outcomes in Adults Aged ≥75 Years A Randomized Clinical Trial
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=27195814
PMID:27195814
研究デザイン:ランダム化比較試験
ランダム化されているか?
→ランダム化されている
論文のPECO
P:SPRINT試験の被験者のうち75歳以上の2636名
E:厳格な降圧療法(収縮期血圧<120mmHgを目指す)
C:標準的な降圧療法(収縮期血圧<140mmHgを目指す)
O:(Primary) 非致死性心筋梗塞、心筋梗塞に至らない急性冠症候群、非致死性脳卒中、急性非代償性心不全、心血管死亡の複合アウトカム
(Secondary)総死亡
※除外基準
→2型糖尿病、脳卒中の既往歴、6か月以内の症候性心不全(左室駆出率<35%)、6か月以内に10%以上の体重減少、認知症、収縮期血圧<110mmHg、施設入居者
一次アウトカムは明確か?
→複合アウトカムなので明確と判断して良さそう
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
盲検化されているか?
→盲検化されていない(血圧測定で見破られる可能性が考えられる)
サンプルサイズ
→3250名(パワー81.9%、α=5%)
ITT解析を行われているか?
→ITT解析されている(?)
追跡期間
→中央値3.14年
脱落率は結果を覆すほどあるか?
→追跡率100%
結果
血圧の変化
ベースラインの収縮期血圧 E群:141.6mmHg C群:141.6mmHg
治療期間を通しての収縮期血圧 E群:123.4mmHg C群:134.8mmHg
Primary outcome(非致死性心筋梗塞、心筋梗塞に至らない急性冠症候群、非致死性脳卒中、急性非代償性心不全、心血管死亡の複合アウトカム)
E群102/1317 2.59%/年(95%CI:2.13~3.14)
C群148/1319 3.85%/年(95%CI:3.28~4.53)
HR=0.66(95%CI:0.51~0.85) p=0.001 NNT=27(3.14年で)
E群37/1317 0.92%/年(95%CI:0.26~1.27)
C群53/1319 1.34%/年(95%CI:1.02~1.75)
HR=0.69(95%CI:0.45~1.05) p=0.09
急性冠症候群
E群17/1317 0.42%/年(95%CI:0.26~0.68)
C群17/1319 0.42%/年(95%CI:0.26~0.68)
HR=1.03(95%CI:0.52~2.04) p=0.94
E群27/1317 0.67%/年(95%CI:0.46~0.97)
C群34/1319 0.85%/年(95%CI:0.61~1.19)
HR=0.72(95%CI:0.43~1.21) p=0.22
E群35/1317 0.86%/年(95%CI:0.62~1.20)
C群56/1319 1.41%/年(95%CI:1.09~1.83)
HR=0.62(95%CI:0.40~0.95) p=0.03
心血管死亡
E群18/1317 0.44%/年(95%CI:0.28~0.70)
C群29/1319 0.72%/年(95%CI:0.50~1.03)
HR=0.60(95%CI:0.33~1.09) p=0.09
非致死性心筋梗塞
E群37/1317 0.92%/年(95%CI:0.67~1.27)
C群53/1319 1.34%/年(95%CI:1.02~1.75)
HR=0.69(95%CI:0.45~1.05) p=0.09
非致死性脳卒中
E群25/1317 0.62%/年(95%CI:0.42~0.91)
C群33/1319 0.83%/年(95%CI:0.59~1.16)
HR=0.68(95%CI:0.40~1.15) p=0.15
非致死性心不全
E群35/1317 0.86%/年(95%CI:0.62~1.20)
C群55/1319 1.39%/年(95%CI:1.06~1.81)
HR=0.63(95%CI:0.40~0.96) p=0.03
総死亡
E群73/1317 1.78%/年(95%CI:1.41~2.24)
C群107/1319 2.63%/年(95%CI:2.17~3.18)
HR=0.67(95%CI:0.49~0.91) p=0.009 NNT=41(3.14年で)
有害事象
低血圧
E群:2.4% vs C群:1.4%/年 HR=1.71(95%CI:0.97~3.09)
失神
E群:3.0% vs C群:2.4%/年 HR=1.23(95%CI:0.76~2.00)
電解質異常
E群:4.0% vs C群:2.7%/年 HR=1.51(95%CI:0.99~2.33)
急性腎障害・腎不全
E群:5.5% vs C群:4.0%/年 HR=1.41(95%CI:0.98~2.04)
感想
SPRINT試験のうち、75歳以上の患者を対象としたサブ解析である。Primary outcomeのHRは0.66、NNT=27ということで血圧をしっかり下げた方が良さそうな結果と感じた。また、総死亡のHRも0.67、NNT=41となかなかインパクトがある結果。
ただ、複合アウトカムに含まれる事象で有意差が出ているものとしては心不全ぐらいであり、しかもサブ解析ということなので、この結果だけをもって75歳以上では血圧を厳格に下げた方がいいとは言い切れないという印象。適応を考える際には、2型糖尿病患者は除外されている点は注意しておきたい。
有害事象も、有意差こそ出ていないが、低血圧、失神、電解質異常、急性腎障害・腎不全いずれも厳格降圧群で高くなる傾向が見られているので注意が必要かと思う。また、記載は見当たらないが、骨折などの有害事象も気になる所である。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。
チョコレート摂取は心不全に影響がありますか?
ご訪問ありがとうございます。
そして、皆さま、ハッピーバレンタイン!
男性の皆さまは、1年のうちで1番ソワソワする日かも知れませんね(*'ω'*)
今回は、バレンタインということで、チョコレート関連の論文を読んでみました。
チョコレートの消費と心不全に関する論文です。
参考文献 Chocolate consumption and risk of heart failure in the Physicians' Health Study.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=25311633
PMID:25311633
研究デザイン:前向きコホート研究
論文のPECO
P:男性医師20278名
E:チョコレートを食べる頻度が、①月に1~3回 ②週に1回 ③週に2~4回 ④週に5回以上
C:チョコレートを食べる頻度が月1回未満
O:心不全の発症
研究対象集団の代表性
→USの男性医師を対象としているので、一般化は難しいと思われる
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
調節した交絡因子は何か?
→年齢、BMI、アルコール摂取、喫煙、運動、カロリー摂取、心房細動
追跡期間
→9.3年
結果
心不全の発生
★全体
チョコレート消費が月1回未満 5.32/1000人年 HR=1.00(reference)
1~3回/月 4.37/1000人年 HR=0.86(95%CI:0.72~1.03)
1回/週 4.12/1000人年 HR=0.80 (95%CI:0.66~0.98)
2~4回/週 4.71/1000人年 HR=0.92(95%CI:0.74~1.13)
5回以上/週 4.50/1000人年 HR=0.82(95%CI:0.63~1.07)
★BMI<25kg/㎡の被験者のみ
チョコレート消費が月1回未満 HR=1.00(reference)
1~3回/月 HR=0.86(95%CI:0.65~1.15)
1回/週 HR=0.70 (95%CI:0.50~0.99)
2~4回/週 HR=0.72(95%CI:0.50~1.04)
5回以上/週 HR=0.59(95%CI:0.37~0.94)
★BMI≧25kg/㎡の被験者のみ
チョコレート消費が月1回未満 HR=1.00(reference)
1~3回/月 HR=0.87(95%CI:0.69~1.09)
1回/週 HR=0.88 (95%CI:0.68~1.13)
2~4回/週 HR=1.06(95%CI:0.82~1.37)
5回以上/週 HR=1.01(95%CI:0.73~1.39)
感想
全体的には、チョコレート摂取が月に1回未満の群よりは、何回か食べた群の方が心不全のハザード比はやや小さくなる傾向が見られる。
サブ解析でBMIが25以下の被験者は、チョコレートを週に何回か食べた方が、ほとんど食べないより心不全のハザード比が小さくなる傾向があるようで、BMIが25以上の被験者ではあまり変わらないような結果である。具体的にどれぐらいの量食べたのか?どのようなチョコレートを食べたのか?など気になる所はあるものの。
研究の対象がUSの男性医師という事で、一般化はかなり難しい印象であり、今回の結果のみから心不全の発症抑制効果があるとは言うことが出来ないが、心不全の発生という観点からは、チョコレートをほどほどの量であれば日常的に食べてもいいのかなという印象。まぁ、甘いものは止められませんわな(´-ω-`)
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。
手指衛生の指導とフェイスマスクでインフルエンザの家庭内感染を防ぐことが出来ますか?
ご訪問ありがとうございます。
今回は、手の衛生とフェイスマスクで、インフルエンザの家庭内感染が予防できるかについての論文を読んでみました。
参考文献 Facemasks and hand hygiene to prevent influenza transmission in households: a cluster randomized trial.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=19652172
PMID:19652172
研究デザイン:クラスターランダム化比較試験
ランダム化されているか?
→ランダム化されている
論文のPECO
P:インフルエンザ様症状で外来受診し、インフルエンザ迅速検査でインフルエンザA型またはB型陽性となった(index member)407名のうち259家族の794名(contact)が解析された
E:①手指衛生(H群) ②手指衛生+フェイスマスク(HF群)
C:生活スタイルの指導(C群)
O:(Primary) RT-PCRにより確認されたインフルエンザ二次感染
(Secondary)7日後に臨床症状として確認されたインフルエンザ二次感染
※Clinical definition1:37.8℃以上の発熱、咳、頭痛、咽頭痛、筋肉痛のうち2つ以上の症状を呈する者
Clinical definition2:37.8℃以上の発熱+咳または咽頭痛
※C群:感染予防と症状緩和の両面で食生活と生活習慣の重要性を伝えた。
H群:感染予防のために手指衛生が重要であることを伝え、提供された液体石鹸を使用して手洗いをするように、また、くしゃみや咳などで手が汚れたらアルコールを刷り込むように指導。
HF群:H群の介入+家庭内感染を防ぐためにフェイスマスクが有効であることを伝え、家で出来るだけフェイスマスクを着用するように指導された。
一次アウトカムは明確か?
→明確
真のアウトカムか?
→Primary outcomeは代用のアウトカムかもしれない。Secondary outcomeは真のアウトカムと思われる。
盲検化されているか?
→盲検化されていない(盲検化できないと思われる)
サンプルサイズ
→各群100~200世帯(パワー80%、α=5%)
※100世帯では55~70%の差を検出、200世帯では45~55%の差を検出できる
ITT解析を行われているか?
→不明(Participants were analyzed in the group to which they were randomly assigned, regardless of adherence…と記載があるためITT解析されているかも。)
脱落率は結果を覆すほどあるか?
追跡率=63.6%
追跡期間
→7日間
結果
RT-PCRにより確認されたインフルエンザ二次感染(vs C群)
H群 vs C群 OR=0.57(95%CI:0.26~1.22)
HF群 vs C群 OR=0.77(95%CI:0.38~1.55)
Clinical definition1(vs C群)
H群 vs C群 OR=0.92(95%CI:0.57~1.48)
HF群 vs C群 OR=1.25(95%CI:0.79~1.98)
Clinical definition2(vs C群)
H群 vs C群 OR=0.81(95%CI:0.33~2.00)
HF群 vs C群 OR=1.68(95%CI:0.68~4.15)
★index memberが症状発症後36時間以内に介入した患者のみの結果
RT-PCRにより確認されたインフルエンザ二次感染(vs C群)
H群 vs C群 OR=0.46(95%CI:0.15~1.43)
HF群 vs C群 OR=0.33(95%CI:0.13~0.87)
Clinical definition1(vs C群)
H群 vs C群 OR=0.46(95%CI:0.22~0.96)
HF群 vs C群 OR=0.86(95%CI:0.48~1.53)
Clinical definition2(vs C群)
H群 vs C群 OR=0.64(95%CI:0.20~2.02)
HF群 vs C群 OR=1.45(95%CI:0.49~4.24)
感想
RT-PCRにより確認されるインフルエンザウイルス二次感染は、H群、HF群ともに、有意差こそ無いがオッズ比が小さくなる傾向が見られている。一方、臨床上のインフルエンザウイルス二次感染は、Clinical definition1の36時間以内のH群のみ有意な減少、他は差が無く、むしろHF群では増加傾向が見られよく分からない結果となっている。
まず、Table6を見てみると、介入のアドヒアランスが非常に低いと思われる。例えば、H群でも、手指衛生を保てたと判断されたのは全体の54%程度、HF群に割り当てられた世帯者でも、確実にマスクをしたのは全体の26%に過ぎなかったようである。また、C群でも、45%は手指衛生を保てたと判断されているし、液体せっけんによる手洗いは77%がしている。これらから、最終的によく分からないような結果となっているような気がする。
何かよく分からない結果ではあるが、少なくとも手洗いやフェイスマスクを否定するようなものではないので、どちらもしないよりはした方がいいのかもしれない。
今回の介入で、看護師からマスクの重要性の指導をしっかり受けたにも関わらず、アドヒアランスがここまで低いというのも考えさせられるので、どのように指導すればアドヒアランスが高まるのかについても検討する必要があるのかもしれない。
私、少しインフルエンザにビビりながら生活していますが、皆さんもまだまだ気を抜かずに行きましょう。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。