駆出率が保たれている心不全(HFpEF)患者へのスピロノラクトン
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今回は、HFpEF(左室収縮能が保たれた心不全)に対するスピロノラクトンの使用についての論文です。
その前に、何度か耳にしたことはあったHFpEF(heart failure with preserved ejection fraction)ですが、これまでちゃんと調べていなかったので、ざっくりした事がやっとわかりました。詳しい事はまだ分からないですが・・・。そして、読み方は「ヘフペフ」でOK?
反対に、左室収縮能が低下した心不全をHFrEF(heart failure with reduced ejection fraction)と言うみたいです。これも、読み方は「ヘフレフ」?
そんなこと知ってるわ!という方、すみません。あくまでも自分の覚え書き用です。
というわけで、本題です。
参考文献 Spironolactone for heart failure with preserved ejection fraction.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=24716680
PMID:24716680
研究デザイン:ランダム化比較試験
論文のPECO
P:50歳以上で症候性心不全ありの左室駆出率>45%、血圧コントロール良好、血清カリウム<5.0mmol/Lの患者。12カ月以内に心不全で入院歴があるか、60日以内のBNP≧100pg/mLまたはNT-proBNP≧360pg/mL
E:スピロノラクトン15~45mg/日→1722名
C:プラセボ→1723名
O:(Primary) 心血管死亡、心停止未遂、心不全による入院の複合アウトカム
※除外基準
余命3年未満、重篤な腎機能障害、特定の併発条件・薬物治療・急性イベント
※BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド):心臓に負担がかかると血液中に分泌されるホルモン。基準値は18.4pg/mL未満。
※NT‐proBNP(ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメント):こちらも心臓に負担がかかると血液中に分泌されるが、生理活性を持たず、BNPよりも血中での安定性が高いらしい。基準値は55pg/mL未満。
ロシュのHPより→https://www.rocheacademy.jp/checkup/nt/nt_bnp/index.html
一次アウトカムは明確か?
→明確
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
ランダム化されているか?
→ランダム化されている
盲検化されているか?
→二重盲検されている
サンプルサイズ
→3515名(パワー80% α=5%)
ITT解析を行われているか?
→ITT解析されている
追跡期間
→平均3.3年
脱落率は結果を覆すほどあるか?
追跡率=91%
結果
(ベースライン)
・患者の年齢:中央値68.7歳
・BMI:中央値31
Primary outcome(心血管死亡、心停止未遂、心不全による入院の複合アウトカム)
E群:320/1722件(18.6%) 5.9/100人年
C群:351/1723件(20.4%) 6.6/100人年
HR=0.89(95%CI:0.77~1.04) p=0.14
心血管死亡
E群:160/1722件(9.3%) 2.8/100人年
C群:176/1723件(10.2%) 3.1/100人年
HR=0.90(95%CI:0.73~1.12) p=0.35
心停止未遂
E群:3/1722件(0.2%) 0.05/100人年
C群:5/1723件(0.3%) 0.09/100人年
HR=0.60(95%CI:0.14~2.50) p=0.48
心不全による入院
E群:206/1722件(12.0%) 3.8/100人年
C群:245/1723件(14.2%) 4.6/100人年
HR=0.83(95%CI:0.69~0.99) p=0.04
有害事象
高カリウム血症 E群:18.7% vs C群:9.1%
感想
スピロノラクトン服用の有無で、心血管死亡、心停止未遂、心不全による入院の複合アウトカムは減らす事が出来なかったという結果。Primary outcomeを構成するイベントのうち、心不全による入院のみスピロノラクトン群で有意に少ない。しかし、あくまでPrimary outcomeではないし、ソフトエンドポイントであり、ギリギリ有意差が付いているような感じなので解釈には注意が必要かと思う。
本研究の被験者の特徴として、BMIの中央値が31とややBMIが高い患者が多いような印象。心不全の場合は水分貯留などの影響で体重は増えやすいのかな?とも思ったので、必ずしも、肥満気味な患者が多いわけでもないのかもしれない。
高カリウム血症は、プラセボ群(9.1%)と比較してスピロノラクトン群(18.7%)で2倍以上の発生率が高くなるという所も注意かと思う。スピロノラクトン服用中は、カリウム値の確認も重要で、薬局でも検査値の用紙を患者さんが持ってこられた場合、しっかり確認する必要があるのではないかなと改めて感じた。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。
スピロノラクトンは心不全患者の総死亡に影響しますか?
ご訪問ありがとうございます。
今回は、心不全患者に対するスピロノラクトンの使用と総死亡についてです。
参考文献 Association of spironolactone use with all-cause mortality in heart failure: a propensity scored cohort study.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23386667
PMID:23386667
研究デザイン:コホート研究
論文のPECO
P:2000年~2012年の間にSwedish Heart Failure Registryに登録された、NYHAⅠ~Ⅳ度心不全で、駆出率<40%の患者18852名
E:スピロノラクトン使用あり6551名
C:スピロノラクトン使用無し12301名
O:総死亡
研究対象集団の代表性
→問題無さそう
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
調節した交絡因子は何か?マッチングされているか?
→傾向スコアマッチングされている
追跡期間
スピロノラクトンあり群:中央値831日(0~3985日)
スピロノラクトン無し群:中央値811日(0~4129日)
結果
・患者の年齢71±12歳
総死亡
★全患者(NYHAⅠ~Ⅳ度)
HR=1.05(95%CI:1.00~1.11) p<0.054
★NYHAⅠ~Ⅱ度
HR=1.11(95%CI:1.02~1.21) p=0.019
★NYHAⅢ~Ⅳ度
HR=1.05(95%CI:0.99~1.12) p=0.108
感想
スピロノラクトン使用により、総死亡は減らなかったという結果である。NYHA分類による、心不全の重症度ごとのサブグループの結果においても、スピロノラクトン使用で総死亡のハザード比が下がるような結果ではない。
具体的なスピロノラクトン使用量などの記載が見つけられなかったこともあり、この結果だけでスピロノラクトン使用の是非の判断を下すことは難しい印象。
対象患者の年齢は71±12日とやや高齢なのと、追跡期間の中央値がおよそ2年なので差が出にくかったという事もあるかもしれない。少なくとも今回の結果は、高齢の心不全患者に対してスピロノラクトンの積極的な使用を推奨するようなものではないように思われる。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。
心房細動患者に対するアピキサバンvsワルファリン
ご訪問ありがとうございます。
今回は、心房細動患者に対するアピキサバンとワルファリンの有効性、安全性の比較をした研究についてです。
参考文献 Apixaban versus warfarin in patients with atrial fibrillation.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=21870978
PMID:21870978
研究デザイン:ランダム化比較試験(非劣勢・優越性)
ランダム化されているか?
→ランダム化されている
論文のPECO
P:脳卒中リスクファクターのうち少なくとも1つを持つ、心房細動患者18201名
E:アピキサバン5mg×2回/day(80歳以上、体重60kg未満、血清クレアチニン>1.5mg/dL以上のち2つ以上を満たす患者は2.5mg×2回/day)→9120名
C:ワルファリン(PT-INR2.0~3.0を目指す)→9081名
O:(Primary) 有効性:虚血性・出血性脳卒中または全身性塞栓症
安全性:大出血
※脳卒中リスクファクター:75歳以上、脳卒中・TIA・全身性塞栓症の既往歴、3カ月以内の症候性心不全または、左室駆出率40%未満、糖尿病、薬理学的治療を要する高血圧
※除外基準
可逆的要因による心房細動、中等度または重度の僧房弁狭窄症、心房細動以外の要因により抗凝固薬を必要とする状態(例:人口心臓弁)、7日以内の脳卒中、1日165mg以上のアスピリンまたは、アスピリンとクロピドグレルの併用が必要な患者、重度の腎機能不全(血清クレアチニン>2.5mg/dL、クレアチニンクリアランス<25ml/min)
一次アウトカムは明確か?
→明確と言える
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
盲検化されているか?
→二重盲検されている
ITT解析を行われているか?
→有効性:ITT解析されている 安全性:mITT解析
追跡期間
→中央値1.8年
サンプルサイズ
→18000名(パワー90%)
脱落率は結果を覆すほどあるか?
→追跡率99.6%
結果
・患者年齢:中央値70歳
・CHADS2スコアの平均:2.1点
★有効性:Primary outcome(脳卒中・全身性塞栓症)
E群:212/9120件(1.27%/年)vs C群:265/9081件(1.60%/年)
HR=0.79(95%CI:0.66~0.95) p=0.01
★安全性:Primary safety outcome(大出血)
E群:327/9088件(2.13%/年)vs C群:462/9052件(3.09%/年)
HR=0.69(95%CI:0.60~0.80) p<0.001
感想
もともと非劣勢試験だったが、非劣勢は証明されたし優越性も見ておこう!みたいな感じの研究だろうか?最終的に、脳卒中・全身性塞栓症予防効果はアピキサバンがワルファリンに対して優れている事が示されたという結論になっている。
有効性のPrimary outcomeである脳卒中・全身性塞栓症は、ワルファリン服用と比較して、アピキサバン服用群の方が有意にリスクを抑えられたという結果。一方、安全性のPrimary safety outcomeである大出血は、ワルファリン服用群に比べ、アピキサバン服用群の方が有意に少ないといった結果。計算してみると、有効性のNNTは169名であり、大出血のNNHは67名という事でワルファリンよりもアピキサバンの方が大出血のリスクは低い可能性が示唆されている。
大出血のリスクは確かにまずまずアピキサバンの方が優れているのかな?という印象も有りながら、やはり値段がどうしても違いすぎる(アピキサバン錠2.5mg:149.00円/錠、5mg錠:272.80円/錠、ワルファリン錠1mg:9.6円/錠)。
HAS-BLEDスコアなどで出血性合併症高リスク群にあたるような患者では、ワルファリンからの切り替えも1つの選択肢にはなるのかもしれないが、この論文のみでそれを結論付けることは難しいので、関連する論文も読んでいく必要がある。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。
心房細動患者へのイルベサルタンは心血管イベントを抑制できますか?
ご訪問ありがとうございます。
今回は、ARBの1つであるイルベサルタンに関する論文です。
参考文献 Irbesartan in patients with atrial fibrillation.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=21388310
PMID:21388310
研究デザイン:ランダム化比較試験
ランダム化されているか?
→ランダム化されている
論文のPECO
P:収縮期血圧>110mmHgの持続的な心房細動または、過去6か月以内に2回以上の断続的な心房細動があり、脳卒中リスクファクター(75歳以上、高血圧治療、脳卒中・TIAの既往、非中枢神経系全身塞栓症、左心室駆出率<45%、末梢血管疾患、55~74歳でかつ糖尿病または冠状動脈疾患のある者)のうち1つ以上ある患者
E:イルベサルタン300mg/日
C:プラセボ
O:(Primary) ①脳卒中、心筋梗塞、血管が原因の死亡の複合アウトカム ②脳卒中、心筋梗塞、血管が原因の死亡、心不全による入院の複合アウトカム
※除外基準
クロピドグレルまたは経口抗凝固薬を要する患者、過去6か月以内に消化性潰瘍の診断、脳内出血、血小板減少症、僧房弁狭窄症
一次アウトカムは明確か?
→明確といえる
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
盲検化されているか?
→二重盲検されている
サンプルサイズ
→9000名(パワー80%、α=0.045)
ITT解析を行われているか?
→ITT解析されている
追跡期間
→平均4.1年(中央値4.5年)
脱落率は結果を覆すほどあるか?
→4年の追跡率は約70%?(脱落が多い気がするので注意が必要かと思う)
結果
・平均年齢は約70歳
・CHADS2スコアの平均は2点
・ベースラインの血圧:E群→138.3/82.6mmHg C群→138.2/82.2mmHg
・血圧の平均低下値:E群→6.8/4.5mmHg C群→3.9/2.6mmHg
Primary outcome
E群:963/4518件(5.4%/100人年)vs 963/4498件(5.4%/100人年)
RR=0.99(95%CI:0.91~1.08) p=0.85
②脳卒中、心筋梗塞、血管が原因の死亡、心不全による入院の複合アウトカム
E群:1236/4518件(7.3%/100人年)vs 1291/4498件(7.7%/100人年)
RR=0.94(95%CI:0.87~1.02) p=0.12
感想
イルベサルタンを服用しても、脳卒中、心筋梗塞、血管性死亡の低下は見られなかったという結果。今回のイルベサルタン服用量は300mg/日となっており、国内での最大用量である200mg/日よりやや高用量であるので、国内で用いられる用量だと、よりその差が小さくなる可能性が考えられる。
そもそも、イベント発生率が少なくて、予定されていた研究期間より平均1.1年延長したという経緯もあるようで、どちらにしてもアウトカムの絶対発生数が少ない。
除外基準として、クロピドグレルや抗凝固薬を必要とする患者は除かれているという記載があるが(METHODSのPATIENT SELECTION AND STUDY DRUGS12行目)、ベースラインの患者情報(Table1)には経口抗凝固薬を服用している患者も含まれており、この解釈がよく分からなかった。
イルベサルタン服用で、血圧はベースラインから平均6.8/4.5mmHgの低下という事で、この程度の変化でしかないというのも気になった。もう少し、ベースラインの血圧の高い患者では大きく下がるのだろうか?
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。
心房細動患者に対するエドキサバンvsワルファリン
ご訪問ありがとうございます。
参考文献 Edoxaban versus warfarin in patients with atrial fibrillation.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24251359
PMID:24251359
研究デザイン:ランダム化比較試験(非劣勢・優越性)
ランダム化されているか?
→ランダム化されている
盲検化されているか?
→二重盲検されている
論文のPECO
P:21歳以上でCHADS2スコア2点以上の中等度~高度心房細動のある患者21,105名
E:エドキサバン(低用量:30mg、高用量:60mg)
C:ワルファリン:INR2.0~3.0になるよう用量調節
O:(Primary) 【有効性】脳卒中と全身塞栓 【安全性】:出血
※CHADS2スコア・・・心房細動患者における脳卒中発症リスクの評価指標。5項目(心不全:1点、高血圧:1点、75歳以上:1点、糖尿病:1点、脳卒中/TIA既往:2点)の合計6点で点数が高いほど、脳卒中発症リスクが高い。
※除外基準
可逆性障害による心房細動、推定クレアチニンクリアランス<30mL/min、高度の出血リスク患者、DAPT、中等度~重度の僧房弁狭窄症、ACS、冠動脈再建術、ランダム化前30日以内の脳卒中、研究の手順を守れない者
一次アウトカムは明確か?
→明確と言える
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
ITT解析を行われているか?
※非劣勢:modified ITT解析 優越性試験:ITT解析
非劣勢マージン:1.38
追跡期間
→中央値2.8年
脱落率は結果を覆すほどあるか?
→追跡率99.5%
結果
★Primary outcome(脳卒中と全身塞栓症)
非劣勢(mITTによる)
・ワルファリン232/7036件 1.50%/年
・高用量エドキサバン 182/7035件 1.18%/年
vsワルファリン HR=0.79(97.5%CI:0.63~0.99) p<0.001
・低用量エドキサバン 253/7034件 1.61%/年
vsワルファリン HR=1.07(97.5%CI:0.87~1.31) p=0.005
※97.5%CIの上限が、非劣勢マージンの1.38を超えていないので非劣勢が認められている
優越性(ITTによる)
・ワルファリン337/7036件 1.80%/年
・高用量エドキサバン 296/7035件 1.57%/年
vsワルファリン HR=0.87(97.5%CI:0.73~1.04) p=0.08
・低用量エドキサバン 383/7034件 2.04%/年
vsワルファリン HR=1.13(97.5%CI:0.96~1.34) p=0.10
★心血管死亡
・ワルファリン611/7036件 3.17%/年
・高用量エドキサバン 530/7035件 2.74%/年
vsワルファリン HR=0.86(95%CI:0.77~0.97) p=0.013
・低用量エドキサバン 527/7034件 2.71%/年
vsワルファリン HR=0.85(95%CI:0.76~0.96) p=0.008
★大出血
・ワルファリン524/7012件 3.43%/年
・高用量エドキサバン 418/7012件 2.75%/年
vsワルファリン HR=0.80(95%CI:0.71~0.91) p<0.001
・低用量エドキサバン 254/7002件 1.61%/年
vsワルファリン HR=0.47(95%CI:0.41~0.55) p<0.001
感想
まず、Primary outcomeの非劣勢に関しては、低用量エドキサバン、高用量エドキサバンともに、97.5%信頼区間の上限値が非劣勢マージンの1.38を超えていないので、非劣勢が示されている(少なくともワルファリンに劣らない)。優越性は、95%信頼区間より差が出にくい97.5%信頼区間を使ったためか、ワルファリンと比較して統計学的有意差は出ていない。
大出血は、ワルファリンとの比較で、高用量エドキサバンはHR=0.80、低用量エドキサバンはHR=0.47といずれも有意に少ないという結果である。
これが妥当な考え方なのか分からないので自信が無いが、大出血のNNHを計算してみると、ワルファリンと高用量エドキサバンでは1471人/年、低用量エドキサバンでは549人/年という事なので、その絶対差としては大きくないように感じた。出血リスクの高い患者は除外されているようなので、このような患者ではややエドキサバンの方がいいかもしれないが。
エドキサバンは薬価もワルファリンと比較すると相当高価なので(ワルファリン1mg=9.6円/1錠、エドキサバン30mg=538.40円/1錠、エドキサバン60mg=545.60円/1錠)、この金額の差を埋められるほどの利益とは言えないかなと個人的には感じた。どうしても納豆を食べたいという患者や、PT-INRを測らなくてもよいというような患者側へのメリットはあるので、この辺りとの兼ね合いも考慮する必要はあるが・・・。他のNOACの比較も気になるので、今後調べていきたい。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。
シロスタゾールで認知症のリスクは抑えられますか?
ご訪問ありがとうございます。
以前も1度同じような内容の研究を取り上げた事がありますが、シロスタゾールと認知症に関する論文です。
アブストラクトしか読めませんが、興味のある分野なので読んでみました。
参考文献 Cilostazol Use Is Associated with Reduced Risk of Dementia: A Nationwide Cohort Study.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=28194663
PMID:28194663
研究デザイン: 一般人口対象コホート研究
論文のPECO
P:もともと認知症の既往が無い40歳以上の患者9148名
E:シロスタゾール服用あり→2287名
C:シロスタゾール服用無し→6861名
O:認知症発症
研究対象集団の代表性
→台湾の国民健康保険データベースが用いられており、大きな問題は無いかと思われる
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
調節した交絡因子は何か?
→年齢、性別、合併症、併用薬(詳細はアブストラクトからは不明)
追跡期間
→不明
結果
認知症発症
調整HR=0.75(95%CI:0.61~0.92)
・シロスタゾールの用量と認知症発症の間に用量依存的な関連性が見られた
★サブグループ解析
・虚血性心疾患を有する患者における認知症発症
調整HR=0.44(95%CI:0.24~0.83)
・脳血管疾患を有する患者における認知症発症
調整HR=0.34(95%CI:0.21~0.54)
感想
シロスタゾールの服用で認知症が予防できるかもしれなという結果。シロスタゾールの服用量との相関も見られたとの事なので、少なくとも認知症発症とシロスタゾール服用の間に関連はありそう。
サブグループ解析では、虚血性心疾患や脳血管疾患を有する患者ではそれぞれ調整HR=0.44、0.34ということで、これらの疾患を有する場合は良いのかもしれない。
以前ドネペジルにシロスタゾールを上乗せするか否かでMMSEの変化を見た研究の論文を読んだが、軽度認知症患者では有意差こそ出ていたものの、スコアの変化量としてはわずかなものだった。
また、具体的な交絡の調整や、認知症の診断を受けた人数がアブストラクトからは分からず、この結果だけをもって認知症予防に対してシロスタゾールを積極的に勧めることは出来ない印象。
個人的にもかなり興味深い所なので、関連論文も読んでみようと思う。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。
納豆を食べると脳卒中は防げますか?
ご訪問ありがとうございます。
先日、スマホのニュースで、納豆と脳卒中に関する記事を読んだので、原著論文も読んでみたいと思い検索してみました。アブストラクトしか読めないものの、簡単にまとめてみました。
参考文献 Dietary soy and natto intake and cardiovascular disease mortality in Japanese adults: the Takayama study.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27927636
PMID:27927636
研究デザイン:一般人口対象コホート研究
論文のPECO
P:岐阜県高山市在住の35歳以上の男性13355名、女性15724名
E:納豆を良く食べる
C:納豆をあまり食べない
O:心血管疾患による死亡
※納豆の摂取量に応じて研究対象集団を4群に分けているよう
研究対象集団の代表性
→岐阜県高山市の一般人口を対象にしており大きな問題は無いかと思われる
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
調節した交絡因子は何か?マッチングされているか?
→アブストラクトに記載なし
追跡期間
→16年
結果
心血管疾患による死亡
納豆の消費量上位25% vs 下位25% HR=0.75(95%CI:0.64~0.88)
※総大豆たんぱく質摂取量、総大豆イソフラボン摂取量、納豆以外の食品からの大豆タンパク質・大豆イソフラボン摂取量によっては、有意な減少は見られなかった。
全脳卒中による死亡
大豆たんぱく質の消費量上位25% vs 下位25% HR=0.75(95%CI:0.57~0.99)
納豆の消費量上位25% vs 下位25% HR=0.68(95%CI:0.52~0.88)
虚血性脳卒中による死亡
納豆の消費量上位25% vs 下位25% HR=0.67(95%CI:0.47~0.95)
感想
アブストラクトのみであり、交絡因子など詳細は分からないが、納豆を食べることにより心血管疾患による死亡、特に虚血性脳卒中による死亡を抑えることが出来るかもしれないといった結果。
上位25%の消費量がどれぐらいなのか?など疑問は残るものの、納豆の消費と脳卒中の発生の間に関連がありそうである。
以前、朝食と脳卒中に関する国内の論文も読んだが、毎日朝食を食べた方が脳出血の発生は少ないという結果であった。
以前の記事はこちら→ http://pharm-niiyan.hatenablog.com/entry/2017/02/05/020259
納豆は朝食べるイメージがあるので、納豆を食べている人は朝食をしっかり食べる傾向にあるということもあるのかもしれない。
いずれにせよ、そもそも自分はしっかり朝食を食べる習慣を身に付ける必要があると感じている。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。