日本人におけるプラバスタチンの冠動脈疾患予防効果(MEGA study)

ご訪問ありがとうございます。

 

今回は、日本人を対象にプラバスタチンの冠動脈疾患一次予防効果を見た、MEGA studyの論文を読んでみました。

 

参考文献 Primary prevention of cardiovascular disease with pravastatin in Japan (MEGA Study): a prospective randomised controlled trial.

Pubmedのリンク   https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17011942

 

 PMID:17011942

 

ちなみに、Pubmedからではフルで読めなかったため、下のリンクからアクセスして頂ければと思います。↓↓ 

http://www.puppem.com/Documents/Lancet--Nakamura-MEGA-FullText30-09-2006.pdf

 

研究デザイン:ランダム化比較試験

 

論文のPECO

P:高コレステロール血症(5.69~6.98mmol/L:220~270mg/dL)で、冠動脈心疾患や脳卒中の既往の無い患者

E:プラバスタチン10~20mg/日+食事療法→3866名

C:食事療法のみ →3966名

O:(Primary) 冠動脈心疾患(致死性・非致死性心筋梗塞狭心症、突然死、冠動脈血行再建術)

 

除外基準

→家族性高コレステロール血症、冠動脈心疾患既往、脳卒中既往

 

ランダム化されているか?

→ランダム化されている

 

一次アウトカムは明確か?

→明確といえる

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

盲検化されているか?

→オープンラベル(PROBE法:prospective randomised, open-labelled, blinded-endpoint)

 

均等に割り付けられているか

→均等に2群に割り付けられていると思われる

 

ITT解析を行われているか?

→ITT解析されている

 

サンプルサイズ

→8000名(パワー80%、α=10%)

 

脱落率は結果を覆すほどあるか?

→追跡率:98.7%

 

追跡期間

→平均5.3年

 

結果

【ベースライン】

平均年齢:E群:58.4歳 C群:58.2歳

 

コレステロール:両群ともに242mg/dL

HDLコレステロール:両群ともに58mg/dL

LDLコレステロール:両群ともに156mg/dL

トリグリセリド:両群ともに127mg/dL

 

【アウトカム】

冠動脈心疾患(Primary outcome

E群:66/3866件(3.3/1000人年)vs C群:101/3966件(5.0/1000人年)

HR=0.67(95%CI:0.49~0.91) p=0.01  NNT=119

 

心筋梗塞

E群:17/3866件(0.9/1000人年)vs C群:33/3966件(1.6/1000人年)

HR=0.52(95%CI:0.29~0.94) p=0.03  NNT=255

 

心臓突然死

E群:5/3866件(0.2/1000人年)vs C群:10/3966件(0.5/1000人年)

HR=0.51(95%CI:0.18~1.50) p=0.21

 

狭心症

E群:46/3866件(2.3/1000人年)vs C群:57/3966件(2.8/1000人年)

HR=0.83(95%CI:0.56~1.23) p=0.35

 

 

冠動脈血行再建術

E群:39/3866件(2.0/1000人年)vs C群:66/3966件(3.2/1000人年)

HR=0.60(95%CI:0.41~0.89) p=0.01

 

脳卒中(Secondary outcome

E群:50/3966件(2.5/1000人年)vs C群:62/3866件(3.0/1000人年)

HR=0.60(95%CI:0.41~0.89) p=0.01

 

感想

 この研究はPROBE法が用いられており、患者側、医療者側は盲検化されていない。その上で、Primary outcomeにはソフトエンドポイントである冠動脈血行再建術が含まれている点から、結果はやや割り引いて考える必要があると思う。

 Primary outcomeのNNTを計算してみると119名となる。理論上1人のイベント発生を防ぐために、119名の治療が必要ということなので、プラバスタチンを冠動脈心疾患の一次予防を狙って服用することのメリットというのは案外大きくは無いのかなといった印象。心筋梗塞予防のNNTは255名なので、さらに小さいものかなと感じた。

 今回は、E群もC群も、食事療法も行っているので、食事療法をやっている群とやっていない群の比較というのも気になる所である。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

メトホルミンで2型糖尿病関連イベントは防げますか?(UKPDS34)

ご訪問ありがとうございます。

 

今回は前回のUKPDS33に続きまして、UKPDS34を読んでみました。

 

参考文献 Effect of intensive blood-glucose control with metformin on complications in overweight patients with type 2 diabetes (UKPDS 34). UK Prospective Diabetes Study (UKPDS) Group.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9742977

 

 PMID:9742977

 

研究デザイン:ランダム化比較試験

 

論文のPECO

P:新規に糖尿病を発症した、過体重(理想体重の120%以上)で空腹時血糖109.8~270mg/dLの患者1704名(3カ月の食事療法を行った者、高血糖症状無し、25~65歳:平均53歳)

E:メトホルミンを用いた厳格な血糖コントロール:空腹時血糖<108mg/dl(6.0mmo/L)を目指す→342名

C:食事療法のみ→411名

O:(Primary)

①糖尿病関連エンドポイント(突然死、高血糖または低血糖による死亡、致死性・非致死性心筋梗塞狭心症心不全脳卒中、腎不全、切断、硝子体出血、光凝固を必要とする網膜症、失明、水晶体摘出術)

②糖尿病関連死亡(心筋梗塞脳卒中・末梢血管疾患・腎疾患・高血糖低血糖による死亡、突然死)

③総死亡

 

 ※メトホルミンの用量:開始用量850mg/日、最大2550mg/日

 

ランダム化されているか?

→ランダム化されている

 

一次アウトカムは明確か?

→アウトカムが複数存在するため注意が必要かも

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

盲検化されているか?

→盲検化はされていないと思われる

 

均等に割り付けられているか

→均等に2群に割り付けられていると思われる(Table1)

 

ITT解析を行われているか?

→ITT解析されている

 

サンプルサイズ

→記載が見つけられず

 

脱落率は結果を覆すほどあるか?

→具体的な追跡率が分からなかったが、ランダム化された人数と結果の人数が同じなので大きく影響を及ぼすほどの脱落ではないかも。

 

追跡期間

→中央値10.7年

 

結果

【ベースライン】

平均年齢 E群:53歳 C:53歳

空腹時血糖 E群:145.7mg/dl C群:144mg/dl

 

HbA1cの変化】

E群:ベースライン:7.3%→6.7%→7.9%→8.3%

C群:ベースライン:7.1%→7.5%→8.5%→8.8%

 

※Intensive群:クロルプラミド、グリベンクラミド、インスリン使用

 

①糖尿病関連エンドポイント

E群:98/342件(29.8/1000人年)vs C群:160/411件(13.3/1000人年)

RR=0.68(95%CI:0.53~0.87)  p=0.0023

 

※Intensive群 :350/951件 vs C群:160/411件

RR=0.93(95%CI:0.77~1.12)  p=0.46

 

②糖尿病関連死亡

E群:28/342件(7.5/1000人年)vs C群:55/411件(12.7/1000人年)

RR=0.58(95%CI:0.37~0.91)  p=0.017

 

※Intensive群 :103/951件 vs C群:55/411件

RR=0.80(95%CI:0.58~1.11)  p=0.19

 

③総死亡

E群:50/2729件(13.5/1000人年)vs C群:89/1138件(20.6/1000人年)

RR=0.64(95%CI:0.45~0.91) p=0.011

 

※Intensive群 :190/951件 vs C群:89/411件

RR=0.92(95%CI:0.71~1.18)  p=0.19

 

心筋梗塞

E群:39/342件(11.0/1000人年)vs C群:73/411件(18.0/1000人年)

RR=0.61(95%CI:0.41~0.89)  p=0.01

 

※Intensive群 :139/951件 vs C群:73/411件

RR=0.79(95%CI:0.60~1.05)  p=0.11

 

脳卒中

E群:12/342件(3.3/1000人年)vs C群:23/411件(5.5/1000人年)

RR=0.59(95%CI:0.29~1.18)  p=0.13

 

※Intensive群 :60/951件 vs C群:23/411件

RR=1.14(95%CI:0.70~1.84)  p=0.60

 

・細小血管イベント

E群:24/342件(6.7/1000人年)vs C群:38/411件(9.2/1000人年)

RR=0.71(95%CI:0.43~1.19)  p=0.19

 

※Intensive群 :74/951件 vs C群:38/411件

RR=0.84(95%CI:0.57~1.24)  p=0.38

 

感想

 メトホルミンを用いる事で、糖尿病関連エンドポイント、糖尿病関連死亡、総死亡いずれも減らす事が出来るという事が示唆されている。

 本研究において、空腹時血糖目標値は108mg/dl(6.0mmo/L)以下であったが、これは上手くコントロール出来ていないようである(Figure3)。

 それにも関わらず、この研究の結果では心筋梗塞も減らす事が出来たという結果。UKPDS33では、結果が細小血管イベントに引っ張られている感じではあったが、こちらはハードエンドポイントも減っている点は着目したいところ。

 用いられているメトホルミンの量は、開始用量850mg/日で、その後1700mg/日、最大2550mg/日と、日頃見かける用量よりも多いような印象がある。

 対象となっているのは、過体重な患者群であり、このような患者に対しては少なくとも、グリベンクラミドやインスリンよりはメトホルミンを使う価値があるように思える。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

インスリンやSU剤による厳格な血糖コントロールで、2型糖尿病関連イベントは防げますか?(UKPDS33)

ご訪問ありがとうございます。

 

今回は、引き続き糖尿病関連の有名論文であるUKPDS33を読んでみました。

 

ちなみに、Pubmedからのリンク先ではフリーで読めなかったので、以下のリンク先からアクセスして頂ければと思います。

https://www.vumc.nl/afdelingen-themas/41463/27797/2089686/1611848/1611870/literatuur.pdf

 

参考文献 Intensive blood-glucose control with sulphonylureas or insulin compared with conventional treatment and risk of complications in patients with type 2 diabetes (UKPDS 33)

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9742976

 

 PMID:9742976

 

研究デザイン:ランダム化比較試験

 

論文のPECO

P:新規に糖尿病を発症した患者(中央値54歳)のうち、3カ月の食事療法後の平均空腹時血糖が6.1~15.0mmol/L(109.8~270 mg/dl)の患者3867名

E:インスリンやSU剤を用いた厳格な血糖コントロール→空腹時血糖<108mg/dl(6.0mmo/L)を目指す

C:従来の食事療法(空腹時血糖値>270mg/dlになったときのみ薬剤使用)

O:(Primary)

①糖尿病関連エンドポイント(突然死、高血糖または低血糖による死亡、致死性・非致死性心筋梗塞狭心症心不全脳卒中、腎不全、脚切断、硝子体出血、光凝固を必要とする網膜症、失明、水晶体摘出術)

②糖尿病関連死亡(心筋梗塞脳卒中・末梢血管疾患・腎疾患・高血糖低血糖による死亡、突然死)

③総死亡

 

 

除外基準

3mmol/Lを超えるケトン尿症、175mmol/Lを超える血清クレアチニン、1年以内の心筋梗塞狭心症心不全、主要血管イベント、レーザー治療を必要とする網膜症、悪性高血圧、未治療の内分泌障害、インスリン療法に影響する職業、重度の併存疾患、理解不十分な状態、研究への無意欲

 

※使用されたSU薬:クロルプロパミド、グリベンクラミド、グリピジド

 

ランダム化されているか?

→ランダム化されている

 

一次アウトカムは明確か?

→アウトカムが多数存在するため注意が必要

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

盲検化されているか?

→盲検化はされていないと思われる。PROBE法?

 

均等に割り付けられているか

→均等に2群に割り付けられていると思われる

 

ITT解析を行われているか?

→ITT解析されている

 

サンプルサイズ

→3600名(パワー81%、α=1%?)

 

脱落率は結果を覆すほどあるか?

→具体的な追跡率が分からなかったが、ランダム化された人数と結果の人数が同じなので大きく影響を及ぼすほどの脱落ではないかも。

 

追跡期間

→中央値10.0年

 

結果

【ベースライン】

平均年齢 E群:54歳 C:54歳

空腹時血糖 E群:142.2mg/dl C群:145.7mg/dl

 

HbA1cの変化】

E群:ベースライン:7.05%→6.6%→7.5%→8.1%

C群:ベースライン:7.09%→7.4%→8.4%→8.7%

 

①糖尿病関連エンドポイント

E群:963/2729件(40.9/1000人年)vs C群:438/1138件(46.0/1000人年)

RR=0.88(95%CI:0.79~0.99)  p=0.029

 

②糖尿病関連死亡

E群:285/2729件(10.4/1000人年)vs C群:129/1138件(11.5/1000人年)

RR=0.90(95%CI:0.73~1.11) p=0.34

 

③総死亡

E群:489/2729件(17.9/1000人年)vs C群:213/1138件(18.9/1000人年)

RR=0.94(95%CI:0.80~1.10) p=0.44

 

 

感想

 糖尿病関連エンドポイントの中には、切断や水晶体摘出術などソフトエンドポイントも含まれている。そして、小血管イベントに結果が引っ張られているような印象であるため、結果は割り引いて考えた方が良さそうだと感じた。

 そもそも、厳格コントロール群は空腹時血糖<6.0mmol/Lを目指していたはずだが、Figure2を見ると最終的に全くもってこの目標値から外れてしまっており、血糖コントロールが上手くいっていないような印象を受けた。

 くわえて本研究の患者のベースラインにおける年齢は54歳と若いので、死亡などのアウトカムに差が出なかったという事も考えられるが、もう少し血糖コントロールの上手くいった場合の結果というのがどうなのか調べていきたい。

 

ということで、引き続きUKPDS34、UKPDS80なども読んでみようと思う。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

厳格な血糖コントロールで心血管イベントは減らせますか?(VADT)

ご訪問ありがとうございます。

 

今回は前回のADVANCE試験に続けて、VADT試験を読んでみました。

 

参考文献 Glucose control and vascular complications in veterans with type 2 diabetes.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=19092145

 

PMID:19092145

 

研究デザイン:ランダム化比較試験

 

論文のPECO

P:コントロール不良の2型糖尿病をもつ退役軍人(平均年齢60.4歳)1791名

E:厳格な血糖コントロールHbA1cをC群と比較して1.5%減らす)

C:標準的な血糖コントロール

O:(Primary) 主要心血管イベントが発症するまでの時間

 ※主要心血管イベント:心筋梗塞脳卒中、心血管死亡、うっ血性心不全、血管疾患の手術、手術不能な冠動脈疾患、虚血性壊疽の切断

 

※使用薬剤

BMI>27の患者:メトホルミン+ロシグリタゾンで開始

BMI<27の患者:グリメピリド+ロシグリタゾンで開始

・厳格コントロール群はHbA1c<6、標準コントロール群はHbA1c<9を達成しなければインスリン導入

 

除外基準

HbA1c<7.5%、6か月以内の心血管イベント発生、進行性のうっ血性心不全、重篤な狭心症、余命7年未満、BMI>40、血清クレアチニン>1.6mg/dl、アラニンアミノトランスフェラーゼが基準値上限の3倍以上

 

ランダム化されているか?

→ランダム化されている

 

一次アウトカムは明確か?

→明確といえる

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

盲検化されているか?

→PROBE法?

 

均等に割り付けられているか

→均等に2群に割り付けられていると思われる

 

ITT解析を行われているか?

→ITT解析されている

 

サンプルサイズ

→1700名(パワー86%、α=5%)

 

脱落率は結果を覆すほどあるか?

→追跡率=93.6%

 

追跡期間

→中央値5.6年

 

結果

【ベースライン】

・平均年齢:厳格コントロール群:60.3±9.0歳 標準コントロール群:60.5±9.0歳

 ・両群ともに糖尿病の診断から平均11.6年

 ・HbA1c 厳格コントロール群:ベースライン 9.4±2.0% → 6か月後 6.9%

      標準コントロール群:ベースライン 9.4±2.0% → 6か月後 8.4%

 

心血管イベント発生までの時間(Primary outcome

HR=0.88(95%CI:0.74~1.05) p=0.14

 

心血管死亡までの時間

HR=1.32(95%CI:0.81~2.14)  p=0.26

 

全死亡までの時間

HR=1.07(95%CI:0.81~1.42)  p=0.62

 

低血糖

厳格コントロール群:24.1% 標準コントロール群:17.6%

 

 感想

 本研究の対象者は退役軍人であり、その結果を目の前の患者さんにそっくりそのまま適応する事は出来ないかもしれないが、HbA1cを8.4%で維持するのと、6.9%で維持するのとでは心血管イベント発生までの時間に差は見られないという結果であった。

 今回の研究では、ベースラインのHbA1cが9.4%と、比較的コントロール不良の糖尿病患者が対象となっているが、それでもHbA1cを厳格にコントロールしてもイベント発生は変わりがない。 

 使用されている薬剤として、いずれもロシグリタゾンが開始薬剤として用いられており、これの有害事象としてもしかすると結果に影響を与えているかもしれない。また、厳格コントロール群では、HbA1c<6を達成していない場合にインスリン併用ということなので、インスリンを使いすぎな感じもする。

 いぞれにせよ、ACCORD試験、ADVANCE試験の結果も含め心血管イベントを抑制するという目的での血糖コントロールは、案外厳しくしなくても大丈夫なのかもしれないなという感想。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

厳格な血糖値コントロールで心血管イベントは減らせますか?(ADVANCE)

ご訪問ありがとうございます。

 

今回は、まだ読んでいなかったADVANCE試験の論文を読んでみました。

 

参考文献 Intensive blood glucose control and vascular outcomes in patients with type 2 diabetes.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=18539916

 

PMID:18539916

 

研究デザイン:ランダム化比較試験

 

論文のPECO

P:30歳以上の時点で2型糖尿病と診断された55歳以上の患者のうち、大血管イベントまたは細小血管イベント既往あり、または血管疾患リスクファクターを1つ以上持つ者11140名

E:厳格血糖コントロールHbA1c<6.5%)

C:標準血糖コントロール(その地域のガイドラインに従った目標値)

O:(Primary) 主要な大血管イベント(心血管死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中)、主要細小血管イベント(腎症や網膜症の新規発症や増悪)、また、その複合アウトカム

 

除外基準

→被検薬に対する禁忌、長期間のインスリン療法

 

ランダム化されているか?

→ランダム化されている

 

一次アウトカムは明確か?

→大血管イベント(3つの複合アウトカム)、細小血管イベント(2つの複合アウトカム)、また、大血管イベントと細小血管イベントの複合アウトカムが一次アウトカムとして設定されているため、少し注意かも。

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

盲検化されているか?

→記載が見つからなかったが、HbA1cを測らなければ研究が成り立たないと思われるので、二重盲検は不可能かと思われる。

「An independent End Point Adjudication Committee, unaware of the group assignments」 →PROBE法?

 

均等に割り付けられているか

→均等に2群に割り付けられていると思われる

 

ITT解析を行われているか?

→ITT解析されている

 

サンプルサイズ

→具体的なサンプル数の記載は無い(パワー90%、α=5%)

 

追跡率

→99.8%

※lost to follow-upは厳格コントロール群で7名、標準コントロール群で10名

 

追跡期間

→中央値5年間

 

結果

【ベースライン】

平均年齢:両群ともに66±6歳

 

HbA1cの変化

厳格コントロール群:ベースライン平均7.5% → 治療後6.5%

標準コントロール群:ベースライン平均7.5% → 治療後7.3%

 

【Outcome

主要大血管イベントと、主要細小血管イベントの複合アウトカム(Primary outcome

厳格コントロール群:1009/5571件(18.1%)vs 標準コントロール群:1116/5569件(20.0%)

HR=0.90(95%CI:0.82~0.98) p=0.01

 

主要大血管イベント

厳格コントロール群:557/5571件(10.0%)vs 標準コントロール群:590/5569件(10.6%)

HR=0.94(95%CI:0.84~1.06) p=0.32

 

主要細小血管イベント

厳格コントロール群:526/5571件(9.4%)vs 標準コントロール群:605/5569件(10.9%)

HR=0.86(95%CI:0.77~0.97) p=0.01

 

腎症の新規発症または悪化

厳格コントロール群:230/5571件(4.1%)vs 標準コントロール群:292/5569件(5.2%)

HR=0.79(95%CI:0.66~0.93) p=0.006

 

網膜症の新規発症または悪化

厳格コントロール群:332/5571件(6.0%)vs 標準コントロール群:349/5569件(6.3%)

p=0.50

 

感想

 厳格な血糖コントロール群では、HbA1cが7.5%から6.5%に低下した。一方、標準コントロール群では、7.5%から7.3%への変化であった。

 ところが、血糖値を厳格にコントロールしても大血管イベントは、HR=0.94(95%CI:0.84~1.06) p=0.32と、標準コントロールした場合と変わりなかった。

 細小血管イベントに関しては、HR=0.86(95%CI:0.77~0.97) p=0.01と有意に減っている。標準コントロールに比べ、厳格に血糖をコントロールした場合、14%細小血管イベントを減らす事が出来たという結果だが、網膜症については有意差無しであり、有意差が出ているのは腎症の発症または悪化である。

 腎症についても、HR=0.79(95%CI:0.66~0.93) p=0.006と21%リスクを減らす事が出来るという結果であるが、実際はそもそもどちらにしても発症しない患者が大部分であるところも認識しておく必要があるのではないだろうか。

 

 ACCORD試験の結果も含め、血糖値は厳格にコントロールしても、イベント発生は案外そんなに変わらないかもしれないという印象であります。

 引き続き、VADT試験についても読んでみようと思います。まずは、有名論文を一通り読んでみようかなあと思っています。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

 

グリニド薬、SU薬、アカルボースの心不全による入院リスクの比較

ご訪問ありがとうございます。

 

実は、わたくし、明日5/18の誕生日で30代の仲間入りを果たします。

 

というわけで、これが20代最後の記事になります。

 

さて、諸事情により、最近α-GIについて調べているのですが、その中で気になる論文を見つけましたので読んでみました。

 

アブストラクトしか読めなかったので詳細は分からないですが、参考までに。

 

参考文献 Comparing the risks of hospitalized heart failure associated with glinide, sulfonylurea, and acarbose use in type 2 diabetes: A nationwide study.

 

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=27923207

 

PMID:27923207

 

研究デザイン:後ろ向きコホート研究

 

論文のPECO

P:新規に2型糖尿病を発症した患者

E:①グリニド系開始(25638名) ②SU剤開始(272140名)

C:アカルボース開始(29376名)

O:心不全による入院

 

研究対象集団の代表性

→台湾の国民健康保険データベースが用いられており大きな問題は無いと思われる

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

調節した交絡因子は何か?マッチングされているか?

→調整はされているようだが、詳細についてはアブストラクトからは不明

 

追跡期間

→不明

 

結果

心不全による入院

・グリニド系 vs アカルボース  調整HR=1.53(95%信頼区間:1.24~1.88)

 

・SU剤 vs アカルボース  調整HR=0.94(95%信頼区間:0.80~1.11)

 

感想

 アブストラクトしか読むことが出来ず、交絡因子などの詳細は分からないが、アカルボースと比較してグリニド薬は心不全による入院リスクがやや高い可能性が示唆されている。追跡期間が分からないため、何とも言い難い所ではあるが・・・。

 後ろ向きコホートであり、詳細も読めなかったためこの結果だけで結論付けることは出来ないが、同じテーマについてデータを追っていきたい。また、これらの薬剤のベネフィットについてもまだ調べられていないため、今後調べていく。

 

そんなわけでさよなら、20代!

 

よろしく、30代!

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

コリンエステラーゼ阻害薬はアルツハイマー型認知症患者の心筋梗塞・死亡は減らしますか?

ご訪問ありがとうございます。

 

個人的に、ドネペジルの効果に関しては非常に気になっているが、なかなか調べられていなかったため今回1本読んでみました。

 

参考文献 The use of cholinesterase inhibitors and the risk of myocardial infarction and death: a nationwide cohort study in subjects with Alzheimer's disease.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23735859

 

PMID:23735859

 

研究デザインコホート研究

 

論文のPECO

P:アルツハイマー認知症患者7073名(平均年齢79歳)

E:中枢性コリンエステラーゼ阻害剤使用→5159名

C:中枢性コリンエステラーゼ阻害剤使用無し→1914名

O:心筋梗塞、死亡

 

研究対象集団の代表性

スウェーデン認知症登録簿を基にしており、大きな問題は無さそう

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

調節した交絡因子は何か?

→年齢、性別、認知症の混合、同居人の有無、在宅ケア、MMSEスコア、抗うつ薬、神経遮断薬、降圧薬、血糖降下薬、冠血管疾患の既往歴

 

追跡期間

→平均503日

 

結果

(コリンエステラーゼ阻害剤)

E群;心筋梗塞 74/5159名  死亡;427/5159名(571日)

C群;心筋梗塞 42/1914名  死亡;329/1914名(392日)

 

心筋梗塞と死亡の複合

HR=0.66(95%CI:0.56~0.78) NNT=11

 

・死亡

HR=0.64(95%CI:0.54~0.76) NNT=12

 

心筋梗塞

HR=0.62(95%CI:0.40~0.95) NNT=132

 

※E群とC群を1:1でマッチング(3352名)した場合

心筋梗塞と死亡の複合

HR=0.66(95%CI:0.55~0.79)

 

・死亡

HR=0.60(95%CI:0.50~0.72)

 

心筋梗塞

HR=0.52(95%CI:0.32~0.86)

 

(メマンチン)

心筋梗塞と死亡の複合

HR=1.16(95%CI:0.97~1.38)

 

・死亡

HR=1.15(95%CI:0.95~1.38)

 

心筋梗塞

HR=1.22(95%CI:0.76~1.97)

 

感想

 あくまで1つのコホート研究の結果であるが、アルツハイマー認知症患者が中枢性抗コリン薬を使用することで、1年半程度の期間で見ると生存確率は上がるかもしれない事を示唆する結果である。また、心筋梗塞も少ない傾向にある。

 ベースラインの患者条件を見てみると、70代後半~80代前半でありここからの生存という事にはなるが、その中で家族は、本人とやり残したことを出来る時間を捻出できる可能性もある。

 しかし、この1本の論文から寿命が延びるので中枢性抗コリン薬を服用させる方がいいと結論する事は早計と感じているので、MMSEやADAS-cogについて検討したものなど関連論文や、反対に有害事象に関する論文も読んでおかなければならない。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

 

PS 

このような場合、患者からの視点よりも、その介護者や患者の視点という物が重要視される方がいいのではないかというご意見を頂きました。非常にありがたいです。少なくとも、延伸しているのは健康寿命ではないという。非常に難しいですね。

 

私自身、薬局での服薬指導時に患者さんのご家族からお話を伺う機会も多いです。

その中で、患者さんご家族から介護の苦労についてお話を聞かせてもらう事もあれば、「まだまだ一緒にいたい。」、「まだまだ長生きしてほしい。」、「100歳まで生きてほしい。」というような希望を伺うこともあります。

 

認知機能の低下が見られまだ薬を飲んでまで寿命を延ばすということ、難しいテーマです。今回の論文については社内にも持ち込んで、社内抄読会のお題にするか、または、このテーマについてディスカッションする機会を作ってみようかと思います。