高リスクの高血圧患者へのACE阻害薬・カルシウムチャネルブロッカー vs 利尿薬

ご訪問ありがとうございます。

 

今回は、高血圧患者に対するACE-I、CCB、利尿薬の比較をした研究の論文を読んでみました。

 

参考文献 Major outcomes in high-risk hypertensive patients randomized to angiotensin-converting enzyme inhibitor or calcium channel blocker vs diuretic: The Antihypertensive and Lipid-Lowering Treatment to Prevent Heart Attack Trial (ALLHAT).

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12479763

 

PMID:12479763

 

研究デザイン:ランダム化比較試験

 

論文のPECO

P:心血管疾患リスク因子を1つ以上持つ、55歳以上の高血圧患者33357名

E:①アムロジピン2.5~10mg/日→9048名

②リシノプリル10~40mg/日→9054名

C:クロルタリドン12.5~25mg/日→15255名

O:(Primary) 致死性冠動脈心疾患、非致死性心筋梗塞の複合アウトカム

 (Secondary)総死亡、脳卒中、複合冠動脈心疾患(Primary outcome、冠動脈血行再建術、入院を要する狭心症)、複合心血管疾患(複合冠動脈心疾患、脳卒中、入院を必要としない狭心症心不全、末梢動脈疾患)

 

※リスク因子

最近6か月以内の心筋梗塞または脳卒中、左心室肥大、2型糖尿病既往歴、最近の喫煙、HDLコレステロール<35mg/dl、アテローム動脈硬化による心血管疾患

 

ランダム化されているか?

→ランダム化されている

 

一次アウトカムは明確か?

→明確といえる

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

盲検化されているか?

→二重盲検されている

 

均等に割り付けられているか

→均等に2群に割り付けられていると思われる

 

ITT解析を行われているか?

→ITT解析されている

 

サンプルサイズ

→パワー83%、α=0.0178

 

脱落率は結果を覆すほどあるか?

lost-to follow upは、クロルタリドン群339名、アムロジピン群200名、リシノプリル群218名→追跡率:97.7%

 

追跡期間

→平均4.9年

 

結果

【ベースライン】

平均年齢:いずれの群も66.9±7.7歳

平均血圧:いずれの群も146/84 mmHg

 

致死性冠動脈心疾患、非致死性心筋梗塞の複合アウトカム(Primary outcome

リシノプリル群:796/9054件vs クロルタリドン群:1362/15225件

RR=0.99(95%CI:0.91~1.08) p=0.81

 

アムロジピン群:798/9048件vs クロルタリドン群:1362/15225件

RR=0.98(95%CI:0.90~1.07) p=0.65

 

心不全(Secondary outcome

リシノプリル群:612/9054件vs クロルタリドン群:870/15225件

RR=1.19(95%CI:1.07~1.31) p<0.001

 

アムロジピン群:706/9048件vs クロルタリドン群:1362/15225件

RR=1.38(95%CI:1.25~1.52) p<0.001

 

感想

 アムロジピン、リシノプリル、利尿剤であるクロルタリドンいずれを使っても、Primary outcome発生に違いは無いという結果である。 

 あくまでもSecondary outcomeだが、心不全に関してはアムロジピンやリシノプリルと比較して、クロルタリドンの方が優れている可能性も示唆されている。

 個人的には、Figure2で利尿剤のクロルタリドンが、アムロジピン以上の降圧を示している点は衝撃だった。チアジド系利尿剤は侮れないと感じたが、今回用いられているクロルタリドンは国内ではすでに販売中止となっている。

 同系統のチアジド系利尿剤としては、トリクロルメチアジドやヒドロクロロチアジドが国内では用いられているが、同じチアジド系利尿薬だからと言って、この結果をそのまま他のチアジド系利尿薬に当てはめる事は出来ないかもしれないと現時点では感じている。

 というのも、以下のような報告も見つけたからである。

 

Chlorthalidone Reduces Cardiovascular Events Compared With Hydrochlorothiazide:A Retrospective Cohort Analysis

リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=21383313

 

PMID:21383313

 

 ALLHAT研究と患者背景は異なりそうだが、ヒドロクロロチアジドは心血管イベント抑制という点でクロルタリドンに劣るかもしれないという報告である。

 まだ、こちらはしっかり読んでいないので後程読みますが、今日はもう力尽きたのでこのあたりで。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

ACE阻害薬、ARBは肺炎リスクを低下させますか?

ご訪問ありがとうございます。

 

在宅施設の往診時に、入居者さんの誤嚥性肺炎予防としてACE阻害薬が追加になるケースを時々経験します。

 

ACE阻害薬の副作用である空咳を逆手に取った使用法です。

 

今回は、ACE阻害薬、ARBと肺炎に関する論文を読んでみました。

 

参考文献 Risk of pneumonia associated with use of angiotensin converting enzyme inhibitors and angiotensin receptor blockers: systematic review and meta-analysis.

 

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22786934

 

PMID:22786934

 

研究デザイン:システマティックレビュー&メタアナリシス

 

論文のPECO

P:37の研究(18のRCT、11のコホート、2つのネステッドケースコントロール、6つの症例対象研究)に組み入れられた患者

E:①ACE阻害剤 ②ARB

C:ACE阻害薬・ARBの服用無し

O:(Primary)肺炎

 (Secondary)肺炎による死亡

 

 

一次アウトカムは明確か?

→明確

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

4つのバイアス

1、評価者バイアス

Two reviewers independently selected randomized controlled trials and・・・

→2名の評価者が独立して論文選定

 

Two authors independently extracted data on study

→2名の評価者が独立してデータ抽出

 

評価者バイアスはさほど問題なさそう

 

2、出版バイアス

情報元:MEDLINE、Web of Science

 

・No language restrictions were applied.

→言語制限なしにデータ収集

 

・追加データや未出版のデータも集めている

 

・Visual inspection of funnel plots did not reveal any obvious asymmetrical tail (see supplementary figure 12).

 

出版バイアスはさほど問題なさそう

 

 

3、元論文バイアス

・RCT、コホート研究、ネステッドケースコントロール研究、症例対象研究が含まれている

 

・The overall quality of included studies was good. However, reporting quality for a few studies, particularly observational ones, was low as some of these were abstracted from character limited sections such as letters or comments.

→全体的に元論文の質は良好であったが、いくつかの特に観察研究では質の低い物もあった

 

元論文バイアスはやや注意が必要かも(特に観察研究)

 

4、異質性バイアス

観察研究を含めた解析では異質性が高い傾向にある。肺炎の発生に関して、RCTのみの統合では、異質性は低い。

 

結果

★肺炎の発生(Primary outcome

①ACE阻害剤 vs C

・全研究 OR0.66 (95%CI:0.55~0.80)  I2=79%  NNT=65/2年

・RCTのみ OR=0.69(95%CI:0.56~0.85)I2=0%

コホート+ネステッドのみ OR=0.58(95%CI:0.38~0.88)I2=79%

・症例対象研究のみ OR=0.67(95%CI:0.49~0.93)I2=73%

 

 ARB vs C

・全研究 OR0.95 (95%CI:0.87~1.04)  I2=14% 

・RCTのみ OR=0.90(95%CI:0.56~0.85)I2=7%

コホート+ネステッドのみ OR=1.01(95%CI:0.94~1.09)I2=0%

 

③ACE阻害薬 vs ARB 

・全研究 OR0.69(95%CI:0.79~1.01)I2=0%

 

★肺炎による死亡(Secondary outcome

①ACE阻害剤 vs C

・全研究 OR0.73 (95%CI:0.58~0.92)  I2=51% 

・RCTのみ OR=0.61(95%CI:0.20~1.90)I2=61%

コホート+ネステッドのみ OR=0.73(95%CI:0.57~0.94)I2=57%

 

ARB vs C(1つのRCTのみ)

OR0.63 (95%CI:0.40~1.00)   

 

感想

 具体的な患者の特徴が読み取れず、患者個別に適応する上では個々の論文も読んでみなければならないが、少なくとも肺炎の予防という目的ならARBよりもACE阻害剤の方が優位なのではないかと感じた。

 全体を通してだと、RCTと観察研究を統合する事がいいのか?という所はあるが、RCTのみの統合結果では、ACE阻害薬を使用した方が、ARBよりも肺炎予防効果は期待できそう。あくまで、肺炎予防に関してはというところだが。

 個人的には担当している在宅施設にご入居の、80歳を超えるような虚弱の高齢者への適応が気になっている。適応を考えるうえで、患者背景も重要なので、個々の元論文についても読んでみようと思う。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

心血管イベントリスク中程度の患者は血圧を下げるべきですか?

ご訪問ありがとうございます。

 

今回は、心血管イベントリスク中程度の患者群において、降圧療法のベネフィットについて調べている研究の論文を読んでみました。

 

参考文献 Blood-Pressure Lowering in Intermediate-Risk Persons without Cardiovascular Disease.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27041480

 

PMID:27041480

 

研究デザイン:ランダム化比較試験

 

論文のPECO

P:心血管イベントリスク中程度(下記の心血管イベントリスク因子のうち少なくとも1つがある)の心血管疾患の無い患者12705名(男性:55歳以上、女性:65歳以上)

※リスク因子が2つ以上ある場合、60歳以上の女性も組み入れられている

E:カンデサルタン16mg+ヒドロクロロチアジド12.5mg→6356名

C:プラセボ→6349名

O:(Primary) ①心血管死亡、非致死性心筋梗塞脳卒中の複合アウトカム

       ② ①+心停止蘇生、心不全、血管再生の複合アウトカム

 

※心血管イベントリスク因子

エスト-ヒップ比が高い、低HDLコレステロール血症の既往、喫煙歴あり、血糖異常、若年性の冠動脈疾患家族歴、軽度腎機能障害

 

※除外基準

心血管疾患のある患者、被検薬・ACE-I禁忌の患者、中等度~重度腎機能障害、症候性低血圧症

 

ランダム化されているか?

→ランダム化されている

 

一次アウトカムは明確か?

→明確といえる

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

盲検化されているか?

→二重盲検されている

 

均等に割り付けられているか

→均等に2群に割り付けられていると思われる

 

ITT解析を行われているか?

→ITT解析されている

 

サンプルサイズ

→12700名(パワー80% α=5%)

 

脱落率は結果を覆すほどあるか?

※Supplementary Appendixより、lost to follow upはE群52名、C群38名

→追跡率99.3%

 

追跡期間

→中央値5.6年

 

結果

【ベースライン】

平均年齢:E群:65.7±6.4歳 C群:65.8±6.4歳

収縮期血圧:E群:138.2±14.7mmHg C群:137.9±14.8mmHg

拡張期血圧:E群:82.0±9.4mmHg C群: 81.8±9.3mmHg

 

服用後のベースラインからの血圧低下

収縮期血圧:E群:10.0±13.1 mmHg C群:4.0±12.9 mmHg

拡張期血圧:E群:5.7±8.2 mmHg C群:2.7±7.9 mmHg

 

★①心血管死亡、非致死性心筋梗塞脳卒中の複合アウトカム(first primary outcome

E群:260/6356件(4.1%)vs C群:279/6349件(4.4%)

HR=0.93(95%CI:0.79~1.10) p=0.40

 

★② ①+心停止蘇生、心不全、血管再生の複合アウトカム(second primary outcome

E群:312/6356件(4.9%)vs C群:328/6349件(5.2%)

HR=0.95(95%CI:0.81~1.11) p=0.51

 

脳卒中

E群: HR=0.80(95%CI:0.59~1.08) p=0.14

 

心筋梗塞

E群: HR=0.84(95%CI:0.58~1.21) p=0.34

 

★冠動脈血行再建術

E群: HR=0.83(95%CI:0.58~1.19) p=0.32

 

感想

 心血管イベントリスク中程度の患者では、カンデサルタン16mg+ヒドロクロロチアジド12.5mgの併用で心血管死亡、非致死性心筋梗塞脳卒中の複合アウトカムを減らす事が出来なかったという結果。

 今回用いられている用量は、カンデサルタン、ヒドロクロロチアジドともに国内で用いられている量より多いが、そもそも今回の患者群のベースラインにおける平均血圧も138/82mmHg程度とそこまで高いわけでもないため、差が出にくかったという事もあるのかもしれない。

 少なくとも、心血管イベント既往の無いリスク中程度の患者において、収縮期血圧140mmHg未満のようなそこまで血圧が高くない場合は、必死になって降圧薬治療をする事のベネフィットは大きくないのではないかと感じた。

 関連論文にも当たってみようと思う。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

降圧薬を中断すると起立性低血圧が減らせますか?

ご訪問ありがとうございます。

 

今回は、降圧薬中断と起立性低血圧の関係について調べてみました。

 

参考文献 Effect of discontinuation of antihypertensive medication on orthostatic hypotension in older persons with mild cognitive impairment: the DANTE Study Leiden.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=26758532

 

 PMID:26758532

 

研究デザイン:ランダム化比較試験(二次解析)

 

論文のPECO

P:起立性低血圧があり、軽度認知機能障害がある75歳以上の患者で、降圧薬治療を行っており、重篤な心血管疾患のない患者162名(収縮期血圧<160mmHg、MMSE=21~27点)

E:降圧薬中断

C:降圧薬継続

O:(Primary) 4カ月以上起立性低血圧を発症しなかった割合

 

※除外基準:認知症の診断を受けた患者、重篤な心血管疾患

 

※起立性低血圧の定義

座位から立ちあがった時に、収縮期血圧20mmHg以上または拡張期血圧10mmHg以上の低下

 

ランダム化されているか?

→ランダム化されている

 

一次アウトカムは明確か?

→明確といえる

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム??

 

盲検化されているか?

→盲検化はされていないと思われる

 

均等に割り付けられているか

→均等に2群に割り付けられていると思われる

 

ITT解析を行われているか?

→ITT解析とPPS解析

 

脱落率は結果を覆すほどあるか?

→追跡率90.5%?

 

追跡期間

→4カ月

 

結果

【ベースライン】

年齢中央値:中止群:80.4歳 継続群:81.6

 

※患者の流れはFigure1を参照

 

4カ月起立性低血圧を起こさなかった患者(Primary outcome

①ITT

中止群:43/86件(50%)vs 継続群:29/76件(38%)

RR=1.31(95%CI:0.92~1.87) p=0.13

 

②PPS(完全に中断または一時的に中断 vs 継続)

中止群:37/67件(55%)vs 継続群:29/76件(38%)

RR=1.45(95%CI:1.01~2.07) p=0.04

 

③PPS(完全に中断 vs 継続)

中止群:28/67件(61%)vs 継続群:29/76件(38%)

RR=1.60(95%CI:1.10~2.31) p=0.01

 

感想

 あくまで二次解析ではあるが、起立性低血圧を起こしやすいような高齢者においては、降圧薬の中止で起立性低血圧を起こすリスクが下がる可能性が示されている。

 今回の患者群では、75歳以上と高齢な患者が対象となっている。両群共に半数以上が2剤以上の降圧薬を服用していた。結局、降圧剤中止群も再開になっている患者が多い印象である。完全に降圧薬を中断した患者のみvs継続群は、③PPS(完全に中断 vs 継続)の結果であるが、RR=1.60(95%CI:1.10~2.31) p=0.01。

 個人的に、起立性低血圧が真のアウトカムかという所は迷った。骨折や転倒なら、真のアウトカムだと思うが・・・。

 イメージとして、カルシウム拮抗薬では起立性低血圧が多い印象はあるが、個々のタイプや薬剤ごとの起立性低血圧発生の割合についても調べてみたい。また、骨折や転倒を一次アウトカムとした研究も見つけて読んでみたい。

 75歳以上と高齢で、収縮期血圧が相当高いわけではない(150未満ぐらい?)の降圧薬服用中の患者が、ふらつきやめまいなどを訴えている場合、降圧剤を1種類減らす、または減量を考えるのも1つの選択肢になるかなと感じた。中止するなら、どの系統の降圧剤を優先して中止するのがいいかも含めて、もっと突き詰めてみたい。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

日本人におけるプラバスタチンの冠動脈疾患予防効果(MEGA study)

ご訪問ありがとうございます。

 

今回は、日本人を対象にプラバスタチンの冠動脈疾患一次予防効果を見た、MEGA studyの論文を読んでみました。

 

参考文献 Primary prevention of cardiovascular disease with pravastatin in Japan (MEGA Study): a prospective randomised controlled trial.

Pubmedのリンク   https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17011942

 

 PMID:17011942

 

ちなみに、Pubmedからではフルで読めなかったため、下のリンクからアクセスして頂ければと思います。↓↓ 

http://www.puppem.com/Documents/Lancet--Nakamura-MEGA-FullText30-09-2006.pdf

 

研究デザイン:ランダム化比較試験

 

論文のPECO

P:高コレステロール血症(5.69~6.98mmol/L:220~270mg/dL)で、冠動脈心疾患や脳卒中の既往の無い患者

E:プラバスタチン10~20mg/日+食事療法→3866名

C:食事療法のみ →3966名

O:(Primary) 冠動脈心疾患(致死性・非致死性心筋梗塞狭心症、突然死、冠動脈血行再建術)

 

除外基準

→家族性高コレステロール血症、冠動脈心疾患既往、脳卒中既往

 

ランダム化されているか?

→ランダム化されている

 

一次アウトカムは明確か?

→明確といえる

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

盲検化されているか?

→オープンラベル(PROBE法:prospective randomised, open-labelled, blinded-endpoint)

 

均等に割り付けられているか

→均等に2群に割り付けられていると思われる

 

ITT解析を行われているか?

→ITT解析されている

 

サンプルサイズ

→8000名(パワー80%、α=10%)

 

脱落率は結果を覆すほどあるか?

→追跡率:98.7%

 

追跡期間

→平均5.3年

 

結果

【ベースライン】

平均年齢:E群:58.4歳 C群:58.2歳

 

コレステロール:両群ともに242mg/dL

HDLコレステロール:両群ともに58mg/dL

LDLコレステロール:両群ともに156mg/dL

トリグリセリド:両群ともに127mg/dL

 

【アウトカム】

冠動脈心疾患(Primary outcome

E群:66/3866件(3.3/1000人年)vs C群:101/3966件(5.0/1000人年)

HR=0.67(95%CI:0.49~0.91) p=0.01  NNT=119

 

心筋梗塞

E群:17/3866件(0.9/1000人年)vs C群:33/3966件(1.6/1000人年)

HR=0.52(95%CI:0.29~0.94) p=0.03  NNT=255

 

心臓突然死

E群:5/3866件(0.2/1000人年)vs C群:10/3966件(0.5/1000人年)

HR=0.51(95%CI:0.18~1.50) p=0.21

 

狭心症

E群:46/3866件(2.3/1000人年)vs C群:57/3966件(2.8/1000人年)

HR=0.83(95%CI:0.56~1.23) p=0.35

 

 

冠動脈血行再建術

E群:39/3866件(2.0/1000人年)vs C群:66/3966件(3.2/1000人年)

HR=0.60(95%CI:0.41~0.89) p=0.01

 

脳卒中(Secondary outcome

E群:50/3966件(2.5/1000人年)vs C群:62/3866件(3.0/1000人年)

HR=0.60(95%CI:0.41~0.89) p=0.01

 

感想

 この研究はPROBE法が用いられており、患者側、医療者側は盲検化されていない。その上で、Primary outcomeにはソフトエンドポイントである冠動脈血行再建術が含まれている点から、結果はやや割り引いて考える必要があると思う。

 Primary outcomeのNNTを計算してみると119名となる。理論上1人のイベント発生を防ぐために、119名の治療が必要ということなので、プラバスタチンを冠動脈心疾患の一次予防を狙って服用することのメリットというのは案外大きくは無いのかなといった印象。心筋梗塞予防のNNTは255名なので、さらに小さいものかなと感じた。

 今回は、E群もC群も、食事療法も行っているので、食事療法をやっている群とやっていない群の比較というのも気になる所である。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

メトホルミンで2型糖尿病関連イベントは防げますか?(UKPDS34)

ご訪問ありがとうございます。

 

今回は前回のUKPDS33に続きまして、UKPDS34を読んでみました。

 

参考文献 Effect of intensive blood-glucose control with metformin on complications in overweight patients with type 2 diabetes (UKPDS 34). UK Prospective Diabetes Study (UKPDS) Group.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9742977

 

 PMID:9742977

 

研究デザイン:ランダム化比較試験

 

論文のPECO

P:新規に糖尿病を発症した、過体重(理想体重の120%以上)で空腹時血糖109.8~270mg/dLの患者1704名(3カ月の食事療法を行った者、高血糖症状無し、25~65歳:平均53歳)

E:メトホルミンを用いた厳格な血糖コントロール:空腹時血糖<108mg/dl(6.0mmo/L)を目指す→342名

C:食事療法のみ→411名

O:(Primary)

①糖尿病関連エンドポイント(突然死、高血糖または低血糖による死亡、致死性・非致死性心筋梗塞狭心症心不全脳卒中、腎不全、切断、硝子体出血、光凝固を必要とする網膜症、失明、水晶体摘出術)

②糖尿病関連死亡(心筋梗塞脳卒中・末梢血管疾患・腎疾患・高血糖低血糖による死亡、突然死)

③総死亡

 

 ※メトホルミンの用量:開始用量850mg/日、最大2550mg/日

 

ランダム化されているか?

→ランダム化されている

 

一次アウトカムは明確か?

→アウトカムが複数存在するため注意が必要かも

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

盲検化されているか?

→盲検化はされていないと思われる

 

均等に割り付けられているか

→均等に2群に割り付けられていると思われる(Table1)

 

ITT解析を行われているか?

→ITT解析されている

 

サンプルサイズ

→記載が見つけられず

 

脱落率は結果を覆すほどあるか?

→具体的な追跡率が分からなかったが、ランダム化された人数と結果の人数が同じなので大きく影響を及ぼすほどの脱落ではないかも。

 

追跡期間

→中央値10.7年

 

結果

【ベースライン】

平均年齢 E群:53歳 C:53歳

空腹時血糖 E群:145.7mg/dl C群:144mg/dl

 

HbA1cの変化】

E群:ベースライン:7.3%→6.7%→7.9%→8.3%

C群:ベースライン:7.1%→7.5%→8.5%→8.8%

 

※Intensive群:クロルプラミド、グリベンクラミド、インスリン使用

 

①糖尿病関連エンドポイント

E群:98/342件(29.8/1000人年)vs C群:160/411件(13.3/1000人年)

RR=0.68(95%CI:0.53~0.87)  p=0.0023

 

※Intensive群 :350/951件 vs C群:160/411件

RR=0.93(95%CI:0.77~1.12)  p=0.46

 

②糖尿病関連死亡

E群:28/342件(7.5/1000人年)vs C群:55/411件(12.7/1000人年)

RR=0.58(95%CI:0.37~0.91)  p=0.017

 

※Intensive群 :103/951件 vs C群:55/411件

RR=0.80(95%CI:0.58~1.11)  p=0.19

 

③総死亡

E群:50/2729件(13.5/1000人年)vs C群:89/1138件(20.6/1000人年)

RR=0.64(95%CI:0.45~0.91) p=0.011

 

※Intensive群 :190/951件 vs C群:89/411件

RR=0.92(95%CI:0.71~1.18)  p=0.19

 

心筋梗塞

E群:39/342件(11.0/1000人年)vs C群:73/411件(18.0/1000人年)

RR=0.61(95%CI:0.41~0.89)  p=0.01

 

※Intensive群 :139/951件 vs C群:73/411件

RR=0.79(95%CI:0.60~1.05)  p=0.11

 

脳卒中

E群:12/342件(3.3/1000人年)vs C群:23/411件(5.5/1000人年)

RR=0.59(95%CI:0.29~1.18)  p=0.13

 

※Intensive群 :60/951件 vs C群:23/411件

RR=1.14(95%CI:0.70~1.84)  p=0.60

 

・細小血管イベント

E群:24/342件(6.7/1000人年)vs C群:38/411件(9.2/1000人年)

RR=0.71(95%CI:0.43~1.19)  p=0.19

 

※Intensive群 :74/951件 vs C群:38/411件

RR=0.84(95%CI:0.57~1.24)  p=0.38

 

感想

 メトホルミンを用いる事で、糖尿病関連エンドポイント、糖尿病関連死亡、総死亡いずれも減らす事が出来るという事が示唆されている。

 本研究において、空腹時血糖目標値は108mg/dl(6.0mmo/L)以下であったが、これは上手くコントロール出来ていないようである(Figure3)。

 それにも関わらず、この研究の結果では心筋梗塞も減らす事が出来たという結果。UKPDS33では、結果が細小血管イベントに引っ張られている感じではあったが、こちらはハードエンドポイントも減っている点は着目したいところ。

 用いられているメトホルミンの量は、開始用量850mg/日で、その後1700mg/日、最大2550mg/日と、日頃見かける用量よりも多いような印象がある。

 対象となっているのは、過体重な患者群であり、このような患者に対しては少なくとも、グリベンクラミドやインスリンよりはメトホルミンを使う価値があるように思える。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

インスリンやSU剤による厳格な血糖コントロールで、2型糖尿病関連イベントは防げますか?(UKPDS33)

ご訪問ありがとうございます。

 

今回は、引き続き糖尿病関連の有名論文であるUKPDS33を読んでみました。

 

ちなみに、Pubmedからのリンク先ではフリーで読めなかったので、以下のリンク先からアクセスして頂ければと思います。

https://www.vumc.nl/afdelingen-themas/41463/27797/2089686/1611848/1611870/literatuur.pdf

 

参考文献 Intensive blood-glucose control with sulphonylureas or insulin compared with conventional treatment and risk of complications in patients with type 2 diabetes (UKPDS 33)

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9742976

 

 PMID:9742976

 

研究デザイン:ランダム化比較試験

 

論文のPECO

P:新規に糖尿病を発症した患者(中央値54歳)のうち、3カ月の食事療法後の平均空腹時血糖が6.1~15.0mmol/L(109.8~270 mg/dl)の患者3867名

E:インスリンやSU剤を用いた厳格な血糖コントロール→空腹時血糖<108mg/dl(6.0mmo/L)を目指す

C:従来の食事療法(空腹時血糖値>270mg/dlになったときのみ薬剤使用)

O:(Primary)

①糖尿病関連エンドポイント(突然死、高血糖または低血糖による死亡、致死性・非致死性心筋梗塞狭心症心不全脳卒中、腎不全、脚切断、硝子体出血、光凝固を必要とする網膜症、失明、水晶体摘出術)

②糖尿病関連死亡(心筋梗塞脳卒中・末梢血管疾患・腎疾患・高血糖低血糖による死亡、突然死)

③総死亡

 

 

除外基準

3mmol/Lを超えるケトン尿症、175mmol/Lを超える血清クレアチニン、1年以内の心筋梗塞狭心症心不全、主要血管イベント、レーザー治療を必要とする網膜症、悪性高血圧、未治療の内分泌障害、インスリン療法に影響する職業、重度の併存疾患、理解不十分な状態、研究への無意欲

 

※使用されたSU薬:クロルプロパミド、グリベンクラミド、グリピジド

 

ランダム化されているか?

→ランダム化されている

 

一次アウトカムは明確か?

→アウトカムが多数存在するため注意が必要

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

盲検化されているか?

→盲検化はされていないと思われる。PROBE法?

 

均等に割り付けられているか

→均等に2群に割り付けられていると思われる

 

ITT解析を行われているか?

→ITT解析されている

 

サンプルサイズ

→3600名(パワー81%、α=1%?)

 

脱落率は結果を覆すほどあるか?

→具体的な追跡率が分からなかったが、ランダム化された人数と結果の人数が同じなので大きく影響を及ぼすほどの脱落ではないかも。

 

追跡期間

→中央値10.0年

 

結果

【ベースライン】

平均年齢 E群:54歳 C:54歳

空腹時血糖 E群:142.2mg/dl C群:145.7mg/dl

 

HbA1cの変化】

E群:ベースライン:7.05%→6.6%→7.5%→8.1%

C群:ベースライン:7.09%→7.4%→8.4%→8.7%

 

①糖尿病関連エンドポイント

E群:963/2729件(40.9/1000人年)vs C群:438/1138件(46.0/1000人年)

RR=0.88(95%CI:0.79~0.99)  p=0.029

 

②糖尿病関連死亡

E群:285/2729件(10.4/1000人年)vs C群:129/1138件(11.5/1000人年)

RR=0.90(95%CI:0.73~1.11) p=0.34

 

③総死亡

E群:489/2729件(17.9/1000人年)vs C群:213/1138件(18.9/1000人年)

RR=0.94(95%CI:0.80~1.10) p=0.44

 

 

感想

 糖尿病関連エンドポイントの中には、切断や水晶体摘出術などソフトエンドポイントも含まれている。そして、小血管イベントに結果が引っ張られているような印象であるため、結果は割り引いて考えた方が良さそうだと感じた。

 そもそも、厳格コントロール群は空腹時血糖<6.0mmol/Lを目指していたはずだが、Figure2を見ると最終的に全くもってこの目標値から外れてしまっており、血糖コントロールが上手くいっていないような印象を受けた。

 くわえて本研究の患者のベースラインにおける年齢は54歳と若いので、死亡などのアウトカムに差が出なかったという事も考えられるが、もう少し血糖コントロールの上手くいった場合の結果というのがどうなのか調べていきたい。

 

ということで、引き続きUKPDS34、UKPDS80なども読んでみようと思う。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。