心不全既往の患者に対するDPP-4阻害薬の心血管リスク

ご訪問ありがとうございます。

 

今回はDPP-4阻害薬関連の論文を調べている中で、アブストしか読めないが気になるものを見つけたので読んでみました。

 

参考文献 Dipeptidyl peptidase-4 inhibitors and cardiovascular risks in patients with pre-existing heart failure.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27647170

 

PMID:27647170

 

研究デザインコホート研究

 

論文のPECO

P:心不全既往のある2型糖尿病患者196986名

E:DPP-4阻害薬使用あり→30204名

C:DPP-4阻害薬使用無し→166782名

O:①総死亡 ②心筋梗塞と虚血性脳卒中の複合アウトカム ③心不全による入院

 

研究対象集団の代表性

→台湾の国民健康保険データベースを用いているため、大きな問題無し

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

調節した交絡因子は何か?

→傾向スコアマッチングがされている

 

追跡期間

→不明

 

結果

①総死亡

E群:67.02/1000人年 vs C群:102.8/1000人年

HR=0.67(95%CI:0.64~0.70)

 

心筋梗塞と虚血性脳卒中の複合アウトカム 

E群:37.89/1000人年 vs C群:47.54/1000人年

HR=0.81(95%CI:0.76~0.87)

 

心筋梗塞 

E群:12.70/1000人年 vs C群:16.18/1000人年

HR=0.80(95%CI:0.71~0.89)

 

★虚血性脳卒中 

E群:26.37/1000人年 vs C群:32.46/1000人年

HR=0.83(95%CI:0.76~0.89)

 

心不全による入院

有意差無し

 

感想

 心不全既往患者では、DPP-4阻害薬の使用で総死亡や心筋梗塞・虚血性脳卒中を有意に減るという結果。また、これまで読んできた論文で示唆されていた心不全による入院も増やさないという結果。

 観察研究であり、アブストラクトだけでは追跡期間や患者背景なども分からないため適応には注意が必要かと思うが、少なくとも心不全既往患者に対してDPP-4阻害薬を使う事を否定するような結果ではないと思う。

 この論文だけでは、心不全既往患者に対してDPP-4阻害薬を使う事が妥当なのか結論できないので、もう少し詳しく調べてみようと思う。

 

 今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

DPP-4阻害薬の服用で感染症は増えますか?

ご訪問ありがとうございます。

 

今回は、DPP-4阻害薬に関して気になる論文を見つけたので、読んでみることにしました。

 

参考文献 DPP-4 inhibitors and risk of infections: a meta-analysis of randomized controlled trials.

リンク   https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=26417956

 

PMID:26417956

 

研究デザイン:メタ分析

 

論文のPECO

P:2型糖尿病患者

E:DPP-4阻害薬使用あり

C:DPP-4阻害薬使用無し(プラセボ、他の血糖降下薬)

O:感染症

 

感染症

インフルエンザ、鼻咽頭炎副鼻腔炎咽頭洞炎、咽頭炎、気管支炎、気道感染、上気道感染、下気道感染、肺炎、胃腸炎、尿路感染症、細菌性腎盂腎炎、慢性腎盂腎炎の悪化、膀胱炎、前立腺炎、尿中細菌の増加、胃腸炎、肝炎、胆嚢炎、虫垂炎、ウイルス感染症、肛門潰瘍、皮膚潰瘍、足白癬、蜂巣炎、ウイルス性心膜炎、クロストリジウム感染症ブドウ球菌創傷感染症大腸菌菌血症、敗血症、感染及び寄生

 

 

一次アウトカムは明確か?

→明確

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

4つのバイアス

1、評価者バイアス

・2名の評価者が独立してデータ収集

 

評価者バイアスはさほど問題なさそう

 

2出版バイアス

情報元:MEDLINE(PubMed)、EMBASE、 Cochrane Central Register of Controlled Trials

・追加データも探そうとしている

・言語制限に関する記載は見つけられず

 

出版バイアスはさほど問題なさそう

 

3、元論文バイアス

Cochrane risk of bias tool を用いて元論文の質を評価している

→Supplementary Figure1

(http://www.readcube.com/articles/supplement?doi=10.1002%2Fdmrr.2723&index=0&ssl=1&st=08010b67a6e4244d31a6ea291c632706&preview=1)を見てみると、ほとんどがLow risk

 

元論文バイアスもさほど問題なさそう

 

4、異質性バイアス

それぞれの結果を参照

 

結果

感染症

DPP-4阻害薬 vs プラセボ OR0.97 (95%CI:0.91~1.04)  I2=42% p=0.40

 

DPP-4阻害薬 vs メトホルミン OR1.22 (95%CI:0.95~1.56)  I2=41% p=0.12

 

DPP-4阻害薬 vs SU薬 OR1.09 (95%CI:0.93~1.29)  I2=40% p=0.29

 

DPP-4阻害薬 vs チアゾリジン薬 OR0.86 (95%CI:0.65~1.14)  I2=0% p=0.29

 

DPP-4阻害薬 vs α-GI OR1.03 (95%CI:0.33~3.22)  I2=73% p=0.96

 

DPP-4阻害薬ごとの比較

アログリプチン vs プラセボ OR1.28 (95%CI:0.99~1.67)  I2=41% p=0.06

 

リナグリプチン vs プラセボ OR0.84 (95%CI:0.69~1.03)  I2=41% p=0.09

 

シタグリプチン vs プラセボ OR1.07 (95%CI:0.92~1.25)  I2=0% p=0.37

 

サキサグリプチン vs プラセボ OR0.98 (95%CI:0.92~1.05)  I2=13% p=0.65

 

ビルダグリプチン vs プラセボ OR0.84 (95%CI:0.69~1.02)  I2=27% p=0.07

 

呼吸器感染症

DPP-4阻害薬 vs コントロール OR0.98(95%CI:0.91~1.05)  I2=39% p=0.58

 

尿路感染症

DPP-4阻害薬 vs コントロール OR1.11(95%CI:0.93~1.32)  I2=17% p=0.27

 

消化器系感染症

DPP-4阻害薬 vs コントロール OR1.17(95%CI:0.66~2.07)  I2=0% p=0.59

 

感想

 DPP-4阻害薬の使用で、感染症リスクは増えないことが示されている。ただ、アログリプチンでは、有意差は出ていないものの、感染症リスクが高まる傾向が見られる点が気になる。

 この結果から評価すると、DPP-4阻害薬の感染症への寄与度はそこまで大きくは無いのではないかと思う。

 しかし、そもそも糖尿病患者では感染症のリスクが高くなっている事が予想されるため、うがいの徹底や歯周病予防の観点から口腔ケアなど心がけた方がよいのではないだろうか?

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

ビルダグリプチンで心血管イベントは減らせますか?

ご訪問ありがとうございます。

 

個人的にビルダグリプチンの文献を調べる必要が出てきたのですが、その中で見つけた論文を1つ読んでみました。しかし、アブストしか読めません。

 

参考文献 Cardiovascular and heart failure safety profile of vildagliptin: a meta-analysis of 17 000 patients.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26250051

 

PMID:26250051

 

研究デザイン:メタ分析

 

論文のPECO

P:2型糖尿病患者

E:ビルダグリプチン50mg 1日1回or 2回 →9599名

C:ビルダグリプチン服用無し(プラセボ、ビルダグリプチン以外の血糖降下薬)→7847名

O:Primary:主要心血管イベント(MACE:心筋梗塞脳卒中、心血管死亡)

  Secondary:心筋梗塞脳卒中、心血管死亡、心不全

 

 一次アウトカムは明確か?

→明確

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

結果

【ベースライン】

年齢 平均57

BMI 平均30.5kg/m2 

HbA1c 平均8.1

糖尿病歴 平均5.5

 

主要心血管イベント(MACE心筋梗塞脳卒中、心血管死亡)

ビルダグリプチン群:83/9599件(0.86%)vs C群:85/7847件(1.20%)

RR0.82 (95%CI:0.61~1.11) 

 

心不全

ビルダグリプチン群:41/9599件(0.43%)vs C群:32/7847件(0.45%)

RR1.08 (95%CI:0.68~1.70) 

 

 

感想

 残念ながらアブストしか読めず、詳しい情報が得られないため参考程度にしか出来ないと思うが、ビルダグリプチンでMACEは減少傾向ではあるものの有意には減らないという結果。しかし、追跡期間の記載がなく、期間が短すぎたりしたのかもしれないが。

 一方、Secondary outcomeではあるが、サキサグリプチンの研究(SAVOR-TIMI 53試験)で増加が示唆されていた心不全の発生は増えないという結果。

 アブストしか読めないメタ分析って詳細が全然わからず、うーん、どうしようかな??って感じ・・・。現時点では、心不全リスクの高い事が予想される患者においては、やはり慎重に使用すべきかとは思う。

 パブっても、ググっても、自分で探してみた感じでビルダグリプチンの真のアウトカムを検討した研究がこれしか見つけられずでした。

 

 今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

DPP-4阻害薬と心血管イベントリスク

 

ご訪問ありがとうございます。

 

今回も、前回に引き続きDPP-4阻害薬と心血管イベントの関係について検討したメタ分析の論文を読んでみました。

 

参考文献 Dipeptidyl peptidase-4 inhibitors and cardiovascular risk: a meta-analysis of randomized clinical trials.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22925682

 

PMID:22925682

 

研究デザイン:メタ分析

 

論文のPECO

P:2型糖尿病患者

E:DPP-4阻害薬

C:プラセボ、その他の薬剤

O:主要心血管イベント(心血管死亡、非致死性心筋梗塞ACS心不全

 

※DPP-4阻害薬:ビルダグリプチン、シタグリプチン、サキサグリプチン、アログリプチン、リナグリプチン、デュトグリプチン

 

 一次アウトカムは明確か?

→明確

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

4つのバイアス

1、評価者バイアス

2名の評価者が独立して研究選定、データ抽出を行っている

 

評価者バイアスはさほど問題なさそう

 

2、出版バイアス

情報元: MEDLINE、EMBASE

・未出版のデータも検索している

・言語制限に関する記載は無し

・ファンネルプロットはだいたい左右対称と思われる

 

出版バイアスはさほど問題なさそう

 

3、元論文バイアス

Jadadスコアを用いて評価

結果の記載が見つけられず・・・

 

元論文バイアスは不明

 

4、異質性バイアス

不明(わかりませんでした・・・)

 

結果

主要心血管イベント(MACE

全体 OR0.71 (95%CI:0.59~0.86) p<0.001

 

シタグリプチン OR0.86 (95%CI:0.60~1.24) p=0.430

 

ビルダグリプチン OR0.61 (95%CI:0.43~0.86) p<0.001

 

サキサグリプチン OR0.67 (95%CI:0.45~0.99) p=0.047

 

リナグリプチン OR0.72 (95%CI:0.45~1.16) p=0.18

 

アログリプチン OR0.86 (95%CI:0.25~2.93) p=0.81

 

急性心筋梗塞

OR0.64 (95%CI:0.44~0.94) p=0.023 

 

脳卒中

OR0.77 (95%CI:0.48~1.24) p=0.290

 

死亡

OR0.60 (95%CI:0.41~0.88) p=0.008

 

心血管死亡

OR0.67 (95%CI:0.39~1.14) p=0.140

 

感想

 DPP-4阻害薬の使用で主要心血管イベントは減るという結果。個々のDPP-4阻害薬ごとの結果を見てみると、ビルダグリプチン、サキサグリプチンでは有意に減らすが、他のDPP-4阻害薬では減らさないという結果となっている。

 全体的に追跡期間が24週間程度の短期間の研究が多いため、シタグリプチン、リナグリプチン、アログリプチンではMACE発生に差が無かったのかもしれない。そして、イベント発生数が少ない研究が多いところも気になる所。

 逆にこのような短期間でも、ビルダグリプチン、サキサグリプチンではMACE発生に有意差が出ていると考えると、それはそれで興味深い所ではある。

 この論文の結果からだと、MACE抑制にはビルダグリプチン、サキサグリプチンが他のDPP-4阻害薬と比べて優位なようであるが、元論文を見てみないと、このメタ分析だけでは何とも言い難い所ではあるため、個々の引用文献も読んでみようと思う。

 あと、フォレストプロットの所に出てきた、「Kendall’s tau 」って何でしょう??

異質性みたいなやつ??すみません、ちゃんと勉強しときます・・・。

 

 今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

DPP-4阻害薬は心血管イベントに影響しますか?

ご訪問ありがとうございます。

 

今回は、DPP-4阻害薬と心血管イベントの関連に関するSR&MAの論文を読んでみました。

 

参考文献 Dipeptidyl peptidase-4 inhibitors and cardiovascular outcomes: meta-analysis of randomized clinical trials with 55,141 participants.

リンク   https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=24750644

 

PMID:24750644

 

研究デザイン:システマティックレビュー&メタ分析

 

論文のPECO

P:2型糖尿病患者

E:DPP-4阻害薬使用あり

C:DPP-4阻害薬使用無し(プラセボ、アクティブコントロール

O:総死亡、心血管死亡、急性冠症候群、脳卒中心不全

 

※含まれているDPP-4阻害薬

シタグリプチン、サキサグリプチン、ビルダグリプチン、リナグリプチン、アログリプチン

 

一次アウトカムは明確か?

→5つなので明確と考えたが、複数アウトカムが設定されているため、いずれかで有意差が出たときは注意が必要かもしれない

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

4つのバイアス

1、評価者バイアス

2名の評価者が独立して評価

 

評価者バイアスはさほど問題なさそう

 

2、出版バイアス

情報元:MEDLINE、EMBASE

・未出版のデータも探そうとしている

・英語で書かれたもののみ

・ファンネルプロットは、だいたい左右対称のように思われる

 

出版バイアスはさほど問題なさそう

 

3、元論文バイアス

・50個のRCTが統合されている

・Cochrane Collaboration risk of bias toolを用いて元論文の質を評価

→20の元論文はLow risk、その他はHigh riskと評価された

 

やや質の低い論文が多いかもしれないので、注意は必要かと思う

 

4、異質性バイアス

いずれも異質性は低い

 

結果

総死亡

RR=1.01 (95%CI:0.91~1.13)  I2=0% p=0.83

 

心血管死亡

RR=0.97 (95%CI:0.85~1.11)  I2=0% p=0.70

 

急性冠症候群

RR=0.97 (95%CI:0.87~1.08) I2=0% p=0.59

 

脳卒中

RR=0.98 (95%CI:0.81~1.18) I2=0% p=0.80

 

心不全

RR=1.16 (95%CI:1.01~1.33) I2=0% p=0.04

 

感想

 心血管イベントは、プラセボや他の血糖降下薬(メトホルミン、SU薬、チアゾリジン系薬)と比較して死亡や心血管イベントを減らさないという結果。

 個々の研究については、やや質の低い物が多いかもしれないので注意が必要かもしれない。そして、イベント発生数が0件という研究も多く、ほとんどがScirica et al.(2013)【PMID:23992601】の研究に結果が引っ張られている感じがある。

 心不全リスクが高まる事が示唆されているが、これもScirica et al.(2013)の研究に引っ張られている感じではある。しかし、重大なイベントでありこの辺りは慎重に評価していく必要がありそう。

 少なくとも、心血管イベント防止という意味でのDPP-4阻害薬から得られる恩恵は不明確であり、また一部の研究で心不全リスクの増加が示唆されている点からも、2型糖尿病患者に対して積極的にDPP-4阻害薬を用いる事を後押しするような結果ではない。

 患者個々の背景なども考慮しつつ、個々にに対して用いる事のメリットを検討していきたい。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

アトルバスタチンは先発品と後発品で効果は同じですか?

ご訪問ありがとうございます。

 

今回はアトルバスタチンの先発品と後発品の比較をした論文です。

 

参考文献 Comparative Effectiveness of Generic Atorvastatin and Lipitor® in Patients Hospitalized with an Acute Coronary Syndrome.

 

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=27098970

 

PMID:27098970

 

研究デザインコホート研究

 

論文のPECO

P:65歳以上のACSによる入院ののちに退院してきた患者

E:リピトール(先発品)

C:アトルバスタチンの後発品

O:(Primary)1年以内の死亡とACS再発による入院

 (Secondary)心不全による入院、脳卒中、糖尿病の新規発症、横紋筋融解症、腎不全

 

ジェネリックは9件の会社のものが含まれている

 

研究対象集団の代表性

→一般人口を対象としているので大きな問題は無いかと思われる

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

調節した交絡因子は何か?マッチングされているか?

→傾向スコアマッチングされている(Table1参照)

 

追跡期間

→1年間

 

結果

【ベースライン】

平均年齢 76.9

 

1年以内の死亡

先発品:11.6% vs 後発品:11.6%

HR=0.99(95%CI:0.90~1.09) p=0.84

 

1年以内の死亡+ACSによる再入院(Primary outcome

先発品:17.7% vs 後発品:17.7%

HR=1.00(95%CI:0.93~1.08) p=0.94

 

感想

 Primary outcomeとしては1年以内の死亡とACS再発による入院であるが、HR=1.00(95%CI:0.93~1.08)と先発品と後発品の間に大きな差はないという結果。個人的には、死亡というアウトカムを検討するのに1年間というのはやや短い印象で、もう少し長い追跡期間になった場合の結果も気になる。

 また、Table2や本文のPrimary and Secondary Outcomesの記述を見てみると、他のアウトカムも先発品と後発品で大きな差はなさそうである。

 Limitationsの所に、However, some risk factors (eg, smoking, physical activity) were not available.と記載があり、傾向スコアマッチングはされているが、喫煙などはマッチングされていないようで、この辺りは議論の余地もありそうである。

 今回の結果を見る限りでは、少なくとも1年間という短期間の使用においては、後発品が先発品に劣るというものではなさそうである。

 

今までLimitationはあまり気にしてなかったんですが、ざっとでも見ておいた方が良さそうですね。

 

今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。

アトルバスタチンを増量すると心血管イベントは減らせますか?

ご訪問ありがとうございます。

 

今回はアトルバスタチンの増量による心血管イベント抑制効果についての論文を読んでみました。

 

参考文献 Intensive lipid lowering with atorvastatin in patients with stable coronary disease.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15755765

 

 

PMID:15755765

 

研究デザイン:ランダム化比較試験

 

論文のPECO

P:LDLコレステロール<130mg/dLの冠動脈心疾患患者10001名

E:アトルバスタチン80mg(LDL<75mg/dLを目指す)

C:アトルバスタチン10mg(LDL<100mg/dLを目指す)

O:主要心血管イベント(冠動脈心疾患による死亡、非致死性非処置関連心筋梗塞、心停止後の蘇生、致死性・非致死性脳卒中)

 

ランダム化されているか?

→ランダム化されている

 

一次アウトカムは明確か?

→明確といえる

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

盲検化されているか?

→二重盲検されている

 

均等に割り付けられているか

→均等に2群に割り付けられていると思われる

 

ITT解析を行われているか?

→ITT解析されている

 

 脱落率は結果を覆すほどあるか?

→追跡率=99.3%

 

追跡期間

→中央値4.9年

 

結果

【ベースライン】

平均年齢:10mg群:60.9±8.8歳 80mg群:61.2±8.8歳

LDLコレステロール:10mg群:98±18% 80mg群:97±18%

 

治療期間のLDLコレステロール平均値

10mg群:101mg/dL  80mg群:77mg/dL

 

主要心血管イベント(冠動脈心疾患による死亡、非致死性非処置関連心筋梗塞、心停止後の蘇生、致死性・非致死性脳卒中)→Primary outcome

10mg群:548/5006件(10.9%)vs 80mg群:434/4995件(8.7%)

HR=0.78(95%CI:0.69~0.89) p<0.001  NNT=46

 

心血管死亡

10mg群:127/5006件(2.5%)vs 80mg群:101/4995件(2.0%)

HR=0.80(95%CI:0.61~1.03) p=0.09

 

非致死性非処置関連心筋梗塞

10mg群:308/5006件(6.2%)vs 80mg群:243/4995件(4.9%)

HR=0.78(95%CI:0.66~0.93) p=0.004

 

心停止後の蘇生

10mg群:26/5006件(0.5%)vs 80mg群:25/4995件(0.5%)

HR=0.96(95%CI:0.56~1.67) p=0.89

 

致死性非致死性脳卒中

10mg群:155/5006件(3.1%)vs 80mg群:117/4995件(2.3%)

HR=0.75(95%CI:0.59~0.96) p=0.02

 

 

感想

 主要心血管イベントはアトルバスタチン10mgから80mgに増やす事で、22%減らす事が出来るという結果。NNTは46なので、その意義は個人的には小さくは無いように感じた。

  しかし、国内でのアトルバスタチンの用量は、高コレステロール血症では20mgまで、家族性高コレステロール血症では40mgなので、80mgというのは高用量である。このことから、国内で用いる事を想定する場合は解釈に注意が必要かと思う。

 LDLコレステロールに着目すると、100mg/dLを目指すより75mg/dLを目指してコントロールした方が、心血管イベントは少ないようである。ただ、これは単純にコレステロール低下による効果以外に、スタチンのプレイオトロピック効果によるものもあるのかもしれないが・・・。

 個人的には、スタチンの増量をする場合とエゼチミブを併用する場合でどうなのかが気になる。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。