NSAIDごとに心不全リスクは異なりますか?

ご訪問ありがとうございます。

 

今日は、11月11日です。そう、ポッキー&プリッツの日ですね。

皆さんはポッキーまたはプリッツを食べるのでしょうか?

 

さて、そんなことは全く関係ないですが、今回は、NSAIDごとの心不全リスクを調べた研究です。

 

参考文献 Non-steroidal anti-inflammatory drugs and risk of heart failure in four European countries: nested case-control study.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27682515

 

PMID:27682515

 

研究デザインコホート内症例対象研究

 

 

論文のPECO

P:18歳以上の新規にNSAIDを開始した成人のうち、心不全のため入院した92163名(症例)と、年齢、性別、コホート参加日でマッチングした8246403名(対照)

E:NSAIDを服用

C:NSAID服用無し

O:心不全による入院

 

コホート参加の前年に心不全による入院をした患者は除外

 

研究対象集団の代表性

→4か国(オランダ、イタリア、ドイツ、イギリス)の人口ベースの医療データベースが用いられており、大きな問題は無いかと思われる

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

アウトカムは明確か?

→明確と言える

 

調節した交絡因子は何か?

コホート参加日の年齢、併存疾患、併用薬

※Table 2 reports the full list of covariates.と記載あり→詳しくはTable2を参照

 

結果

※服用のタイミングによる定義

・Current:アウトカム発生14日以内の使用 

・Recent:アウトカム発生15~183日前の使用

・Past:184日以上前

 

心不全による入院

【服用タイミングごとのオッズ比】

Current vs Past  OR=1.19(95%CI:1.17~1.22)

Recent vs Past  OR=1.00(95%CI:0.99~1.02)

 

NSAIDごとのオッズ比】 ※主なもののみ

インドメタシン     OR=1.51(95%CI:1.33~1.71)

スリンダク       OR=1.32(95%CI:0.79~2.21)

ジクロフェナク     OR=1.19(95%CI:1.15~1.24)

イブプロフェン     OR=1.18(95%CI:1.12~1.23)

ナプロキセン      OR=1.16(95%CI:1.07~1.27)

ロルノキシカム     OR=1.06(95%CI:0.80~1.41)

ケトプロフェン     OR=1.03(95%CI:0.96~1.11)

メロキシカム      OR=1.02(95%CI:0.94~1.11)

フルルビプロフェン   OR=0.97(95%CI:0.68~1.04)

セレコキシブ      OR=0.96(95%CI:0.90~1.02)

エトドラク       OR=0.87(95%CI:0.63~1.19)

 

感想

 オッズ比がものすごく大きいわけではないが、NSAID服用中はやはり心不全に注意が必要であると思われる。少なくとも、漫然と不必要に処方する事は避けた方が良さそうである。

 インドメタシンやジクロフェナク、イブプロフェンなどではエトドラクやセレコキシブよりも心不全による入院のオッズ比が大きくなっている。しかし、あくまで観察研究の結果であり、このまま鵜呑みには出来ない印象。

    この研究対象患者からは、コホート参加日前の1年以内に心不全による入院歴がある患者は除外されているようである。(We excluded participants if they:→4つ目の項目に、Were admitted to hospital with a primary diagnosis of heart failure in the year before the date of cohort entryと記載あり)心不全リスクの高い患者が除外されているものと思われ、心不全リスクの高い患者では、より注意が必要かもしれない。

 この論文の結果だけでみると、心不全のリスクがある患者にNSAIDを用いる必要がある場合、ジクロフェナクなどよりは、セレコキシブなどの方がいいのかもしれない。しかし、他の心血管イベントリスクなども調べてみなければ何とも言えないので、今後調べてみようと思う。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

血糖値は厳格にコントロールするべきですか?

ご訪問ありがとうございます。

 

今回は、血糖値をしっかり下げるべきなのか検討したメタ分析の論文です。

 

参考文献 Effect of intensive glucose lowering treatment on all cause mortality, cardiovascular death, and microvascular events in type 2 diabetes: meta-analysis of randomised controlled trials.

リンク   https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21791495

 

PMID:21791495

 

研究デザイン:メタ分析

 

論文のPECO

P:18歳以上の2型糖尿病患者

E:血糖値の厳格コントロール

C:血糖値の標準コントロール

O:(Primary)総死亡、心血管死亡

 (Secondary)重篤な低血糖、全心筋梗塞、非致死性心筋梗塞、致死性脳卒中、非致死性脳卒中、うっ血性心不全、光凝固、網膜症(新規発症、悪化)、微量アルブミン尿、腎不全(腎不全の悪化、血清アルブミンの倍化)、末梢血管疾患(脚の血管再建術、末梢動脈疾患、間欠性跛行)、切断、重篤な低血糖

 

一次アウトカムは明確か?

→明確といえる

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

4つのバイアス

1、評価者バイアス

・2名の評価者が独立してデータ抽出している

 

評価者バイアスはさほど問題なさそう

 

2出版バイアス

情報元:MEDLINE、EMBASE、Cochrane database of systematic reviews

・without any language restriction(言語制限なしに検索されている)

・未出版のデータを集めているかは不明

 

出版バイアス多少はあるかも

 

3、元論文バイアス

・13個のRCTを集めている

・Jadad scoreを用いて元論文の質を評価している

・Table1より、ほとんどの元論文がJadad score3点以上

 

元論文バイアスはさほど問題なさそう

 

4、異質性バイアス

→Primary outcomeは、やや異質性が高いように思われる

 

 結果

※今回の論文はP<0.01で有意差あり

 

【Primary outcome

総死亡

リスク比1.04 (99%CI:0.91~1.19)  I2=42% P=0.47

 

心血管死亡

リスク比1.11 (99%CI:0.86~1.43)  I2=61% P=0.29

 

Secondary outcome】

心筋梗塞

リスク比0.90 (99%CI:0.81~1.01)  I2=0% P=0.02

 

非致死性心筋梗塞

リスク比0.85 (99%CI:0.74~0.96)  I2=0% P<0.001

 

脳卒中

リスク比0.96 (99%CI:0.83~1.13)  I2=0% P=0.55

 

非致死性脳卒中

リスク比1.00 (99%CI:0.83~1.21)  I2=0% P=0.95

 

うっ血性心不全

リスク比1.17 (99%CI:0.91~1.50)  I2=59% P=0.11

 

網膜症(新規発症、悪化)

リスク比0.85 (99%CI:0.71~1.03)  I2=54% P=0.03

 

光凝固

リスク比0.91 (99%CI:0.71~1.17)  I2=57% P=0.32

 

視力の悪化または失明

リスク比1.00 (99%CI:0.96~1.05)  I2=0% P=0.99

 

神経障害(新規発症、悪化)

リスク比0.99 (99%CI:0.95~1.03)  I2=0% P=0.54

 

微量アルブミン尿(新規発症、悪化)

リスク比0.90 (99%CI:0.85~0.96)  I2=31% P<0.001

 

腎不全の悪化または血清クレアチニンの倍化

リスク比1.03 (99%CI:0.98~1.08)  I2=0% P=0.15

 

末梢血管イベント

リスク比0.98 (99%CI:0.84~1.13)  I2=34% P=0.69

 

切断

リスク比0.84 (99%CI:0.54~1.29)  I2=0% P=0.30

 

重篤な低血糖

リスク比2.33 (99%CI:1.62~3.36)  I2=63% P<0.001

 

感想

 このメタ分析では、血糖値を厳格にコントロールするのと標準的にコントロールするので、総死亡、心血管死亡は変わらないという結果。また、低血糖はやはり厳格にコントロールした方が2.33倍多いという結果である。

 元論文のそれぞれの目標血糖値や患者の対象年齢、糖尿病罹患期間なども異なるため、一概には言えないと思うが、必ずしも厳格な血糖コントロールを行った方がいいとは言い切れない。

 Table1を見てみると、元論文の対象患者の年齢は比較的若く、追跡期間もあまり長くない物も多い。この事も結果に影響しているのかもしれないと感じた。

 あくまでメタ分析の結果であるが、統合されている元論文は重要文献が盛りだくさんという印象なので、今更ながらPROactive試験など、まだ読んでいない物は読んでみようと思う。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

インスリン デテミルやインスリン グラルギンはNPH製剤に比べ総死亡は少ないですか?

ご訪問ありがとうございます。

 

あっという間に11月に入り、今年も残る所2か月を切ってしまいましたね。

最近は疲れ気味なのと、朝も寒いので、なかなか布団から出られない毎日を送っています(´-ω-`)

 

 さて、今回は基礎インスリンどうしの死亡を比較した論文です。

 

参考文献 All-Cause and Cause-Specific Mortality among Users of Basal Insulins NPH, Detemir, and Glargine.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27031113

 

PMID:27031113

 

研究デザインコホート研究

 

論文のPECO

P:40歳以上の2型糖尿病患者23751名

E:①インスリン デテミル ②インスリン グラルギン

C:NPH製剤

O:総死亡、原因別死亡

 

 

研究対象集団の代表性

フィンランドの一般人口を対象にしており、大きな問題無いと思われる

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

調節した交絡因子は何か?

→傾向スコアマッチが行われている

※年齢、性別、過去の基礎インスリンでないインスリン製剤使用の有無、過去のSU薬使用の有無、過去の重篤な低血糖による入院の有無、index date

 

追跡期間

→中央値1.7年

 

結果

【ベースライン】

平均年齢 65.5歳

 

【アウトカム】

総死亡

デテミル vs NPH  調整HR=0.39(95%CI:0.30~0.50) p<0.001

 

グラルギン vs HPH  調整HR=0.55(95%CI:0.44~0.69)  p<0.001

 

デテミル vs グラルギン  HR=0.71(95%CI:0.54~0.93)  

 

心血管死亡

デテミル vs NPH  調整HR=0.42(95%CI:0.28~0.61) p<0.001

 

グラルギン vs HPH  調整HR=0.65(95%CI:0.47~0.91)  p=0.012

 

デテミル vs グラルギン  HR=0.64(95%CI:0.43~0.95) 

 

癌による死亡

デテミル vs NPH  調整HR=0.23(95%CI:0.14~0.40) p<0.001

 

グラルギン vs HPH  調整HR=0.35(95%CI:0.22~0.54)  p<0.001

 

デテミル vs グラルギン  HR=0.67(95%CI:0.38~1.18) 

 

消化器疾患による死亡

デテミル vs NPH  調整HR=0.45(95%CI:0.19~1.06) p=0.064

 

グラルギン vs HPH  調整HR=0.44(95%CI:0.19~1.00)  p=0.049

 

感想

 HPH製剤を用いた場合と比べ、インスリン デテミル、インスリン グラルギンを用いた場合の方が総死亡、心血管死亡、癌による死亡は少なくなる可能性が示されている。

 また、インスリン グラルギンよりインスリン デテミルの方がリスクは少ない可能性が示されている。

 今回の対象患者の平均年齢は65.5歳と比較的若く、追跡期間も中央値1.7年にも関わらず、このような死亡率に差が出ていることは少々驚きであった。

 あくまでも観察研究なので、結果を鵜呑みには出来ないと思うが、あえて用いるのであればNPH製剤よりは、インスリン デテミルやインスリン グラルギンの方がいいかなという印象。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

インスリン デグルデクとインスリン グラルギンで心血管イベント発生に違いがありますか?

ご訪問ありがとうございます。

 

今回は、持効型インスリン製剤であるインスリン デグルデクとインスリン グラルギンでの心血管イベントの発生を比較した論文です。

 

申し訳ないのですが、フリーでは読めない論文となっております(´・ω・`)

 

参考文献 Efficacy and Safety of Degludec versus Glargine in Type 2 Diabetes.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28605603

 

PMID:28605603

 

研究デザイン:ランダム化比較試験(非劣性試験:非劣性マージン=1.3)

 

論文のPECO

P:心血管イベントリスクの高い2型糖尿病患者7637名

※経口血糖降下薬またはインスリンを少なくとも1つ使用。50歳以上で、心血管または腎の併存疾患がある、または60歳以上で心血管イベントリスク因子を少なくとも1つもっている患者。

E:通常ケア+インスリン デグルデク 1日1回→3818名

C:通常ケア+インスリン グラルギン100U 1日1回→3819名

O:(Primary) 心血管死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合アウトカム

  

 

ランダム化されているか?

→ランダム化されている

 

一次アウトカムは明確か?

→明確といえる

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

盲検化されているか?

→二重盲検されている

 

均等に割り付けられているか

→均等に2群に割り付けられていると思われる

 

ITT解析を行われているか?

→ITT解析されている

 

サンプルサイズ

→7500名(パワー91%)

 

脱落率は結果を覆すほどあるか?

→追跡率=98%

 

追跡期間

→中央値1.99年

 

結果

【ベースライン】

平均年齢:65.0歳

糖尿病罹患期間:平均16.4年

HbA1c:平均8.4±1.7%

全体の83.9%がインスリンを使用

全体の85.2%の患者が心血管疾患または中等度の慢性腎臓病あり

 

※24カ月の平均空腹時血糖値

デグルデク群:128±56mg/dL vs グラルギン群:136±57mg/dL

 

【アウトカム】

(Primary outcome)心血管死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合アウトカム

デグルデク群:4.29件/100人年(8.5%) vs グラルギン群:4.71件/100人年(9.3%)

HR=0.91(95%CI:0.78~1.06 p<0.001(非劣勢)

※95%信頼区間の上限値が非劣性マージンの1.3より小さいので、インスリン デグルデクの、インスリン グラルギンに対する非劣性が認められた。

 

重篤な低血糖

デグルデク群:3.70件/100人年(4.9%) vs グラルギン群:6.25件/100人年(6.6%)

HR=0.60(95%CI:0.48~0.76 p<0.001(優越性)

 

感想

 インスリン デグルデクでは、インスリン グラルギンンと比較して、心血管死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の発生は少なくとも劣らないことが示されている。

 今回の研究対象患者は、糖尿病罹患期間の平均が16.4年、85.2%の患者が心血管疾患または中等度の慢性腎疾患を併発している。比較的糖尿病罹患期間も長く、症状が進行している患者が多い印象である。

 また、今回の研究ではITT解析を行っている。結果が大きく覆る事は無いかもしれないが、非劣性試験なのでPer-protocol解析を行わなければ差が出にくい方向に傾くような気がした。

 少なくとも、このような症状の比較的進行した患者に用いるのであれば、インスリン デグルデクはインスリン グラルギンと比較して心血管イベント抑制効果は劣っていないと思われる。ただし、追跡期間の中央値が1.99年と、比較的短い印象もある。

 また、平均空腹時血糖値はインスリン デグルデクの方が低いにも関わらず、前回取り上げた論文とも同様に、インスリン デグルデクの方が重篤な低血糖は少ないことも示されている。

 もっと長期に追跡した結果も気になる所である。今回取り上げたのは持効型インスリンどうしの比較であったが、超速攻型インスリンに関しても今後調べてみようと思う。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

インスリングラルギンとインスリンデグルデクで低血糖の起こりやすさに差がありますか?

ご訪問ありがとうございます。

 

今回は、時効型インスリンである、インスリン デグルデクと、インスリン グラルギンの低血糖リスクを比較した研究についてです。

残念ながら、アブストラクトしか読めませんが・・・。

 

参考文献 Effect of Insulin Degludec vs Insulin Glargine U100 on Hypoglycemia in Patients With Type 2 Diabetes: The SWITCH 2 Randomized Clinical Trial.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28672317

 

PMID:28672317

 

研究デザイン:ランダム化比較試験(クロスオーバー研究)

※最初の32週(16週の用量設定期間ののちに、16週の維持期間)にインスリン グラルギン→後の32週にインスリン デグルデク使用群と、最初の32週にインスリン デグルデク→後の32週にインスリン グラルギン使用群の2群に分けている。

 

論文のPECO

P:少なくとも1つの低血糖リスク因子をもち、基礎インスリン治療を受けている2型糖尿病患者721名

E:インスリン デグルデク

C:インスリン グラルギン100U

O:(Primary)すべての症候性低血糖(重篤な低血糖または血清グルコース≦56mg/dL)を起こした割合

 (Secondary)夜間(午前0:01~5:59)の症候性低血糖を起こした割合、維持期間の重度低血糖患者割合

 

ランダム化されているか?

→ランダム化されている

 

一次アウトカムは明確か?

→明確といえる

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

盲検化されているか?

→二重盲検されている

 

 脱落率は結果を覆すほどあるか?

→追跡率=80.4%

 

追跡期間

→32週間(維持期間は16週間)

 

結果

【ベースライン】

平均年齢:61.4

 

(Primary outcome)維持期間に症候性低血糖(重篤な低血糖または血清グルコース≦56mg/dL)を起こした割合

インスリン デグルデク:185.6件/100人年 vs インスリン グラルギン:265.4件/100人年

リスク比=0.70(95%CI:0.61~0.80) p<0.001

 

低血糖発作を起こした患者割合

インスリン デグルデク:22.5% vs インスリン グラルギン:31.6%

 

(Secondary outcome)夜間(午前0:01~5:59)の症候性低血糖を起こした割合

インスリン デグルデク:55.2件/100人年 vs インスリン グラルギン:93.6件/100人年

リスク比=0.58(95%CI:0.46~0.74) p<0.001

 

夜間に低血糖発作を起こした患者割合

インスリン デグルデク:9.7% vs インスリン グラルギン:14.7%

 

重篤な低血糖を経験した患者割合

インスリン デグルデク:1.6% vs インスリン グラルギン:2.4%

 

感想

 インスリン グラルギン100Uよりもインスリン デグルデクの方が、低血糖は起こしにくいことが示されている。安全性という点では、インスリン デグルデクの方が優勢かもしれない。

 有効性を比較した文献については、今日は力尽きたので、また後日読んでみようと思う。

 

参考文献 Efficacy and Safety of Degludec versus Glargine in Type 2 Diabetes.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28605603

PMID:28605603

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

血糖異常患者はインスリンを使用した方がいいですか?

ご訪問ありがとうございます。

 

今回は、インスリングラルギン使用の有無を比較した論文を見つけたので、読んでみました。

 

参考文献 Basal Insulin and Cardiovascular and Other Outcomes in Dysglycemia

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22686416

 

PMID:22686416

 

研究デザイン:ランダム化比較試験

 

論文のPECO

P:心血管イベントリスクありで、空腹時血糖異常、耐糖能異常、または2型糖尿病の患者12537名

E:インスリングラルギン使用(目標空腹時血糖<95mg/dl)

C:標準ケア

O:(Primary)

①非致死性心筋梗塞・非致死性脳卒中・心血管死亡の複合アウトカム

②非致死性心筋梗塞・非致死性脳卒中・心血管死亡・血行再建術・心不全による入院の複合アウトカム

 

※n-3系脂肪酸 vs プラセボの比較も並行して行っている2×2のデザイン

 

ランダム化されているか?

→ランダム化されている

 

一次アウトカムは明確か?

→Primary outcomeは2つあるが、明確であると考えた

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

盲検化されているか?

→盲検化はされていないと思われる

 

均等に割り付けられているか

→均等に2群に割り付けられていると思われる

 

ITT解析を行われているか?

→ITT解析されている

 

サンプルサイズ

→12500名(パワー=90% α=5%)

 

脱落率は結果を覆すほどあるか?

→追跡率=99.87%

 

追跡期間

→中央値6.2年

 

結果

【ベースライン】

平均年齢 E群:63.6±7.8歳 C群:63.5±7.9歳

空腹時血糖(中央値) E群:125mg/dl C群:124mg/dl

HbA1c(中央値) E群:6.4% C群:6.4%

心血管イベント既往  E群:59.3% C群:58.4%

 

検査値の変化

HbA1c(中央値)

E群 ベースライン:6.4% 1年後:5.9% 7年後:6.2%

C群 ベースライン:6.4% 1年後:6.2% 7年後:6.5%

 

【アウトカム】

①非致死性心筋梗塞・非致死性脳卒中・心血管死亡の複合アウトカム(First primary outcome

E群:2.94/100人年 vs C群:2.85/100人年  

調整HR=1.02(95%CI:0.94~1.11) p=0.63

 

②非致死性心筋梗塞・非致死性脳卒中・心血管死亡・血行再建術・心不全による入院の複合アウトカム(Second primary outcome)

E群:5.52/100人年 vs C群:5.28/100人年  

調整HR=1.04(95%CI:0.97~1.11) p=0.27

 

総死亡

E群:2.57/100人年 vs C群:2.60/100人年  

調整HR=0.98(95%CI:0.90~1.08) p=0.70

 

重篤な低血糖

E群:1.00/100人年 vs C群:0.31/100人年  p<0.001

 

体重の変化(中央値

E群:+1.6kg vs C群:-0.5kg  p<0.001

 

感想

 今回のような、心血管イベントリスクがある血糖異常患者に対して、インスリングラルギンを使用しても、①非致死性心筋梗塞・非致死性脳卒中・心血管死亡の複合アウトカム、②非致死性心筋梗塞・非致死性脳卒中・心血管死亡・血行再建術・心不全による入院の複合アウトカム、どちらも減らせなかったという結果。

 また、低血糖は重篤なものから重篤ではないものまで、インスリングラルギン群で多く、体重はインスリングラルギン使用では増加傾向が示されている。

 今回の対象患者のベースラインのHbA1cは中央値6.4%、空腹時血糖の中央値は125mg/dl程度と、そこまでコントロールが不良な患者というわけではなさそうである。

 心血管イベントリスクがあっても、HbA1cが6.5%程度のそこまで血糖コントロールが悪くない患者では、インスリングラルギンを用いて積極的に血糖値を下げようとしなくてもいいのではないかと感じた。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

高齢女性は長期間のビスホスホネート服用で骨折は増えますか?

ご訪問ありがとうございます。

 

今回は、先日の勉強会で少し話題になった、ビスホスホネート系薬の長期使用についての論文です。

 

参考文献  Bisphosphonate use and the risk of subtrochanteric or femoral shaft fractures in older women.

リンク    https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21343577

 

PMID:21343577

 

研究デザインコホート内症例対象研究

 

論文のPECO

P:68歳以上の女性のうち、転子下骨折または大腿骨骨幹部骨折により入院した患者(症例)と、マッチングされた骨折を起こしていない者(対照)

E:ビスホスホネート服用

①短期間:100日~3年 ②中等期間:3~5年 ③長期服用:5年以上

C:ビスホスホネート服用100日未満(コントロール

O:転子下骨折または大腿骨骨幹部骨折による入院

 

※用いられたビスホスホネート・・・アレンドロン酸、リセドロン酸、エチドロン酸

 

※除外基準

10年以内の癌、骨軟化症、大理石骨病、副甲状腺機能亢進症高カルシウム血症てんかん、セリアック病、ページェット病、腎性骨ジストロフィー、5年以内の胃バイパス術、1年以内のラロキシフェン・カルシトニン・フッ化ナトリウム・クロドロン酸・パミドロン酸・ゾレドロン酸による治療

 

 

研究対象集団の代表性

→一般人口を対象にしており大きな問題は無いかと思われる

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

調節した交絡因子は何か?

→社会経済的地位、併用薬、薬剤数、併存疾患、専門医の訪問、家庭医の訪問、骨密度

Data Supplement参照↓

https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/645797

 

追跡期間

→平均4.0年

 

結果

【ベースライン】

平均年齢 症例:83歳  対照:83歳

 

【アウトカム】

転子下骨折または大腿骨骨幹部骨折による入院(Primary outcome)

①短期間の使用 vs コントロール 調整オッズ比=0.90(95%CI:0.48~1.68)

 

②中等期間の使用 vs コントロール 調整オッズ比=1.59(95%CI:0.80~3.15)

 

②長期間の使用 vs コントロール 調整オッズ比=2.74(95%CI:1.25~6.02)

 

大腿骨頸部骨折または股関節転子部骨折(Secondary outcome)

①短期間の使用 vs コントロール 調整オッズ比=0.87(95%CI:0.80~0.94)

 

②中等期間の使用 vs コントロール 調整オッズ比=0.86(95%CI:0.65~1.00)

 

②長期間の使用 vs コントロール 調整オッズ比=0.76(95%CI:0.63~0.93)

 

感想

 5年以上の長期にわたるビスホスホネート服用により、転子下骨折または大腿骨骨幹部の骨折による入院リスクが高くなる可能性があるという結果である。

 あくまでも観察研究であるため、この結果のみで結論は出来ないが、このような高齢者において長期間ビスホスホネートを服用している場合は、ビスホスホネートの中止や薬剤の変更も選択肢として考慮に入れておく必要があるのかもしれない。

 関連した論文もあると思うので、そちらも読んで総合的に判断したい。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。