重篤な喘息患者に対するフルチカゾン+サルメテロール vs フルチカゾン単独

ご訪問ありがとうございます。

今回は、コントロール不良な気管支喘息患者に対する、フルチカゾン+サルメテロール vs フルチカゾン単独の比較をしたRCTを読んでみようと思います。

 

参考文献 Serious Asthma Events with Fluticasone plus Salmeterol versus Fluticasone Alone.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26949137

 

PMID:26949137

 

研究デザイン:ランダム化比較試験(非劣性試験) 非劣性マージン:2.0

 

論文のPECO

P:1年以内に重篤な症状悪化を経験した、12歳以上の持続的な喘息患者

E:フルチカゾンプロピオン酸(100㎍、250㎍、500㎍)+サルメテロール(50㎍)1日2回吸入

C:フルチカゾンプロピオン酸(100㎍、250㎍、500㎍)1日2回吸入

O:(Primary) 【安全性】重篤な喘息関連イベント(死亡、気管内挿管、入院)

       【有効性】最初の喘息症状の悪化

 

※除外基準

生命を脅かすような喘息経験者、年間10箱以上の喫煙者、不安定な喘息患者

 

ランダム化されているか?

→ランダム化されている

 

一次アウトカムは明確か?

→明確といえる

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

盲検化されているか?

→二重盲検されている

 

均等に割り付けられているか

→均等に2群に割り付けられていると思われる

 

ITT解析を行われているか?

FAS解析

 

サンプルサイズ

→11664名(パワー90%、片側α=0.025)

 

脱落率は結果を覆すほどあるか?

→追跡率=99.3%(lost to follow-upはE群48名、C群37名)

 

追跡期間

→26週間

 

結果

【ベースライン】

平均年齢:E群:43.4±17.45歳 C群:43.4±17.28歳

 

【アウトカム】

重篤な喘息関連イベント(死亡、気管内挿管、入院)

E群:36件(34/5834名) vs C群:38件(33/5845名)

HR=1.03(95%CI:0.64~1.66) p=0.003 非劣性が成立

 

・最初の喘息症状の悪化

(全体)

E群:480/5834件(8%)vs C群:597/5845件(10%)

HR=0.79(95%CI:0.70~0.89) p<0.001

 

(過去のグルココルチコイド吸入またはnon-LABA療法でコントロール不良患者)

E群:91/1405件(6%)vs C群:106/1398件(8%)

HR=0.83(95%CI:0.63~1.10) p=0.20

 

(過去のグルココルチコイド+LABA吸入療法でコントロール不良患者)

E群:102/1016件(10%)vs C群:124/1040件(12%)

HR=0.84(95%CI:0.65~1.09) p=0.19

 

(過去のグルココルチコイド+LABA吸入療法でコントロール良好患者)

E群:239/2652件(9%)vs C群:304/2663件(11%)

HR=0.76(95%CI:0.65~0.91) p=0.002

 

(過去のグルココルチコイド吸入療法でコントロール良好患者)

E群:38/612件(6%)vs C群:54/608件(9%)

HR=0.68(95%CI:0.45~1.03) p=0.07

 

 

感想

 安全性のアウトカムは、グルココルチコイド単独群に対して、グルココルチコイドにサルメテロールを上乗せした群の非劣性が示されている。安全性に関しては、むしろ心血管イベントについてどうなのかという所を知りたい。

   有効性のアウトカムは、HR=0.79(95%CI:0.70~0.89) p<0.001と、サルメテロールを上乗せした方が有意に少ないという結果になっている。

 サブ解析を見ると、すでにグルココルチコイド単独または、グルココルチコイド+LABAでコントロール不良な患者では、喘息症状の悪化にE群とC群間で有意差もない。

 グルココルチコイド単独でコントロール良好な患者であれば、わざわざサルメテロールを上乗せする必要は無いように思われる。

 一方、グルココルチコイド+LABAで安定している患者では、ステロイド単独に安易に変えない方がいいのかな?とも感じた。この辺りは関連論文を見つけて読んでみようと思う。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

脳卒中予防ではアスピリンにクロピドグレルを併用した方がいいですか?

ご訪問ありがとうございます。

 

今回も、引き続きクロピドグレルの論文を読んでみました。

 

参考文献 Efficacy and safety of adding clopidogrel to aspirin on stroke prevention among high vascular risk patients: a meta-analysis of randomized controlled trials.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25110930

 

PMID:25110930

 

研究デザイン:メタ分析

 

論文のPECO

P:血管イベントリスクの高い患者

E:アスピリンとクロピドグレルを併用

C:アスピリン単独

O:脳卒中、大出血

 

 一次アウトカムは明確か?

→明確と言える

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

4つのバイアス

1、評価者バイアス

→Data were extracted independently by 2 investigators (SY Chen, QY Shen).

→2名の評価者が独立してデータ抽出

 

評価者バイアスはさほど問題なさそう

 

2、出版バイアス

情報元:PubMed、EMBASE、OVID 、Cochrane Central Register of Controlled Trials

・15個のRCTを統合

・関連する追加情報も検索している

・restricted to English only→英語で書かれている論文のみ

・Funnel plot analysis on the outcome of all stroke did not indicate significant publication bias (Figure S14)

 

出版バイアスも大きな問題は無さそう

 

 3、元論文バイアス

・Cochrane collaboration’s toolを使って元論文の質を評価している

・「this meta-analysis was based mainly on studies with low risk of bias」

・FigureS2からも、low risk of biasのものがほとんど

 

元論文バイアスもさほど問題なさそう

 

4、異質性バイアス

いずれも、そこまで大きな異質性は無いように思われる

 

 

結果

※短期間:追跡期間1カ月以下の研究を統合 

 長期間:追跡期間3カ月以上の研究を統合

 

脳卒中

(全体)E群 vs C群 RR0.7995CI0.730.89  I2=37.8% P<0.00001

(短期間) E群 vs C群 RR=0.76(95%CI:0.67~0.85)  I2=30% P<0.00001

(長期間) E群 vs C群 RR=0.81(95%CI:0.73~0.89)  I2=10% P<0.00001

 

☆大出血

(全体)E群 vs C群 RR1.4295CI1.251.62  I2=29% P<0.00001

(短期間) E群 vs C群 RR=1.11(95%CI:0.91~1.36)  I2=0% P=0.30

(長期間) E群 vs C群 RR=1.52(95%CI:1.36~1.69)  I2=7% P<0.00001

 

☆頭蓋内出血

(全体)E群 vs C群 RR1.2595CI0.981.61  I2=48% P=0.07

(短期間) E群 vs C群 RR=0.92(95%CI:0.66~1.30)  I2=0% P=0.65

(長期間) E群 vs C群 RR=1.76(95%CI:1.22~2.54)  I2=0% P=0.002

 

 

感想

 短期間(1カ月以内)、長期間(3カ月以上)の併用の結果はいずれも、アスピリンとクロピドグレルを併用した方がアスピリン単独よりも脳卒中が少ないという結果である。

 一方で、大出血、頭蓋内出血について短期間では両群に差は見られていないが、長期間の結果では有意に併用群の方が多いという結果である。

 この結果から、クロピドグレルとアスピリンの併用を長期に続けると確かに脳卒中は少なくなるかもしれないが、出血リスクが高まる可能性があり、どこかのタイミングで併用から1剤に減らす事も検討する必要があるのかもしれない。今後、主要な元論文についても読んでみようと思う。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

 

ラクナ梗塞患者では、アスピリンにクロピドグレルを併用した方がいいですか?

ご訪問ありがとうございます。

ご無沙汰しております。

そして、あけましておめでとうございます(すでに明けて半月以上経ってしまいましたね・・・。)

 

しばらく更新をさぼってしまいました( ;∀;)

 

今年1発目の記事は、ラクナ梗塞患者のアスピリン治療にクロピドグレルは併用した方が良いのか?という論文です。 

 

参考文献 Effects of clopidogrel added to aspirin in patients with recent lacunar stroke.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=22931315

 

PMID:22931315

 

研究デザイン:ランダム化比較試験

 

論文のPECO

P:180日以内に症候性ラクナ梗塞を起こした30歳以上の患者3020名

E:アスピリン腸溶錠325mg+クロピドグレル75mg

C:アスピリン腸溶錠325mg+プラセボ

O:(Primary)脳梗塞の再発

 

ランダム化されているか?

→ランダム化されている

 

一次アウトカムは明確か?

→明確といえる

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

盲検化されているか?

→二重盲検されている

 

均等に割り付けられているか

→均等に2群に割り付けられていると思われる

 

ITT解析を行われているか?

→ITT解析されている

 

サンプルサイズ

→3000名(パワー90%、α=5%)

 

脱落率は結果を覆すほどあるか?

→Supplementary Appendixより、lost to follow upはプラセボ群27名、クロピドグレル群28名で、追跡率=98.2%

 

追跡期間

→平均3.4年

 

結果

【ベースライン】

平均年齢:63歳

 

【アウトカム】

脳梗塞の再発(Primary outcome

クロピドグレル群:125/1503件(2.5%)vs プラセボ群:138/1517件(2.7%)

HR=0.92(95%CI:0.72~1.16) p=0.48

 

総死亡

クロピドグレル群:113/1503件(2.1%)vs プラセボ群:77/1517件(1.4%)

HR=1.52(95%CI:1.14~2.04) p=0.004

 

大出血

クロピドグレル群:105/1517件(2.1%)vs プラセボ群:56/1503件(1.1%)

HR=1.97(95%CI:1.41~2.71) p<0.001

 

 

感想

 Primary outcomeである脳梗塞の再発は、クロピドグレルを併用しても減らす事が出来なかったという結果。また、総死亡はクロピドグレル併用群でおよそ1.5倍に増え、大出血も約2倍に増えている。

 使用しているアスピリン腸溶錠は325mgと、国内で用いられている量より多いので出血はこの研究では多くなっているのかもしれない。

 少なくともこの結果は、ラクナ梗塞既往でアスピリン服用中の患者にクロピドグレルを併用する事を推奨するような結果ではないと思う。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

今年も宜しくお願い致します。

プラスグレルはクロピドグレルより心血管イベントを減らせますか?

ご訪問ありがとうございます。

 

さて、今年の更新はこれが最後になるかと思います。というのも、明日から実家に帰省するんですが、実家にはネット環境が無いので更新不可能かと・・・。

 

そんなこんなで、今年最後は、抗血小板薬のプラスグレルとクロピドグレルの比較です。

 

参考文献 Prasugrel versus clopidogrel in patients with acute coronary syndromes.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=17982182

 

PMID:17982182

 

研究デザイン:ランダム化比較試験

 

論文のPECO

P:急性冠症候群リスク中~高リスクでPCIを受ける予定の患者13608名

E:プラスグレル(ローディングドーズ60mg、維持用量10mg)をアスピリンと併用

C:クロピドグレル(ローディングドーズ300mg、維持用量75mg)をアスピリンと併用

O:(Primary) 心血管死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合アウトカム

 

※除外基準

→出血リスクが高い、貧血、血小板減少症、病理学的頭蓋内所見、5日以内のチエノピリジン系使用

 

ランダム化されているか?

→ランダム化されている

 

一次アウトカムは明確か?

→明確といえる

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

盲検化されているか?

→二重盲検されている

 

均等に割り付けられているか

→均等に2群に割り付けられていると思われる

 

ITT解析を行われているか?

→ITT解析されている

 

脱落率は結果を覆すほどあるか?

→追跡率99.9%(lost to follow upは14名.)

 

追跡期間

→治療期間中央値14.5ヶ月

 

結果

【ベースライン】

年齢:プラスグレル群:中央値61歳 クロピドグレル群:中央値61歳

 

【アウトカム】

心血管死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合アウトカム(Primary outcome

プラスグレル群:643/6813件(9.9%)vs クロピドグレル群:781/6795件(12.1%)

HR=0.81(95%CI:0.73~0.90) p<0.001  NNT=49

 

心血管死亡

プラスグレル群:133/6813件(2.1%)vs クロピドグレル群:150/6795件(2.4%)

HR=0.89(95%CI:0.70~1.12) p=0.31

 

非致死性心筋梗塞

プラスグレル群:475/6813件(7.3%)vs クロピドグレル群:620/6795件(9.5%)

HR=0.76(95%CI:0.67~0.85) p<0.001

 

非致死性脳卒中

プラスグレル群:61/6813件(1.0%)vs クロピドグレル群:60/6795件(1.0%)

HR=1.02(95%CI:0.71~1.45) p=0.93

 

【安全性】

大出血

プラスグレル群:146/6741件(2.4%)vs クロピドグレル群:111/6716件(1.8%)

HR=1.32(95%CI:1.03~1.68) p=0.03

 

感想

 Primary outcomeである心血管死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合アウトカムは、クロピドグレル群に比べ、プラスグレル群は19%少ないという結果である。個々のアウトカムについて見てみると、非致死性心筋梗塞はプラスグレル群で有意に少ないという結果になっている。

 日本人は、クロピドグレルの代謝活性化に関与するCYP2C19のPMがおよそ20%と多いため、クロピドグレルの効果が十分に得られない患者が多いと言われている。日本人ではよりプラスグレルに優位な結果になるかもしれない。

 ただし、この研究に用いられているプラスグレルの用量は維持量が10mg/日と、国内で用いられている通常維持用量(3.75mg/日)より多い量となっている点は注意が必要かと思う。

 大出血はクロピドグレル群よりもプラスグレル群で有意に多いという結果である。この点ではクロピドグレルの方が有利となる。また、薬価も後から発売されたプラスグレルの方が高くなっている。

 国内で用いられている用量だと、出血はもっと少ないかもしれないし、Primary outcomeの抑制効果はもう少し小さくなるかもしれない。

 確かに、プラスグレルの方が優れている点もあるが、クロピドグレルにも利点があるので、何でもかんでもプラスグレルとはいかない印象である。実際プラスグレルが処方されている患者は、自分の薬局ではあまり多くないように感じている。あと、プラスグレルには脳や末梢への適応は無い事も押さえておきたい。

 

今年も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

また来年もよろしくお願い致します♪

 

それでは皆様、よいお年を('ω')ノ

小児の急性気道感染症には、狭域スペクトルと広域スペクトルどちらの抗生物質がいいですか?

ご訪問ありがとうございます。

 

今回は、先日JAMAに報告され、個人的に気になった論文です。

 

残念ながら、アブストしか読めずに詳細は不明です。

 

参考文献 Association of Broad- vs Narrow-Spectrum Antibiotics With Treatment Failure, Adverse Events, and Quality of Life in Children With Acute Respiratory Tract Infections

リンク   https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=29260224

 

PMID:29260224

 

PMID不明

 

研究デザイン:後ろ向きコホート研究、前向きコホート研究

 

論文のPECO

P:急性上気道感染症と診断された6か月~12歳の小児

E:広域スペクトルの抗生物質

C:狭域スペクトルの抗生物質

O:後ろ向きコホート:診断から14日後の治療失敗、有害事象

  前向きコホートQOL、患者による有害事象の訴え

 

広域スペクトルの抗生物質:アモキシシリン-クラブラン酸、セファロスポリン

マクロライド

 

研究対象集団の代表性

ペンシルベニアニュージャージープライマリケア診療データを使用しており、大きな問題無し

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

調節した交絡因子は何か?マッチングされているか?

→傾向スコアマッチされている

 

追跡期間

→14日間

 

結果

①前向きコホート

※30159名のうちわけ

19179名→急性中耳炎、6746名→A群連鎖球菌咽頭炎、4234名→急性副鼻腔炎

 

【アウトカム】

治療失敗

広域スペクトル:3.4% vs 狭域スペクトル:3.1% 

リスク差:0.3%(95%CI:-0.4%~0.9%)

 

②後ろ向きコホート

※2472名のうちわけ

1100名→急性中耳炎、705名→A群連鎖球菌咽頭炎、667名→急性副鼻腔炎

 

【アウトカム】

患者のQOL低下

広域スペクトル:90.2点 vs 狭域スペクトル:91.5点

スコアの差:-1.4点(95%CI:-2.4点~-0.4点)

 

医療者により報告された有害事象

広域スペクトル:3.7% vs 狭域スペクトル:2.7%

リスク差:1.1%(95%CI:0.4%~1.8%)

 

患者により報告された有害事象

広域スペクトル:35.6% vs 狭域スペクトル:25.1%

リスク差:12.2%(95%CI:7.3%~17.2%)

 

感想

 治療の失敗に関しては、広域スペクトルと狭域スペクトルで差が無い事が示されている。一方で、有害事象については広域スペクトルの方が多く報告されている。アブストしか読めないため、詳細については分からないが・・・。

 狭域スペクトルの抗菌薬で対処可能であれば、狭域スペクトルの物を使った方がいいのかもしれない。広域スペクトルの物は、次の選択肢として残しておいた方がいいのかもしれない。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

風邪に抗菌薬は有効ですか?

ご訪問ありがとうございます。

 

今回は、風邪に対する抗菌薬の安全性と有効性を検討した研究です。

 

この論文の存在は知っていたのですが、改めて自分でも読んでみました。

 

参考文献 Risks and benefits associated with antibiotic use for acute respiratory infections: a cohort study.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23508604

 

PMID:23508604

 

研究デザイン:後ろ向きコホート研究

 

 論文のPECO

P:急性非特異的呼吸器感染症患者

E:抗生物質服用あり

C:抗生物質服用無し

O:①重篤な薬物関連有害事象による入院 ②市中肺炎による入院

 

※薬物関連有害事象:下痢、肝毒性、過敏症、光毒性、腎毒性、痙攣発作

 

研究対象集団の代表性

→UK’s The Health Improvement Network :THIN(英国のプライマリケアデータベース)が用いられており、大きな問題は無いかと思われる。

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

調節した交絡因子は何か?

※アウトカムごとにそれぞれ交絡因子が設定されている

→有害事象による入院:年齢、研究年、薬剤、前年の受診数、Townsendスコア

 市中肺炎による入院:年齢、年、併存疾患数、薬剤数

 

追跡期間

→有害事象:15日、30日  市中肺炎:15日

 

結果

【処方された抗生剤】

1位:アモキシシリン 51.2% 2位:ペニシリン 17.0% 3位:エリスロマイシン 12.7%

 

【アウトカム】

重篤な薬物関連有害事象による入院

抗生物質あり(8.48/100,000 visit) vs 抗生物質無し(7.75/100,000 visit)

2群の差(15日) -1.07/100,000件(95%CI:-4.52~2.38)p=0.54

2群の差(30日) -3.79/100,000件(95%CI:-8.38~0.80)p=0.11

 

抗生物質のクラスごとの差

βラクタム系 -1.62/100,000件(95%CI:-5.19~1.96) p=0.37

マクロライド系 2.40/100,000件(95%CI:-3.26~8.07) p=0.40

フルオロキノロン 1.06/100,000件(95%CI:-17.02~19.14) p=0.91

 

市中肺炎による入院

抗生物質あり(17.96/100,000 visit) vs 抗生物質無し(21.93/100,000 visit)

2群の差 -8.16/100,000件(95%CI:-13.24~-3.08)p=0.002

NNT=12255名

 

感想

 抗生物質を使用すると、統計学上は有意差が出ているものの、NNTは12,255名である。この結果が臨床上どれだけの意味を持つかと考えると、使用してもしなくてもほとんど変わらないのではないかと思う。

 今回の対象患者の平均年齢は抗生物質あり群47.91歳、抗生物質無し群43.98歳という事で比較的若いように思う。肺炎のリスクがもともと高いような高齢者だと、この結果をそのまま当てはめる事は出来ないのかもしれない。

 また、処方されている抗生物質の割合が、現在の国内における処方実態とは相違があるように思うので、その点も考慮は必要かと思う。(現状は、第三世代セフェムが多いような気がする…。)

 少なくとも、風邪に対する抗菌薬の効果は非常に限定的であり、耐性菌が発生する恐れも考えると、むやみに処方すべきものではないかと思う。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

デノスマブで椎体骨折はどれぐらい防ぐことが出来ますか?

ご訪問ありがとうございます。

 

今回は、調剤薬局ではあまり関わることが無いかもしれないですが、担当している在宅施設で使用されている患者さんがいらっしゃる、デノスマブと骨折についての論文です。

 

参考文献 Denosumab for prevention of fractures in postmenopausal women with osteoporosis.

リンク   https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=19671655

 

PMID:19671655

 

研究デザイン:ランダム化比較試験

 

論文のPECO

P:腰椎または股関節の骨密度Tスコア-2.5~-4.0の60~90歳の女性7868名

E:デノスマブ60mg皮下注 6か月ごとに1回、36か月

C:プラセボ皮下注 6か月ごとに1回、36か月

O:(Primary) 新規の椎体骨折

 (Secondary)非椎体骨折、股関節骨折

 

※除外基準

代謝に影響がある状況、3年以上のビスホスホネート使用、5年以内にビスホスホネート静注・フッ化物・ストロンチウム使用、6週以内に副甲状腺ホルモンまたはその代謝物・ホルモン補充療法・SERM・チボロン(合成エストロゲン)・カルシトニン・カルシトリオール使用、骨密度Tスコア<-4.0、重篤な繰り返す骨折

 

※骨密度Tスコアについてはこちらを参照↓

http://gecommunity.on.arena.ne.jp/archive/bmd_shittoku/ost_04.html

 

ランダム化されているか?

→ランダム化されている

 

一次アウトカムは明確か?

→明確といえる

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

盲検化されているか?

→盲険化に関する記載が見つけられず

 

均等に割り付けられているか

→均等に2群に割り付けられていると思われる

 

ITT解析を行われているか?

→ITT解析されている

 

脱落率は結果を覆すほどあるか?

→82%が36か月の試験を完遂、76%が全ての機会に注射を打った

 

追跡期間

→平均36カ月

 

結果

【ベースライン】

平均年齢:デノスマブ群:72.3±5.2歳 プラセボ群:72.3±5.2歳

 

Tスコア

腰椎 デノスマブ群:-2.82±0.70 プラセボ群:-2.84±0.69

全股関節 デノスマブ群:-1.89±0.81 プラセボ群:-1.91±0.81

大腿骨頸部 デノスマブ群:-2.15±0.72 プラセボ群:-2.17±0.71

 

【アウトカム】

新規椎体骨折(Primary outcome

デノスマブ:2.3% vs プラセボ:7.2%

RR=0.32(95%CI:0.26~0.41) p<0.001 NNT=21

 

非椎体骨折

デノスマブ:6.5% vs プラセボ:8.0%

HR=0.80(95%CI:0.67~0.95) p=0.01 NNT=67

 

股関節骨折

デノスマブ:0.7% vs プラセボ:1.2%

HR=0.60(95%CI:0.37~0.97) p=0.04 NNT=200

 

36か月後の骨密度(プラセボ群との差):Figure2参照

椎体:9.2%(95%CI:8.2~10.1)

全股関節:6.0%(95%CI:5.2~6.7%)

 

【有害事象】

・悪性腫瘍、感染症、心血管イベント、脳卒中、冠動脈心疾患、末梢動脈疾患、心房細動いずれも両群で有意差無し

・湿疹はデノスマブ群3.0%、プラセボ群1.7%(p<0.001)

 

感想

 デノスマブを6か月に1回打つことで、椎体骨折を抑制できるという結果である。また、継続して6か月ごとに接種することで骨密度が上昇するという結果である。デノスマブ皮下注1本の薬価は29,296円であり、ビスホスホネート剤やエルデカルシトールよりはやや割高となるようである。

 それでも、個人的に比較的進行した骨粗鬆症患者にはビスホスホネート剤やエルデカルシトールなどよりは使用する価値があるのではないかと感じた。ただし、36か月以降の骨折リスクなどがどの程度維持されるかという点は不明である事、この後長期に追跡した後で悪性腫瘍リスクがどうかという事がこの論文では不明である点は注意が必要かと思う。

 長期に追跡した論文や、テリパラチドを使用した場合どうなのかなどの論文についても読んでみようと思う。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。