タケキャブはタケプロンと比べて、どれぐらい優れているのですか?

初めての投稿になります。

 

大阪で薬局薬剤師をしています。

 

薬の専門家として、薬に関するありとあらゆる情報を吟味して、どれだけ現場で使えるか判断する力を磨いていきたいと考えています。ブログは初めてなので至らない点も多々あると思いますが、ご容赦ください。

 

1発目のテーマは、タケキャブについてです。

 

さて、2014年に発売されおよそ1年半ほど経過し、徐々に処方例も増えてきた感のあるタケキャブですが、果たしてどれくらい効果があるのか?と気になり検索してみました。

 

タケキャブとタケプロンについて効果を比較したRCTの論文を発見したので、今回はそれを読んでみました。

 

 

まず、タケキャブに関して簡単に整理します。

タケキャブ錠(成分名:ボノプラザン

P-CABカリウムイオン競合型アッシドブロッカー)という分類で、これまでのPPIの弱点を改善したような薬ですね。

 

・作用発現が速やかである。

・酸分泌抑制効果が持続する。酸に安定なため、既存のPPIのように腸溶性にする必要    がなく、粉砕も可能。

・CYP2C19の遺伝子多型の影響を受けにくい。

 

 

などなど。メーカーの、タケキャブの作用機序の図を見ると、PPIに関しても整理できます。

 

という事で、いざ、論文読んでいきます。

 

今回読んだ論文

Randomised clinical trial: vonoprazan, a novel potassium-competitive acid blocker, vs. lansoprazole for the healing of erosive oesophagitis.

リンク http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=26559637

 

ランダム化されているか?

タイトルにズバリRandomizedの記載があるのでランダム化

 

研究デザイン:多施設共同、ランダム化、二重盲検

 

論文のPECO

P:内視鏡検査によってびらん性食道炎(LA classification Grades A~D)と確認された20歳以上の者

E:ボノプラザン20mg/日を服用

C:ランソプラゾール30mg/日を服用

O:(Primary)8週間後の内視鏡検査でびらん性食道炎が治癒したと確認された患者の割合

 (Secondary)2週、4週目でのびらん性食道炎が治癒したと確認された患者の割合、昼間、夜間の胸焼け、安全性

 

 ※長期試験

8週後にびらん性食道炎が治癒したと判定された患者が、再度ボノプラザン10mg群とボノプラザン20mg群にランダム化され、52週までの長期試験でボノプラザンの安全性と有効性を確認。

 (Primary)TEAE(treatment emergent adverse event):治療中に発生した有害反応

 (Secondary)ECG、バイタルサイン、血中ガストリン、ペプシノーゲン、びらん性 食道炎の再発

 

除外基準

急性上部消化管出血、分泌過多症状の存在または既往、GERDに影響する治療または手術歴、重篤な神経、心血管、肺、肝臓、腎臓、代謝性、消化器、泌尿器、内分泌系、血液の疾患、入院の必要な手術、薬物依存、AIDS、肝炎、悪性腫瘍の既往

 

※試験期間中は、PPI、H2アンタゴニスト、M3アンタゴニスト、消化管運動促進薬、抗コリン薬、プロスタグランジン、酸分泌抑制薬、抗ガストリン薬、粘膜保護薬、ピロリ菌除菌療法、アタザナビル、治験薬の併用は禁止。

 

サンプルサイズ

8週間後のびらん性食道炎治癒率が、ボノプラザン群96.5%、ランソプラゾール群95.5%と仮定して、α=0.05、90%のパワーを持って非劣勢マージン10%を検出するために、各群111名が必要と計算。長期試験も行うため、各群200名を目標に集めた。

 

一次アウトカムは明確か?

Primary outcomeとして、びらん性食道炎の治癒率が設定されているが、これはほぼ明確と思われる。但し、研究者が内視鏡を用いて目視で確認するので、そこのバイアスの可能性はあるかも。ここは、どうなんでしょう?

 

真のアウトカムか?

真のアウトカム

 

追跡期間

8週間(アウトカム発症までの追跡期間としては妥当)

※長期試験は52週間

 

妄検化されているか?

Methodsの1行目にdouble-blindの記載があるので妄検化

Treatment, randomisation and blindingの10行目から、A double-dummy method,using matching vonoprazan placebo tablets and lansoprazole placebo capsules, was employed to ensure that the study was double-blind to avoid possible bias.

(二重盲検を保つために、ボノプラザンのプラセボ錠、ランソプラゾールのプラセボカプセルを使用)

 

ITT解析を行われているか?

記載なし

 

脱落率は結果を覆すほどあるか?

追跡率(203+198)/(207+202)×100=99.0%

脱落は結果にほぼ影響を及ぼさないと考えられる。

 

結果

(Primary endpoint)

投与8週後のびらん性食道炎治癒患者割合

 

 

 

治癒率

95%CI

差・p値

ボノプラザン群

99%(203/205)

96.520-99.882

3.5(0.362-6.732)

P=0.0337

ランソプラゾール群

95.5%(190/199)

91.589-97.911

 

 

(Secondary endpoint)

投与2週後のびらん性食道炎治癒患者割合

 

治癒率

95%CI

差・p値

ボノプラザン群

90.7%(185/204)

85.838-94.299

8.8(2.105-15.448)

P=0.0132

ランソプラゾール群

81.9%(163/199)

75.846-86.996

 

投与4週後のびらん性食道炎治癒患者割合

 

 

治癒率

95%CI

差・p値

ボノプラザン群

96.6%(198/205)

93.091-98.616

4.1(-0.308-8.554)

P=0.0806

ランソプラゾール群

92.5%(184/199)

87.872-95.720

 

 

(サブグループ解析)

LA classification Grade A or B(軽度)

 

 

治癒率

p値

ボノプラザン群

99.2%(129/130)

P=1.0000

ランソプラゾール群

100%(127/127)

 

LA classification Grade C or D(重度)

 

 

治癒率

p値

ボノプラザン群

98.7%(75/75)

P=0.0082

ランソプラゾール群

87.5%(63/72)

 

安全性

・TEAE/薬剤関連TEAE発生率は、ボノプラザン群22.2%/6.8%、ランソプラゾール群22.3%/5.9%で大きな差は無し。

・最も頻度の高いTEAEは鼻咽頭炎(ボノプラザン群:3.4%、ランソプラゾール群:4.0%)

 

 

長期試験

52週継続不能例は、ボノプラザン10mg群(19/154)、20mg群(22/151)で大きな差は無し。鼻咽頭炎が有害事象で最も多く、ボノプラザン10mg群で21.4%、20mg群で28.5%。

 

感想

今回の論文では、びらん性食道炎に対する効果を検討したものでした。8週間の服用で、ランソプラゾールでも95.5%患者で治癒が認められたとのことなので、タケプロンよりタケキャブが優れていると言っていのか?という疑問はある。そもそも、非劣勢試験なので優れていると言っていいのだろうか?とは思うがタケプロン30mgとの比較なので、確かにタケキャブの効果は高そうである。

薬価から見てみると、タケキャブは1錠240.2円、タケプロンOD30mgは140.3円と100円ほどの薬価差がある。タケプロンOD30mgはジェネリックも発売されており、ほとんどは55.6円なので更に薬価差は開く。費用対効果としては、どうなのだろうという感想。

今回の症例に関していえば、タケプロンOD30mgでもいいかな?と思ってしまう。

 Secondary endpointではあるが、投与2週間で治癒割合に差が出ているのは、タケキャブが効果発現が早いと言われている事の裏付けなのかなと感じたし、これは興味深いなと思った。PPIの長期服用は骨折リスが高くなる可能性があるといった趣旨の論文もいくつかあるので、タケキャブに関してもこのような傾向はあるのか?という点も興味深い。今後の研究結果を待ちたい。

サブグループ解析の、LA classification Grade C or D(重度)の患者数75名、治癒患者数75名で、治癒率98.7%は謎です・・・。

 

 

ピロリ菌除菌に対しても、PPIとしてタケキャブvsタケプロンの除菌成功率を比較した論文があるので、これに関しても次回以降まとめます。

Vonoprazan, a novel potassium-competitive acid blocker, as a component of first-line and second-line triple therapy for Helicobacter pylori eradication: a phase III, randomised, double-blind study.

リンク http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=26935876

 

最後までお付き合い頂きありがとうございました。