ピロリ除菌にタケキャブをベースで使うと除菌成功率は高くなりますか?
始めたばかりのブログですが、なんとか第2弾書きました。
第2弾は、ピロリ除菌についてです。
ピロリ除菌療法には、PPIなりP-CABなりを含む3剤併用療法が用いられますが、そもそもピロリ菌の除菌では、なぜ胃酸を抑える必要があるのでしょうか?
ピロリ菌の除菌に用いる、クラリスロマイシンやアモキシシリンが除菌効果を発揮するのは、ピロリ菌の増殖期だそうです。
また、ピロリ菌は胃内pH>5ではほとんど増殖しないらしい。
なので、胃酸分泌を抑えて、胃内pHを高くすることで、ピロリ菌の増殖期の条件にしてあげるて、クラリスロマイシンやアモキシシリンが効果を発揮できるようにするというのが目的です。
というわけで、今回読んだ論文は、ピロリ除菌の3剤併用療法の胃薬としてタケキャブ(ボノプラザン)を使った場合とタケプロン(ランソプラゾール)を使った場合の除菌成功率を比較した研究です。
Vonoprazan, a novel potassium-competitive acid blocker, as a component of first-line and second-line triple therapy for Helicobacter pylori eradication: a phase III, randomised, double-blind study
リンク http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=26935876
ランダム化されているか?
タイトルにズバリRandomizedの記載があるのでランダム化
研究デザイン:多施設共同、ランダム化、二重盲検
論文のPECO
P:20歳以上で、胃潰瘍、十二指腸潰瘍の既往歴のある、ヘリコバクターピロリ陽性患者
E:ボノプラザン20mg/日を使用
C:ランソプラゾール30mg/日を使用
※3剤併用療法(アモキシシリン750mg+クラリスロマイシン200 or 400mg+ボノプラザンor ランソプラゾール)
O:(Primary)1次除菌成功率→13C尿素呼気試験によって除菌されたか評価
(Secondary)2次除菌成功率
※1次除菌に失敗した50名は、2次除菌の3剤併用療法(アモキシシリン750mg+メトロニダゾール250mg+ボノプラザン)へ移行。
※除外基準
急性上部消化管出血、活動性胃・十二指腸潰瘍、急性胃・十二指腸粘膜病変、過去にピロリ除菌療法歴あり、胃酸分泌に影響する手術、Zollinger–Ellison症候群、胃酸分泌過多、心血管、肺、肝臓、腎臓、代謝性、消化器、泌尿器、内分泌系、血液の疾患、入院の必要な手術、薬物依存
サンプルサイズ
ボノプラザンのランソプラゾールに対する非劣勢を、90%のパワーを持って非劣勢マージン10%を検出するために、各群200名が必要と計算。更に様々な要因を加味して各群324名必要と計算。→この辺ごちゃごちゃしていてよく分からなかったです(´・ω・`)
一次アウトカムは明確か?
Primary outcomeとして、1次除菌成功率が設定されているが、尿素呼気試験は確立された評価法だと思われるので、1次アウトカムは明確と考えた。このあたり、どうなんでしょ?
真のアウトカムか?
真のアウトカムと言える。
追跡期間
除菌療法終了後4週間(アウトカム評価までの追跡期間としては妥当)
妄検化されているか?
Methodsの1行目にdouble-blindの記載があるので妄検化
A double-dummy method involving matched vonoprazan placebo tablets and lansoprazole placebo capsules was employed to ensure that the double-blind conditions
were maintained in the study to avoid potential bias.
(二重盲検を保つために、ボノプラザンのプラセボ錠、ランソプラゾールのプラセボカプセルを使用)
ITT解析を行われているか?
記載なし
脱落率は結果を覆すほどあるか?
Figure2より、追跡率(324+320)/ 650×100=99.0%
脱落は結果にほぼ影響を及ぼさないと考えられる。
結果
(Primary endpoint)
1次除菌成功率
|
除菌成功率 |
95%CI |
差・p値 |
ボノプラザン群 |
92.6%(203/205) |
89.2-95.2 |
16.7(11.2-22.1) P<0.001 |
ランソプラゾール群 |
75.9%(190/199) |
70.9-80.5 |
(Secondary endpoint)
2次除菌成功率
98.0%(95%CI:89.4-99.9)
安全性
・TEAE/薬剤関連TEAE発生率は、ボノプラザン群34.0%/20.4%、ランソプラゾール群41.1%/24.6%でランソプラゾール群の方がやや高い。
発生頻度の高かった有害事象(1次除菌)
|
ボノプラザン群 |
ランソプラゾール群 |
下痢 |
12.5%(41/329名) |
15.3%(49/321名) |
鼻咽頭炎 |
5.5%(18/329名) |
4.7%(15/321名) |
味覚障害 |
4.0%(13/329名) |
3.1%(10/329名) |
感想
ピロリ除菌はこれまでの1次除菌では除菌成功率70%程度という印象があったが、ボノプラザンをベースにした3剤併用療法では、ほぼ100%の成功率という事は驚きである。びらん性食道炎に対して用いた場合は、使用期間が比較的長期に及ぶので薬剤価格も気にはなる所であったが、ピロリ除菌療法では1週間なので、薬剤費の差は大きくなさそうである。これだけ、除菌成功率に差があるのであればタケキャブを選ぶかな?という印象です。最近は、ランサップやランピオンの使用頻度が少なくなって、サワシリン+クラリス+タケキャブ、もしくはサワシリン+フラジール+タケキャブの組み合わせもちらほら見かけるのも、頷けるかな。ピロリ除菌に飲酒や喫煙がどれだけ関わっているか?というところも詳しく知らないし、調べてみたいです。
そして、クラリスの用量を400mgと800mgで比較しても除菌率に差がないという報告も。
A multicenter, double-blind study on triple therapy with lansoprazole, amoxicillin and clarithromycin for eradication of Helicobacter
ピロリ除菌に関する文献はたくさんあるので、少しずつ読んでいこうと思います。
今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。