アレジオン点眼とパタノール点眼で効果に差はありますか?
ご訪問頂きありがとうございます。
始めたばかりのブログですが、何とか継続して、これが第3弾になります。
第3弾は抗アレルギー点眼についてです。
自分は花粉症持ちではない(と信じている)ので、抗アレルギー点眼を使ったことは無いのですが、服薬指導をしながら、花粉症の患者さんは目の痒みが日常生活に影響しているのを感じます。
そこで、エピナスチン点眼液(アレジオン点眼液)とオロパタジン点眼液(パタノール点眼液)の効果を比較した国内の研究がありましたので早速読んでみました。
Efficacy of Olopatadine versus Epinastine for Treating Allergic Conjunctivitis Caused by Japanese Cedar Pollen: A Double-Blind Randomized Controlled Trial
リンクhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4209092/pdf/12325_2014_Article_156.pdf
ランダム化されているか?
タイトルにズバリRandomizedの記載があるのでランダム化
研究デザイン:ランダム化、二重盲検
論文のPECO
P:アレルギー性結膜炎の既往歴がある、日本在住で20歳以上の日本人50名
E:オロパタジン点眼液0.1%を点眼
C:エピナスチン点眼液0.05%を点眼
この研究では、片目にオロパタジン点眼液、反対側にエピナスチン点眼液を点す方法が用いられており、左右どちらの眼にエピナスチン点眼液を点すかでランダム化しているようである。
O:(Primary)アレルゲン(スギ花粉)の希釈液を暴露してから7±1分後の目のかゆみ
(Secondary)アレルゲン(スギ花粉)の希釈液を暴露してから20±1分後の結膜充血
※目のかゆみ、結膜充血ともに(無症状)0~4(強い症状)点のスコアで評価
本研究はOra(眼科領域に特化した治験開発支援業者)-CAC modelに従って行われている
※除外基準
活動性のアレルギー性結膜炎、眼の感染症、耳介リンパ節腫脹、安全性に影響のある目の状態、春季カタルの既往歴、アトピー性角結膜炎、直近の眼の手術、屈折矯正手術
サンプルサイズ
オロパタジンとエピナスチンの効果の差をα=0.05、86%のパワーを持って検出するために50名が必要
一次アウトカムは明確か?
Primary outcomeとして、眼のかゆみを評価。評価の方法がスコア(自己評価?)になっている点から、結果を鵜呑みには出来ないかもしれない。アウトカムは目の痒み1点に絞られている。
真のアウトカムか?
眼のかゆみは患者のQOL、日常生活に影響が及ぶので真のアウトカムと言える
妄検化されているか?
Methodsの1行目にdouble-blindの記載があるので妄検化
ITT解析を行われているか?
Statistical Analysesの2段落目に
The primary efficacy analysis was conducted in the intent-to-treat (ITT) population…
の記載があるのでITT解析されている。
脱落率は結果を覆すほどあるか?
RESULTのStudy Subjectsの14行目に
None of the subjects withdrew from the study at Visit 3.
の記載があるので追跡率100%
結果
アレルゲンのみ曝露時の20±1分後の目の痒みスコア(0~4point)
|
スコア |
オロパタジン群 |
2.71±0.53 |
エピナスチン群 |
2.73±0.50 |
アレルゲンのみ曝露時の20±1分後の充血スコア(0~4point)
|
スコア |
オロパタジン群 |
2.83±0.73 |
エピナスチン群 |
2.82±0.73 |
(Primary endpoint)
アレルゲン曝露20±1分後の目の痒みスコア(0~4point)
|
スコア |
差・p値 |
オロパタジン群 |
0.23±0.31 |
-0.14 P=0.0462 |
エピナスチン群 |
0.37±0.44 |
(Secondary endpoint)
アレルゲン曝露20±1分後の充血スコア(0~4point)
|
スコア |
差・p値 |
オロパタジン群 |
0.89±0.88 |
-0.23 P=0.0273 |
エピナスチン群 |
1.12±0.95 |
安全性
有害事象の報告なし
考察
今回の研究の結果、オロパタジン(パタノール)群ではエピナスチン(アレジオン)群に比べ、1次エンドポイントの眼の痒みスコアを有意に改善させたという結果である。しかし、0~4pointのスコアのうちの0.14pointの差であるので、臨床上重要な差かと言われるとそこまで大きな差ではなさそうである。サンプルサイズのパワー86%というのも、中途半端で微妙だなという感じを受けた。しかも、よく読んでみると資金提供はパタノール点眼の製造販売元である、日本アルコンになっている。この事からも、結果は割り引いて考える必要があると考えられる。この論文だけから一概に言えないだろうが、スギ花粉による目の痒みに対してはどちらを使っても良さそうである。自分が花粉症持ちではないので、抗アレルギー点眼を使用した経験が無いのだが、抗アレルギー点眼は1発でこんなに効果あるものなのかと感じた。日頃の服薬指導でも、「目薬がないと症状がひどい」とおっしゃる患者さん多いのも何となく分かった気がする。
パタノール点眼液と、アレジオン点眼液の比較をしてみると、パタノール点眼液には、防腐剤として塩化ベンザルコニウムが含まれている。一方、アレジオン点眼液の防腐剤はリン酸水素ナトリウム水和物、ホウ酸である。塩化ベンザルコニウムは、コンタクトレンズに吸着、蓄積して角膜を傷つける可能性があるので、パタノール点眼液はコンタクトレンズを装着したままの点眼は出来ない点は重要となる。
今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。