エディロールはアルファロールよりどの程度優れているのでしょう?
今回は、骨粗鬆症治療に使われる、ビタミンD3製剤のエディロールとアルファロールについてです。
いずれも、活性型ビタミンD3製剤ですが、エディロールの方が効果が高いという印象でしょうか。
アルファロールは、骨粗鬆症に加え、ビタミンD代謝異常に伴う諸症状の改善にも適応を有します。一方、エディロールは骨粗鬆症のみです。
さて、骨粗鬆症患者に使った場合、その効果の差大きいのでしょうか?
参考文献1
A new active vitamin D3 analog, eldecalcitol, prevents the risk of osteoporotic
fractures — A randomized, active comparator, double-blind study
リンクhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21784190
研究デザイン:二重盲検 ランダム化比較試験(国内)
ランダム化されているか?
タイトルにrandomizedの記載があるのでランダム化されている。
論文のPECO
P:46~92歳の骨粗鬆症患者1054名(女性1030名、男性24名)
E:エルデカルシトール0.75㎍/日
C:アルファカルシドール1.0㎍/日
O:(Primary)脊椎骨折
(Secondary)非脊椎骨折、骨塩密度、骨ターンオーバーマーカー
※除外基準
原発性副甲状腺機能亢進症、クッシング症候群、視床下部による早期閉経、下垂体・生殖腺機能不全、コントロール不良の糖尿病(HbA1c>9%)、二次性骨粗鬆症、尿路結石の既往、ビスホスホネート服用、グルココルチコイド、カルシトニン、ビタミンK、活性型ビタミンD、ラロキシフェン服用、ホルモン置換療法など
一次アウトカムは明確か?
Primary outcomeとして、脊椎骨折が設定。一次アウトカムは明確と言える。
真のアウトカムか?
真のアウトカムと言える
追跡期間
3年間(アウトカム発症までの追跡期間としては妥当)
妄検化されているか?
Subjects and methodsのStudy design and patientsの最後の1行に、
Both patients and investigators were masked to treatment assignment throughout the study follow-up.
患者と研究者は共に治療の割り付けをマスクされた。→盲検化されている。
ITT解析を行われているか?
記載なし
脱落率は結果を覆すほどあるか?
追跡率(526+523)/(543+544)×100=96.5%
脱落は結果にほぼ影響を及ぼさないと考えられる。
結果
(Primary endpoint)
3年間の脊椎骨折の累積発生
|
累積発生率 |
HR(90%CI) |
p値 |
エルデカルシトール群 |
17.5% |
0.74(0.56~0.97) |
P=0.092 |
アルファカルシドール群 |
13.4% |
相対リスク減少率:26%
服用開始からの経過時間と新規脊椎骨折
|
エルデカルシトール群 |
アルファカルシドール群 |
0~1年 |
5.9% |
5.6% |
1~2年 |
4.0% |
5.6% |
2~3年 |
3.9% |
7.0% |
2~3年の間の新規脊椎骨折
OR=0.51(95%CI:0.27~0.97)p=0.037
(Secondary endpoint)
36カ月における全非脊椎骨折
|
発生率 |
HR(95%CI) |
p値 |
エルデカルシトール群 |
8.0% |
0.85(0.55~1.31) |
p値の記載なし 有意差無し |
アルファカルシドール群 |
9.5% |
36カ月における手首骨折
|
発生率 |
HR(95%CI) |
p値 |
エルデカルシトール群 |
1.1% |
0.29(0.11~0.77) |
p=0.009 |
アルファカルシドール群 |
3.6% |
有害事象
・エルデカルシトール群とアルファカルシドール群で有害事象発生状況に大きな差は無い。
|
エルデカルシトール群 |
アルファカルシドール群 |
鼻咽頭炎 |
62.9% |
59.3% |
挫傷 |
22.5% |
22.4% |
背部痛 |
13.6% |
15.4% |
変形性関節症 |
15.5% |
13.3% |
感想
3年間の脊椎骨折の累積発生については、エルデカルシトール群で、アルファカルシドール群に比べ有意に抑えられている。その絶対リスク減少率4.1%である。3年間の骨折発生を4%抑制というのが、臨床上大きな差なのかは疑問である。そして、この研究で注意が必要なのが、他の項目の信頼区間は95%であるのに対し、3年間の脊椎骨折の累積発生に関しては90%となっている所である。p値も90%信頼区間で0.092とギリギリ有意差が出ている結果であり、作為的なのではないかという疑いが残る。この点からも、結果をある程度割り引くと臨床上の差はそこまで大きくなさそうな印象である。そして、他の薬剤の論文でも有害事象の鼻咽頭炎は良く見かけるが、何なのだろう?
他にも無いか探してみると、以下の論文もありました。
この論文はAbstractしか読めませんが、こちらにも少しだけ記載があります。
参考文献2
Eldecalcitol: a review of its use in the treatment of osteoporosis.
リンクhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21902297
In the comparison with alfacalcidol, eldecalcitol 0.75 μg/day significantly reduced the 3-year incidence of vertebral fractures, with an absolute risk reduction of 4.1% over this period, representing a relative risk reduction of 26%. There was no significant difference in the rate of non-vertebral fractures.
追跡期間と、絶対リスク減少率から、おそらく1つ目の論文の事を言っているのでしょう。脊椎骨折では、有意差が出ているが、非脊椎骨折では有意差無し。
論文1であった、信頼区間が90%信頼区間になっている点は、Abstractに記載がないので注意しなければならない。
また、論文1のpost hoc検定を行った論文もあった。
参考文献3
Eldecalcitol reduces the risk of severe vertebral fractures and improves the health-related quality of life in patients with osteoporosis
リンクhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3590407/
こちらはSF-36という科学的信頼性・妥当性が証明されている尺度を用いた、患者のQOL(HRQOL)に関しても検討している。詳しくはまだ読んでいないが、またの機会に取り上げてみようと思う。
エルデカルシトールもアルファカルシドールも、痛みを抑えることが出来るかもしれない。しかし、Each domain allows a score of 0–100の記載があり、100点満点のうち、3~4点の改善なので、臨床上の差は大きくなさそうである。
トータルすると、案外エディロールとアルファロールで効果の差は小さいのかな?とい印象を受けた。脊椎骨折の予防効果はあるかもしれないが、これが大きな差なのか微妙。プラセボ比較の論文も吟味してみたいところである。信頼区間は注意して読む必要があると気づかされた。
今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。