閉経後の女性には、エビスタとボナロンどちらを使った方が骨折は防げますか?

今回は、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)のエビスタと、ビスホスホネート系のボナロンの比較です。

 

僕の印象として、骨密度に対してはビスホスホネート系の方が優れているのかな?という印象でしたが、骨折発生に関してはどうなんだろうという疑問はありました。

 

今回の参考文献はメタ分析の論文です。

 

Alendronate versus Raloxifene for Postmenopausal Women: A Meta-Analysis of Seven
Head-to-Head Randomized Controlled Trials

リンク http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3912893/

 

 研究デザイン:メタ分析

 

論文のPECO

P:閉経後の女性4054名

E:アレンドロン酸服用

C:ラロキシフェン服用

O:(Primary)脊椎、非脊椎骨折

 (Secondary)腰椎、大体頸部、臀部のベースラインからの骨密度変化、有害事象

 

一次アウトカムは明確か?

Primary outcomeとして脊椎、非脊椎骨折が設定。発生するかしないかは、明確に評価出来るため、一次アウトカムは明確。

 

真のアウトカムか?

真のアウトカム

 

4つのバイアス

1、評価者バイアス

MethodsのData Abstraction, Conversion, and Analysis. の冒頭に、For each eligible trial, two of us (Lin and Ying) independently extracted the relevant data

 

評価者バイアスはさほど問題なさそう

 

2、出版バイアス

情報元:PubMed、Medline、EMBASE、Cochran、

 

MethodのLiterature Search4行目に、searched without limit(制約なしに検索)

最後の1行に、Reference lists of all the selected articles were hand-searched for any additional trials.

出版バイアスはさほど問題なさそう

 

 

3、元論文バイアス

7つのランダム化比較試験が組み入れられている。

 

Assessment of Study Qualityに、Two reviewers (Lin and Ying) independently assessed the study validity with Cochrane Collaboration’s tool for assessing the risk of bias・・・の記載あり。

 

元論文バイアスもさほど問題なさそう

 

4、異質性バイアス

一次アウトカムである、全骨折、脊椎、非脊椎骨折は、それぞれI2=0%なので、異質性は低い。骨密度は比較的異質性の高いものが多い。有害事象のうち、上部消化管症状はI2=52%と、やや異質性は高い。

 

結果

いずれも、ラロキシフェンに対するアレンドロン酸のRR

 

Primary outcome

(全骨折) RR=1.12(95%CI:0.75~1.68) p=0.79  I2=0%

 

(脊椎骨折) RR=1.30(95%CI:0.66~2.54) p=0.90  I2=0%

 

(非脊椎骨折) RR=0.95(95%CI:0.54~1.68) p=0.88  I2=0%

 

Secondary outcome

ラロキシフェンに比べ、24か月後では、アレンドロン酸の方が骨密度は高くなる傾向。但し、異質性が高い。

 

24か月後のWMD

(腰椎) 3.90(95%CI:2.09~5.71) 

 

(大腿頸部) 1.47(95%CI:0.80~2.14)

 

(臀部) 2.12(95%CI:1.45~2.79)

 

 

有害事象

(有害事象による脱落) RR=1.03(95%CI:0.77~1.36) p=0.80  I2=0%

 

(上部消化管症状) RR=1.10(95%CI:0.77~1.58) p=0.60  I2=52%

 

(静脈血栓症) RR=0.52(95%CI:0.10~2.86) p=0.45  I2=0%

 

(下痢)RR=2.33(95%CI:1.21~4.49) p=0.01  I2=0%

 

(血管拡張)RR=0.74(95%CI:0.54~1.01) p=0.06  I2=0%

 

(血管運動)RR=0.47(95%CI:0.27~0.81)p=0.006  I2=0%

 

 

考察

今回のメタ分析に用いられているアレンドロン酸は、月1回製剤を用いている研究も週1回製剤を用いている研究も含まれている。Primary outcomeである骨折に関しては、異質性が低く、全骨折、脊椎骨折、非脊椎骨折ともにアレンドロン酸とラロキシフェンで有意差も出ておらず、骨折発生率の差は小さいという結果である。ただし、Study Characteristicsのところに記載されているが、含まれている7つのRCTのうち、骨折がPrimary outcomeとして設定されているのは2つのみであり、他の5つではSecondary outcomeもしくは有害事象に含まれている。なので、多少この点は考慮すべきかなと思う。いずれにせよ、骨密度が低下している閉経後女性にアレンドロン酸を用いるのも、ラロキシフェンを用いるのもそんなに骨折という観点では、大きな差は無さそうである。患者さんの服薬コンプライアンスなどの観点なども含めて、服用する薬剤が選択されるのであろう。そして、骨密度が高くなることと、骨折の発生の相関関係も、この結果からはどうなんだろうと感じた。

 

メタ分析は、まだ自身の経験も浅く、しっかり吟味できていなかったり、誤った解釈をしている部分もあるかもしれません。別な論文も今後取り上げていきたいと思います。そして、批判的吟味の精度も上げていこうと思います。

 

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。