術後の急性疼痛に対するセレコキシブvsエトドラク

ご訪問ありがとうございます。

 

今回は、NSAIDの中でもCOX-2選択性の高いセレコキシブエトドラクの比較を知りたいと思い、論文を検索したところ以下の論文がヒットしました。

 

「etodolac  celecoxib」でScopeを「Narrow」で検索したらRCTは1本しかヒットしませんでした(´-ω-`)

今後、「Broad」で検索してヒットした論文も読み進めていきます。キット(´・ω・`)

 

参考文献

EFFICACY AND SAFETY OF CELECOXIB COMPARED WITH PLACEBO AND ETODOLAC FOR ACUTE POSTOPERATIVE PAIN: A MULTICENTER,
DOUBLE-BLIND, RANDOMIZED, PARALLEL-GROUP, CONTROLLED TRIAL

 

リンクhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4361510/pdf/2186-3326-77-0081.pdf

 

ランダム化されているか?

タイトルにズバリRANDOMIZEDの記載があるのでランダム化

 

研究デザイン:多施設共同、二重盲検、ランダム化比較試験

セレコキシブの、プラセボに対する有効性と、エトドラクに対する非劣勢を評価

 

論文のPECO

P:術後急性疼痛のある20歳以上の日本人患者616名

※手術:骨接合具の除去、骨接合、靱帯再建術、半月板切除、半月板の修復、腱修復、良性腫瘍の除去、手根管症候群の手術、肘部管症候群の手術、陥入爪、鼠径ヘルニア手術、静脈瘤手術

(除外基準)

全身麻酔を必要とする者、脳血管/心血管疾患のリスクファクターを持つ者、消化管出血、消化性潰瘍患者

 

(禁止された薬剤)

アスピリン、麻酔、他の抗炎症薬、睡眠剤、抗てんかん薬、抗精神薬、抗うつ薬、抗躁薬、抗不安薬、中枢神経興奮薬、パーキンソン治療薬、抗ヒスタミン薬、副腎皮質ステロイド

※超短時間作用型睡眠薬の術前投与は許可

 

E:セレコキシブ400mg(開始用量)または200mg(維持用量) 1日2回2日間

 

C:①プラセボ服用 1日2回2日間

  ②エトドラク200mgを服用 1日2回2日間

 

※術後24時間以内に次の症状が現れたら服用

①4段階の疼痛強度(none、mild、moderate、severe)のうち、moderate、severe

②100mmのVASスケールで45mm以上の痛み

 

O:(Primary) 4段階評価 (very effective、effective、slightly effective、not effective)のうち、very effectiveまたはeffectiveと評価した患者の割合

(Secondary)服用前、初回服用から2、4、6時間後、眠前、2日目の起床時と眠前の痛みの自己評価(VASスケール)

 

サンプルサイズ

セレコキシブのプラセボに対する有益性とエトドラクに対する非劣勢(非劣勢マージン10%)をα=5%、80%のパワーをもって検出するために、トータル553名が必要。

 

一次アウトカムは明確か?

Primary outcomeとして用いられているのは、有効性の実感(自己評価)なので、明確とは言えないかな・・・。

 

真のアウトカムか?

有効性の実感は患者にとっては重要なので、真のアウトカム。

 

妄検化されているか?

タイトルにズバリDOUBLE-BLIND の記載があるので2重妄検

Study drug administrationの下から8行目に Patients and investigators were masked to treatment throughout the studyの記載があるので、隠蔽化もされている。

 

ITT解析を行われているか?

Statistical analysisの4段落目に、 The analysis population was the full analysis set (FAS), which was defined as subjects with one or more of the efficacy endpoints who received an investigational drug.

の記載があるため、ITTではなくFASが用いられている。

 

 

ITTFASの違い

どちらもランダム化の保持を目的に用いられる手法。ITT解析は理想的な手法であるが、現実的に達成するのが難しい。そこで、よく用いられるのがFASである。

ITTランダム化された全ての対象を解析する(言った通り解析)

FASランダム化された対象のうち、不適格者(登録基準を満たしていない患者)や1回も服薬をしていない患者、1回もデータが取れていない患者などを解析から除外して解析

 

脱落率は結果を覆すほどあるか?

Fig1より、(96+221+205)/616×100=84.7

追跡率84.7%→追跡率としてはまずまずなのかな?という印象

 

結果

★Primary outcome(very effectiveまたはeffectiveと評価した患者の割合)

 

プラセボ

63.7%

セレコキシブ群

76.2%

エトドラク群

68.0%

・セレコキシブ群とプラセボ群の間には有意差あり。

 

・エトドラク群とプラセボ群の間には有意差無し。

 

・セレコキシブのエトドラクに対する非劣勢が証明された。

 

★Secondary outcome(服用前、初回服用から2、4、6時間後、眠前、2日目の起床時と眠前の痛みの自己評価:VAS)

 

 

f:id:pharm-niiyan:20160625001519p:plain

 

初回投与後2、4、6時間までは、プラセボ群に比べ、セレコキシブ群、エトドラク群共に有意なVASの改善。

 

★有害事象

 

プラセボ

セレコキシブ群

エトドラク群

便秘

0.8%

1.2%

1.2%

下痢

1.6%

0.4%

0.4%

吐き気

0.8%

0%

1.6%

発熱

3.2%

0.8%

1.2%

 

感想

 本論文のPrimary outcomeは、患者の自己評価によるもので、明確なアウトカムとは言いにくい。Primary outcomeの結果を見てみると、プラセボ群でも6割以上の患者では

効いたという評価をしているということから、精神的な部分も大きく関与してきている可能性がある。この軽快の中には、自然軽快(プラセボも飲まなくても軽快したとうい部分)も多少なりとも含まれているかもしれない。

 VASスケールを見てみると、確かにプラセボ群と比較して有意なVASの改善を示しているという結果だが、果たしてこの差が臨床上大きな差なのかというと、疑問が残る。

しかし、本研究は術後の急性疼痛を対象にしており、継続して漫然と服用するような使い方ではない。そして、有害事象もプラセボ群と比較して重大なものや発生率の差が大きいものもない。実薬の効果としては、このプラセボ効果も含めて現れるハズである。

 このような点から、短期間であれば、術後の急性疼痛に対してセレコキシブもしくはエトドラクを用いるのもアリなのかな?という印象であるし、どちらを使ってもいいかな?という感じである。

とにもかくにも、アウトカムが自己評価で、明確と言い難いので・・・。

 セレコキシブ等のCOX-2選択的阻害剤は、心血管イベントのリスクを高めるという話も聞いたことがあるので、このような点も探求していきたい。

 

 

今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。