ω3系脂肪酸で心血管系による死亡は防げますか?

ご訪問ありがとうございます。

 

今回は、これまでにも2回取り上げさせて頂いたことのある、ω3系脂肪酸についてです。

 

参考文献 Omega-3 Dietary Supplements and the Risk of Cardiovascular Events:

     A Systematic Review

リンク http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19609891

 

研究デザイン:メタ分析

 

論文のPECO

P:11のRCTに組み込まれた、合計39044名の重度もしくは中程度の心血管イベントリスクのある患者

※結果を見ると、心血管イベントの中リスク群と高リスク群に分けた解析も行われている

E:EPA/DHAを服用

C:EPA/DHAの服用無し

O:一次アウトカム:心血管系死亡

  二次アウトカム:突発性の心臓死、全死亡、非弁膜症性心血管イベント

 

 一次アウトカムは明確か?

一次アウトカムとして、心血管死亡が1つだけ設定されている。また、起こるか起こらないかが誰から見ても明らかなので明確。

 

真のアウトカムか?

真のアウトカム

 

4つのバイアス

1、評価者バイアス

MethodsのIdentification of Trialsの16行目にBoth authors independently searched・・・

複数の評価者が独立して選定

 

評価者バイアス問題なし

 

2、出版バイアス

情報元:MEDLINE、EMBASE、コクラン、関連する一次情報

 

There was no restriction as to the type of patient, clinical setting, or language in which the study was reported.

(患者のタイプ、臨床背景、言語の制約なしに検索)

 

他にも「ω3系脂肪酸」、「心血管疾患」の情報を含む参考文献を網羅

 

出版バイアスはさほど問題なさそう

 

3、元論文バイアス

Data Extraction and Analysis に、We recorded the method of randomization, blinding, and concealment.(ランダム化の方法、盲検化、隠蔽化に関して記録)

 Resultsに、All studies used random allocation and all except 2 were blinded with concealment of allocation.

 

元論文バイアスについて大きく問題ということは無さそうだが、11個のうち2つの研究では盲険化、隠蔽化に問題あり?

 

4、異質性バイアス

Figure2のI2=39%、Figure4のハイリスク群ではI2=58%、全体では49%と、中程度~やや高い異質性が見られる。一次アウトカムである心血管死亡(Figure1)のI2=0%なので、一次アウトカムに関しての異質性は低い。

 

結果

一次アウトカム(心血管系死亡)

(中リスク群)

OR0.88 (95%CI:0.55~1.43) I2=0% P=0.83

 

(高リスク群)

OR0.87 (95%CI:0.79~0.95) I2=0% P=0.42

 

(全体)これがまさに一次アウトカムの結果

OR=0.87 (95%CI:0.79~0.95) で、ω3系服用ありの方が心血管死亡は少なくなる傾向

I2=0% P=0.74

 

二次アウトカム

①突然の心臓死

OR0.87 (95%CI:0.79~0.99) で、ω3系服用ありの方が突然の心臓死は少なくなる傾向

I2=39% P=0.15

 

②全死亡

(中リスク群)

OR1.07 (95%CI:0.91~1.27) I2=0% P=0.79

 

(高リスク群)

OR0.89 (95%CI:0.82~0.96) I2=0% P=0.54

 

(全体)

OR0.92 (95%CI:0.85~0.99) で、ω3系服用ありの方が全死亡は少なくなる傾向

I2=0% P=0.74

 

③非弁膜症性心血管イベント

(中リスク群)

OR0.78 (95%CI:0.66~0.92) I2=0% P=0.60

 

(高リスク群)

OR0.95 (95%CI:0.88~1.03) I2=58% P=0.05

 

(全体)

OR0.92 (95%CI:0.85~0.99) で、ω3系服用ありの方が非弁膜症性心血管イベントは少なくなる傾向

I2=49% P=0.05

 

感想

このメタ分析の結果から、一見EPA/DHAを服用することで、やや心血管死亡が減らす事ができて有効なように思われる。しかし、EER=1075/19534≒0.055、CER=1209/19510≒0.062、ARR=CER-EER≒0.007なので、NNTを計算すると1/0.007≒143人となる。高リスク群のみで計算してみると、NNT=76人となる。(NNTの計算が合っているか自信ないです。)

全体で見ると、その差はそんなに大きくないのではないかと感じた。個々の論文についてTable1を見てみると、EPAを使っている試験もEPAのみを使っている試験も含まれているし、量も幅広く、追跡期間も1年~4.6年と幅が大きい。ただ、追跡期間が1~2年程度と短いものが多いなぁと感じた。

そして、EPA製剤やDHA製剤の大きな問題が、その飲みにくさだろう。イコサペント酸エチルのカプセルは1カプセルが大きく飲みにくい。この大きなカプセルを1回2~3カプセルというのはなかなか大変ではないだろうか。粒状カプセルも、なかなか飲みにくいのではないだろうか?

EPA/DHAとなっている所も、ロトリガのように配合剤を飲んでいるという事なのか、EPAを飲んでいる人とDHAを飲んでいる人がいるという事なのかも読み取れていないので、この点も含め個々の論文についても読んでみる必要がある。

現状、自分の中では大変な思いをしてまで飲まなくても案外大丈夫なのかな?という印象だが、1本読んだだけでは必要ないとは言い切れない。

 もう1点気になったのが、Methodsに、 In addition, we excluded studies that did not report at least one of the secondary end points. (1つもセカンダリアウトカムの報告の無い研究は除外)という記載があるが、これは何でなのだろう・・・。

 

 

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。