ω-3脂肪酸で死亡は防げますか?

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前回に引き続き、EPA/DHA関連になりますが、今回は心血管疾患のハイリスク患者を対象として総死亡について研究した論文です。

 

 参考文献 Omega-3 fatty acids in high-risk cardiovascular patients: a meta-analysis of  randomized controlled trials

リンク http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20525225

 

研究デザイン:メタ分析

 

論文のPECO

P:ハイリスクの心血管疾患患者35144名

E:ω-3系酸を服用

C:プラセボまたは通常の食事制限

O:(Primary)総死亡

(Secondary)経皮冠動脈インターベンション後の冠動脈再狭窄、安全性

 

 

一次アウトカムは明確か?

一次アウトカムとして、総死亡が1つだけ設定されている。また、起こるか起こらないかが誰から見ても明らかなので明確。

 

真のアウトカムか?

真のアウトカム

 

試験期間

総死亡:中央値12カ月

再狭窄:中央値6か月

 

4つのバイアス

1、評価者バイアス

MethodsのData ExtractionにOne author performed the literature search, and data extraction was independently conducted by at least two individuals

1人の評価者が文献検索を行い、データ抽出は少なくとも2名の評価者が独立して行った。

 

評価者バイアス問題なし?文献検索は1人で行っている・・・。

 

2、出版バイアス

情報元:コクラン、MEDLINE、EMBASE

 

MethodsのLiterature Searchにwithout language restrictions

→言語制限なしに検索

References of relevant articles were hand-searched for additional studies.

追加の研究として、関連する参考文献はハンドサーチで検索

 

網羅的に探しているようなので、出版バイアスはさほど問題なさそう

 

3、元論文バイアス

Quality assessment of the individual trials was performed using the Jadad scale

個々の研究の質的評価はJadadスケールを用いて行われた。

Jadad Scale

①ランダム化されていることが記述されている。(0~2点)

②盲険化されていることが記述されている。(0~2点)

③中断・脱落数とその理由が記載されている。(0~1点)

の3項目から成り、合計5点満点のうち3点以上で質の高い研究とみなされる。

 

いくつか、オープンラベルの研究が含まれている

 

元論文バイアスについて大きな問題は無さそうだが、オープンラベルの研究が含まれているので注意

 

4、異質性バイアス

異質性に関する記載は見当たらないので不明。

 

結果

一次アウトカム

(総死亡)

(追跡期間12カ月以上)

RR0.91 (95%CI:0.57~1.12) 

(介入群)1749/12949 (コントロール群)1855/12923

 

(追跡期間12カ月以下)

RR0.72 (95%CI:0.38~1.08) 

 (介入群)136/4281 (コントロール群)127/4223

 

二次アウトカム

(冠動脈再狭窄)

RR=0.89(95%CI:0.72~1.05) 

 

(安全性)

①消化器系副作用 RR=1.29(95%CI:1.02~1.61) 

 

②悪性腫瘍 RR=1.02(95%CI:0.73~1.25) 

 

①出血 RR=0.85(95%CI:0.52~1.27) 

 

感想

 本研究は、心血管イベントのハイリスク患者を対象としたものであるが、ハイリスク患者においても、死亡率に対するメリットがあるのか無いのかよく分からない。異質性に関する記載が見当たらなかったが、フォレストプロットを見てみると、1つ1つの研究結果のバラツキも大きく何とも言い難い結果だなぁという感想。ω-3系脂肪酸として、αリノレン酸を用いている研究も含まれているが、これを除いても結果は覆らないとの記載があった。

 副作用に関しては、そんなに大差ないのかなという印象。特に、出血に関しては思っているより影響少ないのだろうか?しかし、有害事象に関しては、より慎重な判断が必要なのではなかろうか?

 そして、メタ分析の論文を読むと毎回感じるのが、個々の研究についても、研究の条件やアウトカムの設定等、見ていく必要があるなぁという事。

 

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。