セレコキシブを使い続けると心血管イベントに影響はありますか?
ご訪問ありがとうございます。
以前、どこかで(金芳堂から出ている、薬のデギュスタシオンだったかな?)セレコキシブ服用で心血管イベントが増える!というような事を見たような気がして、論文を探してみました。
参考文献 Risk of cardiovascular events and celecoxib: a systematic
review and meta-analysis
リンク http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1383759/pdf/0132.pdf
研究デザイン:メタ分析
論文のPECO
P:関節リウマチ、アルツハイマー病、ハイリスクの結腸直腸腺腫患者
①Primary meta-analysis :4422名
②Secondary meta-analysis:12780名
E:セレコキシブを服用(200、400、800mg/day)
C:①Primary meta-analysis:プラセボ
②Secondary meta-analysis:パラセタモールまたは他のNSAID(イブプロフェン、ジクロフェナク)
O:(一次アウトカム)心筋梗塞(弁膜症性、非弁膜症性)
(二次アウトカム)弁膜症性・非弁膜症性脳血管イベント(血栓症、出血)、心血管性死亡、重篤な心血管血栓塞栓症の複合アウトカム(心筋梗塞、脳血管イベント、心血管死亡、不安定狭心症、末梢血管イベント)
一次アウトカムは明確か?
一次アウトカムとして、心筋梗塞が設定されている。1つだけなので明確。
真のアウトカムか?
真のアウトカム
試験期間
総死亡:6~161週間
4つのバイアス
1、評価者バイアス
MethodsのSearch strategyに、Two researchers independently examined each paper for inclusion.
2人の評価者が独立して評価
評価者バイアス問題なし
2、出版バイアス
情報元: MEDLINE、コクラン、APCジャーナルクラブ、EMBASE等
※セレコキシブの製造元であるPfizerに関連データの提出を依頼したが、追加データは得られなかった。
※言語制限などに関する記述は無し
網羅的には検索しているようではあるが、言語制限などの記載がないことなどからも出版バイアス問題無しかは怪しい
3、元論文バイアス
記載なし?←見つけられませんでした・・・(´・ω・`)
4、異質性バイアス
異質性に関する記載は見当たらないので不明。Primary outcomeのフォレストプロットを見ると、大体同じような傾向を持つものが集められている。
結果
Primary meta-analysis
一次アウトカム
(心筋梗塞)
セレコキシブ:29/2774件 プラセボ:6/1447件
OR=2.26 (95%CI:1.0~5.1)
二次アウトカム
(脳血管イベント)
セレコキシブ:24/2775件 プラセボ:13/1647件
OR=1.0 (95%CI:0.51~1.84)
(心血管死)
セレコキシブ:16/2574件 プラセボ:7/1447件
OR=1.22 (95%CI:0.92~1.62)
(複合心血管イベント)
セレコキシブ:79/2775件 プラセボ:30/1647件
OR=1.38 (95%CI:0.91~2.10)
Secondary meta-analysis
一次アウトカム
(心筋梗塞)
セレコキシブ:55/6658件 対照:21/5522件
OR=1.88 (95%CI:1.15~3.08)
二次アウトカム
(脳血管イベント)
セレコキシブ:28/6859件 対照:27/5921件
OR=0.73 (95%CI:0.42~1.26)
(心血管死)
セレコキシブ:26/6561件 プラセボ:17/5428件
OR=1.22 (95%CI:0.92~1.62)
(複合心血管イベント)
セレコキシブ:134/6859件 プラセボ:81/5921件
OR=1.22 (95%CI:0.92~1.62)
感想
患者背景が幅広く関節リウマチ以外にも、アルツハイマー病、ハイリスクの結腸直腸腺腫患者を対象にしている研究も含まれている。アルツハイマー型認知症の脳病変として、βアミロイドの関与が知られているが、NSAIDSがこの蓄積を抑えるのではないかという研究がすすめられているようで、この研究も含まれているのだろうか。またの機会に、元論文も読んでみたい。
そもそも発症頻度がものすごく高いわけではないが、セレコックス服用では、プラセボ比較、他のNSAID比較いずれも心筋梗塞発症が高まる傾向が見られるようである。他のアウトカム評価項目についても、セレコキシブ服用で発生が高まる傾向にあるものが多い。有害事象という側面から、この結果は軽視すべきではなさそうである。
疼痛緩和目的で必要な場合は服用するにしても、不必要な長期的漫然服用は避けるべきではないかと考えさせられる結果である。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。