H2ブロッカーの服用は認知機能に影響がありますか?

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今回は、H2ブロッカーの服用と認知機能障害についてです。

 

参考文献 Histamine-2 Receptor Antagonist Use and Incident Dementia in
an Older Cohort

リンク http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21314645

 

研究デザイン:前向き 一般集団対象コホート研究

※2年ごとに、認知症またはアルツハイマー病発症の

有無を確認するためフォローアップ

 

論文のPECO

P:もともと認知症の無い65歳以上の2923名

E:H2ブロッカーの服用あり

C:H2ブロッカーの服用無し

O:認知症アルツハイマー病の発症

 

 

※各H2ブロッカーの1日当量

ラニチジン:300mg シメチジン:800mg ニザチジン:300mg ファモチジン:40mg

 

研究対象集団の代表性

問題無し

 

真のアウトカムか?

真のアウトカム

 

調節した交絡因子は何か?マッチングされているか?

年齢、性別、教育を受けた期間、狭心症、うっ血性心不全、高血圧、糖尿病、喘息、COPD、冠動脈性心疾患、脳血管疾患、BMI、自己評価の健康状態、身体活動、定期的な運動、NSAIDの服用

 

追跡期間

6.7年

 

結果

 

SDD:Standardized daily dose(1日標準使用量)

1日で実際に使用した量/1日当量

 例)ラニチジン(1日当量300mg)を600mg服用→600mg/300mg=2SDD

 

 1、全認知症

 

①累積使用量

 

HR

95%CI

p値

SDD≤30

1.00

Reference

 

30≺SDD≤180

0.93

0.72-1.20

 

180≺SDD≤540

1.19

0.89-1.57

 

540≺SDD≤1080

1.01

0.69-1.48

 

SDD≻1080

1.28

0.95-1.72

0.35

 

 

②追跡期間のうち高用量だった期間(2年間)の使用量

 

HR

95%CI

p値

SDD≤30

1.00

Reference

 

30≺SDD≤180

0.94

0.73-1.21

 

180≺SDD≤540

1.21

0.93-1.58

 

SDD≻540

1.09

0.79-1.52

0.39

 

 

③過去(3年以上前)の累積使用量/最近(1-3年)の累積使用量

過去/最近

HR

95%CI

p値

Low/Low

1.00

Reference

 

Low/Moderate

1.16

0.69-1.96

 

Low/High

0.88

0.38-2.06

 

Moderate/Low

0.96

0.76-1.23

 

Moderate/Moderate

1.14

0.73-1.76

 

Moderate/High

1.25

0.79-1.97

 

High/Low

1.37

0.91-2.06

 

High/Moderate

2.25

1.34-3.77

 

High/High

0.92

0.62-1.35

0.11

 

2、アルツハイマー認知症

①累積使用量

 

HR

95%CI

p値

SDD≤30

1.00

Reference

 

30≺SDD≤180

1.01

0.76-1.33

 

180≺SDD≤540

1.26

0.92-1.73

 

540≺SDD≤1080

0.95

0.60-1.49

 

SDD≻1080

1.41

1.00-1.97

0.23

 

 

②追跡期間のうち高用量だった期間(2年間)の使用量

 

HR

95%CI

p値

SDD≤30

1.00

Reference

 

30≺SDD≤180

0.98

0.74-1.30

 

180≺SDD≤540

1.19

0.88-1.61

 

SDD≻540

1.13

0.78-1.64

0.63

 

 

③過去(3年以上前)の累積使用量/最近(1-3年)の累積使用量

過去/最近

HR

95%CI

p値

Low/Low

1.00

Reference

 

Low/Moderate

1.11

0.61-2.03

 

Low/High

0.71

0.25-2.04

 

Moderate/Low

1.02

0.78-1.34

 

Moderate/Moderate

1.30

0.81-2.11

 

Moderate/High

1.34

0.79-2.27

 

High/Low

1.66

1.07-2.57

 

High/Moderate

1.77

0.90-3.47

 

High/High

0.98

0.63-1.52

0.30

 

 

感想

 マッチングする交絡因子として、ベンゾジアゼピン系などの使用は含まなくてもいいのかな?と思った。

 結果を見てみると、認知症アルツハイマー認知症ともに、そこまで大きなインパクトのあるような結果ではなさそうである。全認知症アルツハイマー認知症ともに累積使用量が最も多い群がハザード比は最も大きくなっているが、用量依存性という観点で見てみると、成立しているかも微妙である。

 今回の対象患者が65歳以上で、そこから平均6.7年の追跡なので、アウトカム発生までの追跡期間としての妥当性はありそうである。

 1日当量としては、いずれのH2ブロッカーも国内の標準用量と同等であるので、用量設定は適用できそうである。

 このデータだけから、H2ブロッカーと認知機能の関係をどうこういう事は難しいので、関連データを継続して追跡していく必要がある。

 もしかすると、関連があるのかもしれないな・・・。ぐらいな感じだろうか?

 

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。