クロピドグレル服用時はPPIを併用した方がいいのですか?
ご訪問ありがとうございます。
昨日、低用量アスピリン服用時にはPPIを併用すべきなのかについて書きましたが、今回は、クロピドグレル服用時にもPPIを併用すべきなのかについて調べてみました。
参考文献 Meta-analysis: the effects of proton pump inhibitors on cardiovascular events and mortality in patients receiving clopidogrel
リンク http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1365-2036.2010.04247.x/epdf
PMID:20102352
研究デザイン:メタ分析
論文のPECO
P:クロピドグレルを服用している患者
E:PPIを併用する
C:PPIを併用しない
O:心血管イベント、死亡、主要心血管イベント(死亡、心筋梗塞、血行再建術の複合アウトカム)
一次アウトカムは明確か?
→明確だが、血行再建術はソフトエンドポイント
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
4つのバイアス
1、評価者バイアス
2名の評価者が独立して選定
評価者バイアス問題なし
2、出版バイアス
情報元: MEDLINE、EMBASE、コクラン
言語制限なしに検索されている。また、未出版の情報も探している。
出版バイアスの可能性は低い
3、元論文バイアス
Abstract onlyのものが多く、個々の論文の質に関しては不明確なものが多い
元論文バイアスは少なからず存在する可能性(DISCUSSIONにも記載あり)
4、異質性バイアス
異質性は大きい傾向にあるので注意
結果
①心筋梗塞または急性冠症候群
交絡調整無しの観察研究 RR=1.82 (95%CI: 0.90-3.70) I2=72%
交絡調整ありの観察研究 RR=1.54 (95%CI: 1.23-1.92) I2=75%
傾向スコアマッチングありの研究+RCT RR=1.15 (95%CI: 0.89-1.48) I2=53%
全体 RR=1.43 (95%CI: 1.15-1.77) I2=77%
②総死亡
交絡調整無しの観察研究 RR=1.41 (95%CI: 0.88-2.26) I2=52%
交絡調整ありの観察研究 RR=1.04 (95%CI: 0.89-1.22) I2=61%
傾向スコアマッチングありの研究+RCT RR=1.00 (95%CI: 0.66-1.53) I2=72%
全体 RR=1.09 (95%CI: 0.94-1.26) I2=60%
③主要心血管イベント(死亡、心筋梗塞、血行再建術の複合アウトカム)
交絡調整無しの観察研究 RR=1.17 (95%CI: 0.83-1.63) I2=77%
交絡調整ありの観察研究 RR=1.44 (95%CI: 1.24-1.67) I2=69%
傾向スコアマッチングありの研究+RCT RR=1.00 (95%CI: 1.07-1.28) I2=49%
全体 RR=1.25 (95%CI: 1.09-1.42) I2=79%
感想
アホな考えかも知れないが、クロピドグレルによる消化管出血を防ぐ意味で、PPIを併用した方がいいのかな?と個人的には思っていたので、本研究の結果は衝撃だった。この結果を真に受けてしまうと、クロピドグレル服用患者ではPPIを併用した方が心筋梗塞や急性冠症候群などの発症は高くなる傾向にあるという事になる。
但し、このメタ分析は、あくまでほとんどの元論文が観察研究なのと、元論文バイアスの影響が大きそう、異質性バイアスの影響も大きそう、などといった理由で、結果を鵜呑みには出来ないと思う。
クロピドグレルの代謝には、CYP2C19を必要とするため、CYP2C19を阻害効果が高いPPI(オメプラゾールやランソプラゾール)は、併用することで相互作用による影響があるのかもしれない。
こういった意味では、あくまで仮説だが、併用する必要があるのであればラベプラゾール等の代謝酵素阻害作用が少ないPPIを使用した方がいいのかもしれない。クロピドグレル服用による消化管出血に対するPPIの効果も気になる所である。まず、この論文が6年前のものとやや古いので、より新しい論文も探して読んでみたい。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。