消化管出血ハイリスクの患者へのクロピドグレル単独vsアスピリン+エソメプラゾール併用による消化管出血再発率
ご訪問ありがとうございます。
今回は、消化管出血のハイリスク患者に対するクロピドグレル単独と、アスピリン+エソメプラゾール併用で、どちらが消化性潰瘍による出血の再発を抑えられるかについて比較した研究です。
今回もやや古い文献ですが、参考までに読んでみました。
参考文献 Clopidogrel versus Aspirin and Esomeprazole to Prevent Recurrent Ulcer Bleeding
リンク http://www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJMoa042087
PMID:15846858
ランダム化されているか?
→されている
研究デザイン:ランダム化比較試験
論文のPECO
P:血管疾患予防のためアスピリンを服用しており、潰瘍性出血を起こした患者
E:クロピドグレル75mg
C:アスピリン80mgとエソメプラゾール20mgを併用
O:(Primary)潰瘍性出血の再発
(Secondary)下部消化管出血(入院もしくは輸血を要する下血、直腸出血)
※治療期間は12カ月
※除外基準
NSAID併用、COX-2阻害剤併用、抗凝固剤併用、他の抗血小板薬の併用、副腎皮質ステロイド併用、胃の手術歴、アスピリンもしくはクロピドグレルに対するアレルギー、びらん性食道炎、胃幽門閉塞、透析を要する腎不全、終末期疾患、悪性腫瘍
サンプルサイズ
319名(パワー80%、α=5%)
一次アウトカムは明確か?
→明確
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
盲検化されているか?
double-blind(盲検化)されている
※クロピドグレル服用群はエソメプラゾールのプラセボを服用することで、盲検化を保持できるように工夫している
ITT解析を行われているか?
intention-to-treat population,20 which was defined as all patients who had taken at least one dose of the study medication
→FASが用いられている
追跡率99.1%
結果
消化管出血の再発
|
累積発生率 |
95%CI |
p値 |
クロピドグレル群 |
8.6% |
4.1-13.1 |
0.001 |
アスピリン+エソメプラゾール群 |
0.7% |
0-2.0 |
下部消化管出血
|
累積発生率 |
95%CI |
p値 |
クロピドグレル群 |
4.6% |
1.3-7.9 |
0.98 |
アスピリン+エソメプラゾール群 |
4.6% |
1.3-8.0 |
安全性
|
クロピドグレル群 |
アスピリン+エソメプラゾール群 |
ディスペプシア |
7.5% |
2.5% |
アレルギー |
1.9% |
1.9% |
虚血性イベント再発 |
9件 |
11件 |
死亡 |
8件 |
4件 |
感想
クロピドグレルとアスピリンでは、アスピリンの方が消化管出血リスクは高いイメージだった。アスピリンに、PPIであるエソメプラゾールを併用すると、クロピドグレル単独と比較しても消化管出血は少なくなる可能性が示唆された。
以前読んだ、アスピリンにPPIを併用すると消化管障害は抑えられるか?という論文を合わせても、アスピリン服用時にはPPIを上乗せする方がいいのかなといった感想を持った。
今回の論文で用いているアスピリンの量は80mgと、国内で通常用いている量よりはやや少なめな点は注意が必要である。また、本研究では対象患者の平均年齢が72~73歳と比較的高齢なので、併用される可能性が高い、NSAIDや抗凝固薬などを服用している患者は除外基準に含まれている点も注意が必要。
まず、クロピドグレル服用の有無でどれくらい消化管出血のリスクが違うのかも論文を探して読んでみる必要がある。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。