ACSの診断を受けた患者へのクロピドグレルとPPIの併用
ご訪問ありがとうございます。
前日、クロピドグレル服用時のPPI併用に関する記事を書きましたが、関連論文も見つけたので読んでみました。
前回は、2010年に発表されたメタ分析の論文でしたが、今回は2012年に発表されたコホート研究の論文です。
参考文献 THE EFFECT OF INTERACTION BETWEEN CLOPIDOGREL AND PROTON PUMP INHIBITORS ON ADVERSE CARDIOVASCULAR EVENTS IN PATIENTS WITH ACUTE CORONARY SYNDROME
リンク http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22744772
研究デザイン:前向き一般集団対象コホート研究
論文のPECO
P:急性冠症候群(ACS)の診断を受け、90日以内に少なくとも1回クロピドグレルを服用した18歳以上の患者(平均61.3歳)
E:クロピドグレル+PPI
C:クロピドグレル単独
O:心筋梗塞、経皮冠動脈インターベンション、中間冠状症候群による再入院または救急治療室への入室
※使用されているPPI:オメプラゾール、エソメプラゾール、ランソプラゾール、パントプラゾール、ラベプラゾール
研究対象集団の代表性
米国のIMS LifeLink Health Plan administrative claims databaseからデータを得ている
→問題無し
真のアウトカムか?
真のアウトカム
調節した交絡因子は何か?マッチングされているか?
年齢、性別、居住地域、チャールソン併存指数、併存疾患(潰瘍、胃炎、GARD、肥満、糖尿病、うっ血性心不全、脳血管疾患)、併用薬(ACE-I、抗血栓薬、COX-2阻害薬、HMG-CoA阻害剤など)、Index Hospitalization Diagnosis(心筋梗塞、非ステントによる血行再建術、中間冠状症候群、ステント)、ベースラインにおけるPPI服用、クロピドグレル服用期間、クロピドグレル+PPI服用期間、PPI単独服用期間、PPIの種類、クロピドグレル服用開始時点
傾向スコアマッチングが行われている(2674組がマッチングされた)
追跡期間
平均268日
結果
退院後の心血管アウトカム(傾向スコアマッチングした場合)
HR=1.438(95%CI:1.237-1.671)
※感度分析(すべて傾向スコアマッチングした結果)
(退院後の期間による変化)
退院後7日間以内
HR=1.409(95%CI:1.213-1.636)
退院後30日間以内
HR=1.452(95%CI:1.252-1.685)
(PPI併用の定義による変化)
継続して7日間以上の併用
HR=1.221(95%CI:0.984-1.517)
最低1日の併用
HR=0.840(95%CI:0.703-1.002)
感想
本研究では、マッチングも十分行われているような印象である。ただし、追跡期間は平均268日と短いような印象を受けた。もう少し長期間の追跡も必要なのかと感じた。以前、クロピドグレルとPPI併用による心血管イベントを検証したメタ分析の論文を読んだが、その結果でも併用軍の相対リスクは1.45程度とやや増加傾向が見られた。
本研究からも、やはりクロピドグレルとPPIの併用で若干のリスク上昇が発生する可能性が示唆された。前回のメタ分析の論文は2010年の物、今回取り扱った論文は2012年の物である。前回のメタ分析には含まれていない物であるため、前回取り扱った論文の上乗せとなるデータとなるかもしれない。
今回の論文は、個人的にすごくセッティングなどを読み取るのが難しく、特に感度分析に関しては条件を勘違いしている可能性があるので、ご指摘いただければ非常にありがたいです。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。