うっ血性心不全患者に対するアゾセミドvsフロセミド
ご訪問ありがとうございます。
今回は、うっ血性心不全患者に対するループ利尿薬同士の比較(アゾセミドvsフロセミド)です。
というのも、本日、在宅施設患者さんで心不全症状のため、利尿薬がアゾセミドからフロセミドへと変更になった症例があったので、気になって調べてみました。
参考文献 Superiority of long-acting to short-acting loop diuretics in the treatment of congestive heart failure.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22451450
PMID:22451450
研究デザイン:多施設共同 ランダム化比較試験
ランダム化されているか?
→ランダム化されている
論文のPECO
P:うっ血性心不全(NYHA分類Ⅱ~Ⅲ度)の20歳以上の患者320名(平均71歳)
E:アゾセミド30~60mg/日
C:フロセミド20~40mg/日
O:(Primary)心血管系死亡とうっ血性心不全による入院の複合エンドポイント
(Secondary)総死亡、うっ血性心不全による入院と心不全治療の変更
※除外基準
コントロール不良の糖尿病、コントロール不良の高血圧、直近の低血圧、血清クレアチニン>2.5mg/dl、急性冠症候群、植え込み除細動器、左室流出路の閉塞、3カ月以内の急性心筋梗塞、経皮冠動脈インターベンション、3カ月以内の心臓切開術、1か月以内の心血管系薬物療法変更、静脈内循環作動薬の必要な患者、心血管系以外の重篤な疾患(悪性腫瘍を含む)
サンプルサイズ
→各群160名(パワー80%、α=5%?)
一次アウトカムは明確か?
→複合アウトカムであり明確だが、入院というソフトエンドポイントを含むので注意
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
盲検化されているか?
→PROBE法
ITT解析を行われているか?
→行われている
ベースラインはそろっているか?
→大きな偏りは無さそう
脱落率は結果を覆すほどあるか?
→追跡率82.5%
追跡期間
→平均35.2カ月
結果
【Primary endpoint】
・心血管系死亡とうっ血性心不全による入院の複合エンドポイント
アゾセミドvsフロセミド HR=0.55(95%CI:0.32-0.95) p=0.03(NNT=17)
【Secondary endpoint】
・うっ血性心不全による入院と心不全治療の変更の複合エンドポイント
アゾセミドvsフロセミド HR=0.60(95%CI:0.36-0.997) p=0.048
・総死亡
アゾセミドvsフロセミド HR=0.93(95%CI:0.47-1.85) p=0.99
【複合アウトカムの各要素ごとの結果】
・心血管死亡
アゾセミドvsフロセミド HR=0.64(95%CI:0.24-1.67) p=0.36
・うっ血性心不全による入院
アゾセミドvsフロセミド HR=0.53(95%CI:0.30-0.96) p=0.04
・心不全治療の変更
アゾセミドvsフロセミド HR=0.68(95%CI:0.26-1.80) p=0.44
感想
Primary outcomeは、アゾセミドの方でややリスクが減らせるような結果だが、複合アウトカムであるところに注意。有意差は出ているが、各要素について見てみると、心血管死亡は有意差無しで、うっ血性心不全による入院で有意差が出ているため、この複合アウトカムの結果は、ややうっ血性心不全による入院の結果に引っ張られている可能性がある。入院は、医師の判断により変わる可能性があるソフトエンドポイントである。また、PROBE法が用いられていることからも結果の解釈に注意が必要。案外、アゾセミドとフロセミドで心血管系イベントに違いは少ないのかもしれないが、他の論文も読む必要がある。
いずれにせよ、今回の患者さんが早く回復されることを願っています。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。