COPD患者にはLAMA+LABAとLABA+吸入ステロイドのどちらがいいですか?
ご訪問ありがとうございます。
また、吸入薬に戻ってまいりました。
今回は、COPD患者にLAMA(長時間作用型抗コリン薬)+LABA(長時間作用型β刺激薬)の組み合わせで維持するのと、LABA+ICS(吸入ステロイド)で維持するのとどちらがいいか検討した文献です。
参考文献 Long-acting muscarinic antagonist + long-acting beta agonist versus long-acting beta agonist + inhaled corticosteroid for COPD: A systematic review and meta-analysis
PMID:26235837
研究デザイン:システマティックレビュー&メタ分析
論文のPECO
P:COPD患者
E:LAMA+LABA
C:LABA+ICS
O:FEV1、SGRQ、TDI、有害事象、重篤な有害事象、有害事象による中断、症状悪化、肺炎、総死亡
一次アウトカムは明確か?
アウトカムが多数設定されており、偶然有意差が出ている項目が存在している可能性があるので注意(一次アウトカム不明確)
真のアウトカムか?
FEV1は代用のアウトカム、他は真のアウトカム
4つのバイアス
1、評価者バイアス
2名の評価者で評価
評価者バイアスはさほど問題なさそう
2、出版バイアス
情報元:PubMed、Web of Science、コクラン
参考文献も評価しているが英語の文献のみ
出版バイアス存在の可能性
3、元論文バイアス
質的評価はChalmer`s scaleにより評価している(0~100)
Quality scoreは32~70(中央値:55)
一般的に、これだけあれば十分なスコアだそうです・・・。でも、MAXは100なので・・・。
元論文バイアスは多少ありそう?
4、異質性バイアス
FEV1、SGRQは異質性が高く、TDIは中程度、他は異質性が低い
結果
吸入前後によるFEV1の変化
LAMA+LABAの方がLABA+ICSより72mL(95%CI:48-95mL)増加
I2=68% P<0.00001
SGRQ(COPDの疾患特異的な健康関連QOL)→数値が大きいほど障害が大きい
LAMA+LABAの方がLABA+ICSより-1.54(95%CI:-3.31-0.23)改善が大きい
I2=75%
TDI(呼吸困難感スコア)→数値が大きいほど呼吸困難感の改善(+9~-9)
LAMA+LABAの方がLABA+ICSより0.38ポイント(95%CI:0.17-0.58)改善が大きい
I2=49%
有害事象
LAMA+LABA vs LABA+ICS OR=0.90(95%CI:0.79-1.01)
I2=0% P=0.08
重篤な有害事象
LAMA+LABA vs LABA+ICS OR=0.84(95%CI:0.62-1.16)
I2=22%
有害事象による中断
LAMA+LABA vs LABA+ICS OR=0.76(95%CI:0.53-1.09)
I2=22%
症状悪化
LAMA+LABA vs LABA+ICS OR=0.77(95%CI:0.62-0.96)
I2=7% P=0.02
肺炎
LAMA+LABA vs LABA+ICS OR=0.28(95%CI:0.12-0.68)
I2=0% P=0.005
総死亡
LAMA+LABA vs LABA+ICS OR=1.00(95%CI:0.37-2.67)
I2=0%
感想
FEV1に関しては、LAMA+LABA群で意味のある改善が認められているようであるが、あくまで代用のアウトカムである。
患者のQOLスコアを表すSGRQに関しては、LABA+ICSと比較してLAMA+LABA群で1.54ポイント改善が見られているが、これは「4ポイントの差があれば、臨床上重要とされる差」のようなので、1.54ポイントの差は臨床上の意義はあまり大きくないのかなという印象。
呼吸困難感も、臨床上は大きな差ではないかなといった感じ。症状悪化や肺炎は有意な改善が見られている。そのNNTを計算すると、症状悪化は31名、肺炎は84名である。この点からはLAMA+LABAの方がLABA+ICSに比べて優れていると結論されているが、元論文の質があまり高くは無さそうな点、また、異質性も大きい点で結果は割り引いて考えた方が良さそうである。
この研究に限っては、総死亡に違いは無いと結論されているが、特にこの辺は今回の論文だけではなく、他の文献も読んで慎重に評価すべきかなと思う。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。