COPD、喘息患者に対するβアゴニスト使用は心血管イベントに影響を与えますか?

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今回は、前回の居酒屋抄読会取り上げた論文の関連論文です。

 

前回の論文(PMID:26378450)では、COPD患者へのLABA使用は心血管有害事象を増やさないというような内容のものでしたが、今回は増やすといった内容の論文です。

 

参考文献 Cardiovascular effects of beta-agonists in patients with asthma and COPD: a meta-analysis

リンク   http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=15189956

 

PMID:15189956

 

研究デザイン:メタ分析

 

論文のPECO

P:閉塞性気道疾患患者(喘息、COPD)

E:βアゴニスト使用

C:プラセボ

O:短期使用による心拍数・カリウム濃度

長期使用による心血管有害事象

 ※心血管有害事象→洞・心室頻脈、失神、心房細動、うっ血性心不全心筋梗塞、心停止、突然死

 

一次アウトカムは明確か?

→明確

 

真のアウトカムか?

→心拍数、カリウム濃度は代用のアウトカム。心血管有害事象は真のアウトカム

 

4つのバイアス

1、評価者バイアス

2名の評価者が独立して評価

 

評価者バイアスはさほど問題なさそう

 

2、出版バイアス

情報元:MEDLINE、EMBASE、CINAHL

 

言語制限なしに検索。著者に連絡を取ったかは不明。

 

出版バイアスはさほど問題なさそうだが不明点もある

 

 

3、元論文バイアス

2名の評価者が独立して元論文の研究の質を評価(A~C)

短期使用の論文:質的評価はBランク 長期使用の論文:質的評価はAランク

 

元論文バイアスもさほど問題なさそう

 

4、異質性バイアス

詳しい記載はないがThe tests for statistical heterogeneity were not significant.と記述があり、そこまで問題ない?

 

追跡期間

平均4.7カ月(3日~1年)

 

結果

心拍数

E群で9.12回/min(95%CI:5.32-12.92回)増加

 

カリウム濃度

E群で0.36mmol/L(95%CI:0.18-0.54mmol/L)低下

 

心血管有害事象

RR=2.54 (95%CI:1.59~4.05) 

 

洞頻拍

RR=3.06 (95%CI:1.70~5.50) 

 

その他の主要心血管イベントの合計

RR=1.61 (95%CI:0.76~3.42)

 

感想

 アブストからでは元論文の質的評価など、詳細が分からない点もあるが、βアゴニスト使用と心血管イベントに関しても検討されている重要な報告と感じた。

 代用のアウトカムである心拍数、カリウム濃度はさておき、心血管有害事象は増加傾向にあるという結果であった。ところが、内容をしっかり読んでみると、有意な増加を認めたものは洞頻脈のみで、他の有害事象は有意差無しとなっている。ただ、洞頻脈以外の心血管有害事象もRR=1.61(95%CI:0.76~3.42)とやや増加傾向にある可能性もあるため軽視は出来ない。

 有害事象を検討しているという点では、前回取り上げた文献と合わせても、まだLABAが心血管有害事象に影響は少ないという自信は持てない。今後も継続して関連論文を読んで検討していく必要がある。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。