妊婦にメトホルミンを使うと、インスリンと比べてどの程度影響がありますか?

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今回は、妊婦に対するメトホルミンとインスリンの比較です。

 

メトホルミンは、そもそも国内では妊婦に禁忌ではありますが、気になる文献(アブストのみですが)を見つけたので読んでみました。

 

参考文献 Short- and long-term outcomes of metformin compared with insulin alone in pregnancy: a systematic review and meta-analysis.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27150509

 

PMID:27150509

 

研究デザイン:システマティックレビュー&メタ分析

 

論文のPECO

P:妊娠糖尿病、もしくは2型糖尿病の妊婦2165名

E:メトホルミン服用

C:インスリン使用

O:新生児低血糖、身長・体重が90パーセンタイル以上の新生児の割合、妊娠誘発性高血圧、妊婦の体重増加、早産、低出生体重児周産期死亡率、帝王切開

 

一次アウトカムは明確か?

→アウトカムが複数あり、どれが一次アウトカムか不明確

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

4つのバイアス

1、評価者バイアス

2名の評価者が選定・評価(アブストに独立してという記載はないが、おそらく独立して)

 

評価者バイアスはさほど問題なさそう

 

2、出版バイアス

情報元:MEDLINE, EMBASE, BIOSIS, Cochrane Database

 

アブストラクトのみでは出版バイアスの評価できず

 

3、元論文バイアス

・8つのランダム化比較試験が組み入れられている。

・質的評価は行われているようだが、アブストに詳細の記述なし

 

元論文バイアス不明

 

4、異質性バイアス

アブストに記載なし

 

異質性バイアス不明

 

結果

新生児低血糖

RR0.63 (95%CI:0.45~0.87) 

 

身長・体重ともに90パーセンタイル以上(在胎日数における出生児の体格)の新生児

RR0.80 (95%CI:0.64~0.99) 

 

妊娠誘発性高血圧

RR0.56 (95%CI:0.37~0.85) 

 

妊娠中の体重増加

-2.07kg(95%CI:-2.88~―1.27kg)

 

早産

RR1.18 (95%CI:0.67~2.07) 

 

低出生体重児

RR1.20 (95%CI:0.67~2.14) 

 

周産期死亡率

RR0.82 (95%CI:0.17~3.92) 

 

帝王切開

RR0.97 (95%CI:0.80~1.19) 

 

感想

 インスリンと比較して、メトホルミン治療でリスクが上昇するといったものは無かった。研究に組み入れられた人数が少なく、そもそもアウトカム発生件数もそんなに多くないため差が出にくかった可能性もあるのだろうか?

 いずれにせよ、国内では妊婦・妊娠している可能性のある婦人には禁忌であるので、あえて服用することはそうそう無いであろうが。禁忌となっている理由は、ラットを用いた実験で催奇形性が起こった例があるためだそうだ。

 詳細に関しても、アブストには記載のない点が多い。この結果だけ見ても、あくまで動物実験ベースだが、催奇形性の可能性が報告されている以上、妊婦にあえてメトホルミンを服用させるべきではないかなと思った。そもそも国内では妊婦に禁忌であるし・・・。

 

今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。