COPD患者へのICS使用で肺炎リスクは増えますか?
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今回は、ICS(吸入ステロイド薬)を使用した場合、肺炎の発症リスクを検討したコホート研究についてです。
参考文献 Inhaled Corticosteroids Increase the Risk of Pneumonia in Patients With Chronic Obstructive Pulmonary Disease:A Nationwide Cohort Study
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26496284
PMID 26496284
研究デザイン:コホート研究
論文のPECO
P:過去1年以内に急性増悪を経験したCOPD患者
E:ICS使用時
C:ICS使用前及び中断後
O:肺炎の発症
※COPDコホート:1年以内に2回以上急性増悪を経験、もしくは入院を要する急性増悪を経験したCOPD患者が対象
※ICSコホート:COPDコホートに含まれた患者のうち、30日以上の中断無く360日以上ICSを使用している患者が対象
研究対象集団の代表性
台湾の国民健康保険データベースが用いられており、大きな問題は無いと思われる
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
調節した交絡因子は何か?マッチングされているか?
→不明
追跡期間
5.6±3.0年
結果
肺炎の進行
ステロイドの使用 HR=1.06(95%CI:1.02-1.11)p=0.005
経口ステロイド服用 HR=1.21(95%CI:1.18-1.24)p<0.001
男性 HR=1.17(95%CI:1.08-1.28)p<0.001
糖尿病 HR=1.36(95%CI:1.25-1.48)p<0.001
悪性腫瘍 HR=1.46(95%CI:1.25-1.71)p<0.001
低収入 HR=1.42(95%CI:1.12-1.78)p<0.001
ベースラインの肺炎 HR=1.87(95%CI:1.70-2.06)p<0.001
(ICSコホート)
肺炎の発症
ICS使用前 0.10/人年
ICS使用中 0.21/人年
ICS中止後 0.22/人年
COPDの急性増悪
ICS使用前 1.51/人年
ICS使用中 1.22/人年
ICS中止後 0.98/人年
感想
マッチングがされているのかよく分からず・・・。ICSコホートに関しては、自己コントロールみたいになっているのだろうか?ICSが肺炎の発症に対してどの程度の影響か、この研究だけでは何とも言いにくいところではあるが、少なくともICS使用で多少は肺炎リスクに影響する可能性はあるのかもしれない。
COPDの急性増悪に関しては、ICS使用により抑制出来る可能性も示唆されており、リスクとベネフィットのバランスを考える必要がある。ただ、COPDに対してICSはそこまで効果が期待できないと言われている。
あくまでコホート研究のデータの1つからの仮説ではあるが、もしかすると糖尿病などを併発している患者では、ICS使用で肺炎リスクがより上昇するかもしれない。この辺りは、他にも論文があるかもしれないので探してみる。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。