補中益気湯で癌関連疲労は抑えられますか?
ご訪問ありがとうございます。
今回は、つい先ほど配信されたJJCLIPで取り上げられた論文です。
補中益気湯で癌関連疲労は抑えられるのか?むむむ、VASスケールとかは解釈難しいですが、復習の意味も込めてまとめておきます。
参考文献 Bojungikki-tang for cancer-related fatigue: a pilot randomized clinical trial.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=21059621
PMID:21059621
ランダム化されているか?
→されている
研究デザイン: ランダム化比較試験、非盲険化
論文のPECO
P:18歳以上のがん関連疲労がある患者40名(疲労度のVASで40/100mm以上)
E:補中益気湯服用(experimental group)
C:何も介入しない(waiting group)→今後、治療を行うがそれまで待機している
O:癌関連疲労の度合い(VAS-F)スコアが小さいほど疲労度は小さい
※がんの割合 乳がん:27.5%、胃がん:12.5%、大腸がん:12.5%、肺がん:12.5%、残りのがん:35%
※除外基準
ヘモグロビンレベル<9g/dL、血小板<50000/μL、好中球<1000/μLの貧血、甲状腺刺激ホルモン・遊離T4の異常がある甲状腺障害、ALT、AST、BUN、クレアチニンレベルの異常、血清タンパク低値、重篤な不眠症、うつ病
サンプルサイズ
40名(パワー80%、α=5%) ※15%が脱落する事を見越して
一次アウトカムは明確か?
→明確(もし、疲労度や倦怠感をもっと明確に現す方法があるのであれば、不明確と言えるかも)
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
盲検化されているか?
→されていない(飲むか飲まないかで、分けている)
ITT解析を行われているか?
→されている
脱落率は結果を覆すほどあるか?
追跡率=16/40×100=90% 大きく影響する脱落ではなさそう
結果
VAS-F(0~10 小さいほど疲労度は小さい)
E群 Week0:6.5±1.4 Week2:5.3±1.9 差:-1.1±2.1
C群 Week0:6.1±1.4 Week2:6.1±1.3 差:0.1±0.9
p=0.025
感想
パイロットスタディーという、小規模な研究であるにもかかわらず疲労度のVAS(VAS-F)にはE群とC群の間に有意差が付いている。ある程度のプラセボ効果的な側面もあるのかもしれないが、全体で見ると10ポイント満点のうち1ポイント程度の改善という結果。これが、臨床上どの程度意味を持つか?というところは難しいところである。
また、漢方を追加で1日3回服用しなければならないことがQOLに及ぼす影響についても知りたいと思う。
もしかすると、少人数で差が出たという結果から、劇的に改善した人も何人かいるかもしれないので、それに期待という意味で抗がん剤治療を受けている人に使ってみるのもありかなと思った。積極的には勧めないかもしれないが、疲労度の感じ方は個人差あるだろうし、2週間で効果が出てくるかもしれないので、2週間だけ試してみる、それでダメならやめるというのも1つの手かなと感じた。
今回のJJCLIP配信で、倫理的に全員治療を受けなければならない研究では、先に治療を受ける群(治療群)と、後から治療を受ける群(治療待機群)に分けて、治療群と治療待機群で結果を比較するという研究デザインがあるというのを知りました。
そして、漢方の研究はパイロットスタディー止まりのものも多いらしいという事も勉強になりました。
JJCLIP、いつも勉強になっています。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。