α遮断薬の使用で股関節・大腿骨骨折のリスクは増えますか?

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今回は、前回の記事に関連してα遮断薬使用と股間節・大腿骨骨折の関連について検討した症例対象研究の論文です。

 

やや古い文献ですが、重要な報告だと思ったので読んでみることにしました。

 

参考文献  Use of a-blockers and the risk of hip/femur fractures

リンク   https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/14641795

 

PMID:14641795

 

研究デザイン:一般人口対象症例対象研究

 

論文のPECO

P:40歳以上で初めて股関節・大腿骨骨折の診断を受けた男性4571名と、性別・年齢・医療機関の受診でマッチした対照群4571名

E:α遮断薬使用

C:α遮断薬使用無し

O:股関節・大腿骨骨折

 

使用されたα遮断薬:プラゾシン、ドキサゾシン、インドラミン、テラゾシン、アルフゾシン、タムスロシン

 

研究対象集団の代表性

→問題無し

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

マッチングされているか?

→症例群と対照群はマッチングされている

 

調節した交絡因子は何か?

NSAID抗精神病薬、グルココルチコイド、気管支拡張剤、心不全、糖尿病、骨粗鬆症、前立腺癌および前立腺肥大症/下部尿路症状

 

追跡期間

→具体的なものは無いが、使用中の事象発生と、過去の使用による事象の発生に分けて検討されている

 

結果

・α遮断薬の使用による股関節・大腿骨骨折  

全期間  OR=1.5(95%CI:1.1-2.1)

 

現在  OR=1.9(95%CI:1.1-3.4)

 

過去  OR=1.3(95%CI:0.9-2.0)

 

・フィナステリド使用による股関節・大腿骨骨折 

全期間  OR=1.2(95%CI:0.6-2.4)

 

現在  OR=1.4(95%CI:0.6-3.6)

 

過去  OR=1.1(95%CI:0.4-3.1)

 

・α遮断薬の服用期間ごとの股関節・大腿骨骨折

初めての処方  OR=5.6(95%CI:1.0-31.7)

 

2回目以降の処方  OR=1.6(95%CI:0.9-5.5)

 

~30日間の服用  OR=4.1(95%CI:0.7-23.9)

 

~60日間の服用  OR=3.4(95%CI:0.8-13.7)

 

~90日間の服用  OR=2.4(95%CI:0.8-7.1)

 

α遮断薬の種類による股関節・大腿骨骨折

選択的α遮断薬(タムスロシン、アルフゾシン)  

OR=1.9(95%CI:1.1-3.3)

 

非選択的α遮断薬(プラゾシン、ドキサゾシン、インドラミン、テラゾシン)  OR=2.6(95%CI:0.3-20.0)

 

感想

 使用されたα遮断薬の割合が不明で、馴染みのないインドラミンやアルフゾシンも含まれているが、やはりα遮断薬の使用で股関節や大腿骨骨折リスクが上昇する可能性が示唆されている。

 交絡因子として、他に眠剤としてのベンゾジアゼピン系薬の服用や日常生活動作(ADL)なども含めてもいいのではないかと感じた。

 前回取り上げた、前立腺肥大症に用いる前立腺選択的α遮断薬に関連して、タムスロシン・アルフゾシンでやや股関節・大腿骨骨折は増加傾向にある。

 そして、使用初期の方が骨折のオッズは高い傾向にあるため、初回処方時など特にしっかり指導する必要があるし、個人病院など処方日数が短い場合などは小まめに患者様にお話を伺える機会があるため、定期的にふらつきなどの確認を行い、転倒や骨折防止のためのフォローアップが必要と改めて感じた。

 

この論文を読むうえで、今更ながらにindex dateとは、観察研究においてアウトカムが発生した日のことであると解釈して大きな間違いはないと教えて頂きました。これ、意味わからないと論文の解釈間違う可能性あるのでしっかり覚えておきます。

 

 今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。