ラニナミビルのインフルエンザ予防効果はどの程度?

ご訪問ありがとうございます。

 

昨日に引き続きインフルエンザ関連という事で。

 

今回は、ラニナミビルのインフルエンザ予防効果についてのプラセボ比較RCTです。

 

参考文献 Laninamivir octanoate for post-exposure prophylaxis of influenza in household contacts: a randomized double blind placebo controlled trial

リンク     https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23732307

 

PMID:23732307

 

ランダム化されているか?

→されている

 

研究デザイン:多施設共同(日本) プラセボ比較 ランダム化比較試験

 

論文のPECO

P:自身はインフルエンザ感染していないが、世帯員(指標患者)にインフルエンザ感染者がおり48時間以内に接触した10歳以上の者

E:ラニナミビル20mg 1日1回×2日(LO-2)、1日1回×3日(LO-3)

C:プラセボ

O:(Primary) 10日以内に臨床的インフルエンザを発症した患者割合

 (Secondary)症候性インフルエンザ、無症候性インフルエンザ、インフルエンザ感染

 

 ※除外基準

家族に指標患者以外にも感染者がいる、インフルエンザワクチン接種、重度の腎障害、ノイラミニダーゼ阻害剤への過敏症、コルチコステロイド・免疫抑制剤による治療、4週間以内のノイラミニダーゼ阻害剤使用、妊婦、授乳婦、試験期間に妊娠を希望している者

 

サンプルサイズ

→各群470名(パワー80%、α=5%)

 

一次アウトカムは明確か?

→明確

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

盲検化されているか?

→されている

 

ITT解析を行われているか?

→full analysis set (FAS)が用いられている

 

脱落率は結果を覆すほどあるか?

追跡率=97.3%

 

結果

臨床的インフルエンザ:実験室で確認されたインフルエンザの存在、少なくとも37.5℃の腋窩の温度、少なくとも2つのインフルエンザの症状

 

症候性インフルエンザ:少なくとも37.5℃の腋窩の温度または少なくとも1つのインフルエンザの症状を伴う検査室で確認されたインフルエンザ

 

無症候性インフルエンザ:37.5℃未満の腋窩の温度を伴い、インフルエンザの症状を伴わずに実験室で確認されたインフルエンザ

 

インフルエンザ感染:37.5℃以上の腋窩の温度やインフルエンザの症状の有無に関わらず、実験室で確認されたインフルエンザ

 

臨床的インフルエンザ発症

プラセボ:81/478(16.9%)

LO-2:19/487(3.9%) RRR=77.0(95%CI:62.7-85.8) p<0.001 NNT=8

LO-3:18/486(3.7%) RRR=78.1 (95%CI:64.1-86.7)  p<0.001 NNT=8

 

※RRR=(1-LO-2 or LO-3/プラセボ)×100

 

症候性インフルエンザ発症

プラセボ:100/478(20.9%)

LO-2:33/487(6.8%) RRR=67.6(95%CI:53.0-77.7) p<0.001

LO-3:32/486(6.6%) RRR=68.5 (95%CI:54.1-78.4)  p<0.001

 

無症候性インフルエンザ発症

プラセボ:22/478(4.6%)

LO-2:17/487(3.5%) RRR=24.2(95%CI:-53.0-59.2) p=0.41

LO-3:18/486(3.7%) RRR=19.5 (95%CI:-48.1-56.3)  p=0.52

 

インフルエンザ感染

プラセボ:122/478(25.5%)

LO-2:50/487(10.3%) RRR=59.8(95%CI:45.5-70.3) p<0.001

LO-3:50/486(10.3%) RRR=59.7 (95%CI:45.4-70.3)  p<0.001

 

感想

 ラニナミビルの吸入により、臨床的インフルエンザ発症はプラセボと比較しておよそ8割抑えられるという結果。さらに、そのNNTは8名という事なので予防効果はなかなか大きいのではないかと思われる。思っていたよりもNNTは小さい数字だと感じた。

 また、1日1回×2日間と1日1回×3日間ではほとんど予防効果に差が無い。ラニナミビルの添付文書上の予防に用いる用法・用量は以下の通りとなっている。

 

成人、または10歳以上の小児ラニナミビルオクタン酸エステルとして40mgを単回吸入投与する。また、20mgを1 日1 回、2 日間吸入投与することもできる。

10歳未満の小児:10歳未満の場合、ラニナミビルオクタン酸エステルとして20mgを単回吸入投与する。

 

 このデータだけではないのかもしれないが、予防的な用法ではラニナミビルの吸入が20mg×2日間で良いのもうなずけるかなと感じた。また、国内では10歳未満の小児に対して20mg×2日間、3日間の用法は無いため、今回の試験には10歳未満は含まれていない。インフルエンザワクチン接種患者も除外されている点も注意が必要。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。