小児のインフルエンザには、オセルタミビルとラニナミビルで違いがありますか?
ご訪問ありがとうございます。
引き続きインフルエンザ関連の論文になります。
今回は、オセルタミビル vs ラニナミビルの効果を比較した論文になります。
参考文献 Long-acting neuraminidase inhibitor laninamivir octanoate (CS-8958) versus oseltamivir as treatment for children with influenza virus infection.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20368393
PMID:20368393
研究デザイン:二重盲検 ランダム化比較試験
論文のPECO
P:熱性インフルエンザ症状を呈して36時間以内の9歳以下の小児
E:40mgラニナミビル単回吸入(LOG40) 61名
20mgラニナミビル単回吸入(LOG20) 61名
C:オセルタミビル2mg/kg 1日2回×5日間内服(OG) 62名
O:(Primary) インフルエンザ症状軽減までの時間
※治療開始から、最初に持続して21.5時間以上、鼻症状や咳症状が「無し」または「軽度」になり、熱も37.4℃以下になるまでの時間
(Secondary)正常体温に戻るまでの時間、インフルエンザウイルスをまき散らした患者割合
※除外基準
→1週間以内にバクテリアや非インフルエンザウイルス感染の疑い、1週間以内のインフルエンザ様症状、慢性呼吸器疾患、心血管疾患、中枢神経障害、腎機能障害、代謝障害、免疫機能不全、その他重篤な症状、インフルエンザウイルス感染中に異常行動を起こしたことが有る者、4週間以内にアマンタジン・ザナミビル・オセルタミビルによる治療をした者
ランダム化されているか?
→されている
一次アウトカムは明確か?
→明確
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
盲検化されているか?
→されている
各グループのベースラインは揃っているか?
ラニナミビルグループ(40-mg group:55.9%、20-mg group:49.2%)に比べ、オセルタミビルグループ(35.5%)はワクチン接種割合が少ない
ITT解析を行われているか?
→FAS解析
サンプルサイズ
→各群60名
脱落率は結果を覆すほどあるか?
追跡率=98.9%
結果
インフルエンザ症状軽減までの時間
LOG40:55.4h(95%CI:46.3~81.3) LOG20:56.4h(95%CI:43.7~69.2)
OG:87.3h(95%CI:67.9~129.7)
インフルエンザ症状軽減までの時間の差(中央値)
LOG40 vs OG -31.9h (95%CI:43.4~0.5) p=0.059
LOG20 vs OG -31.0h (95%CI:-50.3~-5.5) p=0.009
LOG40 vs LOG20 -1.0h (95%CI:-9.0~22.4) p=0.372
有害事象
主な有害事象は消化器症状。重篤な有害事象は見られなかった。
感想
ベースラインとして、インフルエンザワクチン接種はラニナミビル群でやや多い所は注意が必要。研究にも第一三共が関与しているので、多少はラニナミビルに優勢となるバイアスが潜んでいるかもしれない。Primary outcomeの定義としても、症状軽減が「継続して21.5時間」などとなっており、線引きに若干の作為的なものを感じる。
結果としては、ややラニナミビルの方が症状軽減までの時間は短くなりそうな傾向にある。ラニナミビル40mg(LOG40)はオセルタミビル(OG)と比較して有意差は出ていないが、ラニナミビル20mg(LOG20)はOGと比較して有意に症状改善までの時間を1日ほど短縮するという結果。ところが、LOG40とLOG20では症状軽減までの時間に差は無いということで、あえて40mgを吸入するメリットは大きくないのかなといった感想。
ラニナミビルの添付文書上の用法・用量は10歳未満の場合、20mgを単回吸入となっているが、それを裏付ける結果なのかなと感じた。
小児に関しては特にアドヒアランスも重要となるので、内服を5日間継続するのと、吸入をするのとどちらが向いているか見極めるのも重要と思われる。実際の現場で、ラニナミビル吸入を上手くできないというパターンも時々遭遇するので・・・。
ラニナミビルに関する論文は思っているほど多くないが、この結果だけを鵜呑みにするわけにもいかないので、他の論文も読んでおく必要がある。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。