過活動膀胱に対するオキシブチニン貼付剤 vs プロピベリン vs プラセボ
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昨日、オキシブチニン貼付剤の効果がなかなか実感できないとおっしゃる患者さんがおられたので、オキシブチニン貼付剤の効果を検討したRCTを読んでみました。
プラセボとの比較は優越性試験、プロピベリン内服との比較は非劣勢試験になっています。
参考文献 Efficacy and safety of once-daily oxybutynin patch versus placebo and propiverine in Japanese patients with overactive bladder: A randomized double-blind trial.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24350662
PMID:24350662
研究デザイン:ランダム化比較試験
論文のPECO
P:20歳以上で24週間以上過活動膀胱症状が出ている患者のうち、1日8回以上の排尿があり、1日1回以上の切迫性尿失禁エピソードがあるもの
E:オキシブチニン貼付剤576名
C:①プラセボ381名→優越勢試験
②プロピベリン20mg 1日1回(573名)→非劣勢試験(非劣勢マージン0.37)
O:(Primary) 12週後の平均排尿回数の変化
(Secondary)12週後の緊急を要するエピソード回数の変化、12週後の切迫性尿失禁回数の変化、12週後の尿失禁回数の変化、夜間排尿回数の変化、排尿ごとの平均空隙容積
※除外基準
腹圧性尿失禁、過活動膀胱症状と鑑別の難しい症状を呈する疾患、尿路機能に影響を及ぼす状態、下部尿路閉塞による排尿障害・尿閉、残尿量>100mL、重度の肝・腎機能障害、悪性腫瘍、研究対象の貼付剤使用で皮膚症状悪化の恐れがある者、貼付剤適用に影響のある広範囲の入れ墨・母斑、頻繁な日焼け、妊婦、授乳婦、妊娠の可能性のある者・試験期間に妊娠を希望する者
一次アウトカムは明確か?
→明確
真のアウトカムか?
→トイレの回数が多いと、睡眠障害や行動の制限など、日常生活に影響が及ぶことを考えると、真のアウトカムと考えられる
ランダム化されているか?
→されている
盲検化されているか?
→されている(ダブルダミー法を用いている)
ITT解析を行われているか?
→FASを使用
追跡期間
→12週間
サンプルサイズ
1450名(パワー80%、α=5%)
脱落率は結果を覆すほどあるか?
→追跡率=90.4%
結果
12週後の平均排尿回数のベースラインからの変化
オキシブチニン貼付剤 vs プラセボ(優越勢試験)
-1.89±2.04回 vs −1.44±2.23回 p=0.0015
オキシブチニン貼付剤 vs プロピベリン(非劣勢試験)
-0.04回(95%CI:-0.28~0.21)
95%CI上限が非劣勢マージン0.37より小さいので非劣勢が示された
緊急を要するエピソード回数の変化
オキシブチニン貼付剤 vs プラセボ(優越勢試験)
-1.92±2.21回 vs −1.51±2.33回 p=0.0069
オキシブチニン貼付剤 vs プロピベリン(非劣勢試験)
0.02回(95%CI:-0.26~0.29)
切迫性尿失禁回数の変化
オキシブチニン貼付剤 vs プラセボ(優越勢試験)
-1.02±1.24回 vs −0.92±1.49回 p=0.3481
オキシブチニン貼付剤 vs プロピベリン(非劣勢試験)
0.02回(95%CI:-0.16~0.19)
尿失禁回数の変化
オキシブチニン貼付剤 vs プラセボ(優越勢試験)
-1.10±1.40回 vs −0.95±1.57回 p=0.1966
オキシブチニン貼付剤 vs プロピベリン(非劣勢試験)
-0.03回(95%CI:-0.23~0.17)
夜間排尿回数の変化
オキシブチニン貼付剤 vs プラセボ(優越勢試験)
-0.52±0.79回 vs −0.42±0.83回 p=0.0694
オキシブチニン貼付剤 vs プロピベリン(非劣勢試験)
-0.03回(95%CI:-0.13~0.07)
有害事象
|
オキシブチニン群 n=572 |
プロピベリン群 n=576 |
プラセボ群 n=381 |
口渇 |
37名(6.5%) |
76名(13.2%) |
7名(1.8%) |
便秘 |
4名(0.7%) |
29名(5.0%) |
4名(1.0%) |
適用部皮膚炎 |
182名(31.8%) |
34名(5.9%) |
20名(5.2%) |
適用部紅斑 |
32名(5.6%) |
7名(1.2%) |
4名(1.0%) |
適用部の痒み |
18名(3.2%) |
19名(3.3%) |
9名(2.4%) |
感想
この結果からオキシブチニン貼付剤使用で劇的な排尿回数の低下というわけではないかなという感想。プラセボとの差は非常に小さいが、実際の薬剤の効果は、「プラセボ効果+薬物そのものの効果」なので、1日にして2回弱ほど排尿回数を減らす事が出来るかもしれない。それでも、ベースラインの排尿回数は平均11回ほどなので、2回減ってもまだ回数は多いかなといった印象。
あくまでもSecondary outcomeであるが、夜間排尿回数について見てみると、ベースラインで1.3回程度だが、オキシブチニン貼付剤を用いると夜間排尿が0になる患者が多く現れるかもしれない。また、切迫性尿失禁などのSecondary outcomeも0になる患者が多少なりとも現れるかもしれない。
オキシブチニン貼付剤と、プロピベリンの比較では非劣勢が示されている。オキシブチニン貼付剤では、プロピベリン服用より抗コリン薬で問題となる口渇・便秘の頻度は低い。しかし、何といっても皮膚症状の頻度が高い。やはり、貼付部位のかぶれには注意を促したいところである。
実際、薬局でオキシブチニン貼付剤が処方されている患者様でも、かぶれの為に中止となったり、対策としてベタメタゾン・ゲンタマイシン軟膏が併用されているというパターンが多く見受けられます。感覚として、処方患者の半数はどちらかに該当している気もします。排尿回数の多さを、そこまで生活する上で問題に感じていない肌の弱い患者対しては、なかなか積極的に使いにくいのかなという感想でした。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。