ACS後の患者さんは、スタチンにエゼチミブを併用した方がいいですか?

ご訪問ありがとうございます。

 

今回は、以前から気になっていたエゼチミブの論文を1本読んでみました。

 

参考文献 Ezetimibe Added to Statin Therapy after Acute Coronary Syndromes.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=26039521

 

PMID:26039521

 

研究デザイン:ランダム化、二重盲検

 

ランダム化されているか?

→されている

※過去の脂質降下療法、ACSのタイプなどで層別化もされている

 

論文のPECO

P:ACSのため入院して10日以内の50歳以上の患者のうち、脂質降下療法を受けていれば血清LDL-Cが50~100mg/dL、受けていなければ50~125mg/dLの者

E:シンバスタチン40mgとエゼチミブ10mg併用

C:シンバスタチン40mgとプラセボ併用

O:(Primary) 心血管因性死亡、主要冠イベント(非致死性心筋梗塞、再入院を要する狭心症、ランダム化後少なくとも30日以降の血行再建術)、非致死性脳卒中の複合アウトカム

 

除外基準

冠動脈バイパス術を予定している患者、クレアチンリアランス<30mL/min、活動性肝疾患、シンバスタチン40mgより強力なスタチン使用

 

一次アウトカムは明確か?

→入院や血行再建術はソフトエンドポイントと考えられるの。また、複数のアウトカムからなる複合エンドポイントなので、結果の解釈には注意が必要

 

真のアウトカムか?

→日常生活に影響を及ぼす事象なので、真のアウトカムといえる

 

盲検化されているか?

→盲検化されている

 

ITT解析を行われているか?

→ITT解析が行われている

 

ベースラインの患者背景のバラツキは無いか?

→特に大きな問題は無いと思われる

 

サンプルサイズ

→イベント発生が5250件(パワー90%、α=5%)

 

追跡期間

→中央値6年

 

脱落率は結果を覆すほどあるか?

→追跡率=99.5%

 

結果

LDL-Cの変化

ベースライン E群:93.8mg/dL  C群:93.8mg/dL

治療開始1年後 E群:53.2mg/dL  C群:69.9mg/dL

 

Primary outcome

E群:32.7% C群:34.7% HR=0.936(95%CI:0.89‐0.99) p=0.016

 

個々のアウトカム

総死亡

E群:15.4% C群:15.3% HR=0.99(95%CI:0.91‐1.07) p=0.78

 

心血管因性死亡

E群:6.9% C群:6.8% HR=1.00(95%CI:0.89‐1.09) p=0.50

 

非致死性心筋梗塞

E群:12.8% C群:14.4% HR=0.87(95%CI:0.80‐0.95) p=0.002

 

心血管因性死亡

E群:6.9% C群:6.8% HR=1.00(95%CI:0.89‐1.09) p=0.78

 

虚血性脳卒中

E群:3.4% C群:4.1% HR=0.79(95%CI:0.67‐0.94) p=0.008

 

出血性脳卒中

E群:0.8% C群:0.6% HR=1.38(95%CI:0.93‐2.04) p=0.11

 

ランダム化後少なくとも30日以降の血行再建術

E群:24.2% C群:25.6% HR=0.96(95%CI:0.90‐1.02) p=0.18

 

不安定狭心症による入院

E群:2.1% C群:1.9% HR=1.06(95%CI:0.85‐1.33) p=0.62

 

有害事象

→両群で大きな違いは無し

 

感想

 Primary outcomeは、有意差こそ出ているが、この差が臨床上意味のある差ではないかなという印象である。個々のアウトカムについて見ていくと、有意差が見られているのは非致死性心筋梗塞と、虚血性脳卒中のみである。

 ガイドライン変更などにより、サンプルサイズなどを含め、プロトコルが5回変更された研究のようなので、やや注意が必要かもしれない。

 ランダム化は行われているが、治療開始後のLDL-C値により割り付けが見破られる可能性があり、複合アウトカムにソフトエンドポイントの入院などが含まれている点も注意が必要。

 大規模な症例数と、長期の追跡期間でかなり研究費がかかっているのでは無いかと思うが、その労力からすると少し残念な結果かなと感じた。

 

今回も、最後までお付き合い頂きありがとうございました。