シロスタゾールをドネペジルに併用すると認知機能低下の抑制効果は高まりますか?

ご訪問ありがとうございます。

 

先日の往診同行の際に、ある施設入居者様が継続して服用されていたアスピリン腸溶錠を、シロスタゾール錠に変更するという事例がありました。

 

そのドクターが、帰り際に「シロスタゾールには、アルツハイマーを防ぐ効果があるからね~。そんな論文も出てるし、認知が進まないようにアスピリン腸溶錠から変えたんだよ」と、熱弁されました。

 

その情報、どこかで聞いたこともある(どなたかのブログで読んだ事があるような)気がすると思いながら、また後で論文探して読んでみようという事で今回の論文にたどり着きました。

 

参考文献 Cilostazol add-on therapy in patients with mild dementia receiving donepezil: a retrospective study.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24586841

 

PMID:24586841

 

研究デザイン:後ろ向き観察研究

 

論文のPECO

P:1年以上ドネペジルを服用しており、MMSEスコア<27の認知症患者

E:ドネペジルにシロスタゾール併用

C:シロスタゾール併用無し

O:MMSEの年間変化量

 

研究対象集団の代表性

1996年9月1日~2012年6月30日までに得られた、洲本伊月病院(兵庫県)の電子カルテからデータを収集→1つの病院の診療情報であり、患者特性によっては一般集団と性質が異なる可能性あり

 

真のアウトカムか?

→MMSEの年間変化量がアウトカムとして設定されており、代用のアウトカムと思われる

 

調節した交絡因子は何か?

年齢、性別、血管危険因子(高血圧、糖尿病、脂質異常症)、服用薬(Ca拮抗薬、ACE-I、利尿剤、α/β遮断薬)

 

結果

MMSEの1年当たりの変化量

中程度/重度認知症

ベースラインのMMSE E群:15.9±4.2  C群:16.5±4.8  

MMSE変化量  E群:-0.7±2.8  C群:-0.9±2.6  p=0.72

 

軽度認知症

ベースラインのMMSE E群:24.0±1.3  C群:24.2±1.5  

MMSE変化量  E群:-0.5±1.6  C群:-2.2±4.1  p=0.02

 

感想

 中等度/重度認知症患者においては、ドネペジルにシロスタゾールを併用するか否かで、MMSEスコアの変化量に差は無いという結果。軽度認知症患者においては、シロスタゾール上乗せの有無によるMMSEスコア変化に統計学的有意差こそ出ているが、その絶対差としては1.7ポイント(MMSEは30点満点)の違いであり、臨床上大きな差とは言い難いといった印象。

 認知機能低下の予防に対して、あえて積極的にシロスタゾールを上乗せする必要は無いのかなと感じた。シロスタゾールは、副作用として頭痛が多いと言われているので、そちらに関しても今後調べてみたい。

 

今回も、最後までお付き合い頂きありがとうございました。