テルミサルタンは脳卒中の再発予防にどれぐらい有効ですか?

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そして、遅ばせながら、あけましておめでとうございます。

本年も定期的な更新を心がけていきますので、皆さま宜しくお願い致します。

 

とういことで、前回の更新から少し間があいてしまいましたが、2017年の一発目になります。

 

今回は、脳卒中を起こした患者へのテルミサルタン投与で脳卒中の再発は防ぐことが出来るか?について検討した研究です。

 

参考文献 Telmisartan to prevent recurrent stroke and cardiovascular events.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=18753639

 

PMID:18753639

 

研究デザインプラセボ対照 ランダム化比較試験

 

論文のPECO

P:直近(ランダム割り付け前90日以内)に虚血性脳卒中を起こした患者20332名

E:テルミサルタン80mg/day→10,146名

C:プラセボ→10,186名

O:(Primary) 脳卒中の再発

 (Secondary)主要心血管イベント(心血管因性死亡、脳卒中再発、心筋梗塞、新規の心不全心不全の増悪)、新規糖尿病発症

 

 

除外基準

原発性出血性脳卒中脳卒中後の重度障害、試験対象抗血小板薬が禁忌の患者

 

※ちなみに本研究は、アセチルサリチル酸+ジピリダモールvsクロピドグレルと、テルミサルタンvsプラセボの比較を2×2のデザインを用いて検討している

 

ランダム化されているか?

→されている

 

一次アウトカムは明確か?

→明確と言える

 

真のアウトカムか?

脳卒中の再発は真のアウトカムと言える

 

盲検化されているか?

→不明。実薬群vsプラセボ群の血圧値の変動により盲検化不可能と考えられた?

 

サンプルサイズ

→もともとは15,500名を予定していたが、アウトカム発生件数が予想より少なかったため20,000名以上となった(パワー91%)

 

ITT解析を行われているか?

→ITT解析されている

 

脱落率は結果を覆すほどあるか?

→追跡率=99%(lost to follow upは、テルミサルタン群:51名、プラセボ群:74名)

 

追跡期間

→平均2.5年

 

結果

脳卒中の再発

E群:880/10146(8.7%)vs 934/10186(9.2%) 

HR=0.95(95%CI:0.86-1.04) p=0.23  NNT=202名

 

主要心血管イベント(心血管因性死亡、脳卒中再発、心筋梗塞、新規の心不全心不全の増悪)

E群:1367/10146(13.5%)vs 1463/10186(14.4%) 

HR=0.94(95%CI:0.87-1.01) p=0.11  NNT=113名

 

新規糖尿病発症

E群:125/10146(1.2%)vs 151/10186(1.5%) 

HR=0.82(95%CI:0.65-1.04) p=0.10  NNT=400名

 

有害事象

低血圧

E群:393/10146(3.9%)vs 186/10186(1.8%) p<0.001

 

失神

E群:21/10146(0.2%)vs 6/10186(0.1%) p=0.004

 

 

感想

 20,000名以上の患者を対象にした大規模な研究であるが、結局、脳卒中の再発はプラセボと差が無いという結果である。今回の対象患者は、直近に虚血性脳卒中を経験して間もない患者であるので、虚血性脳卒中を発症したことのない高血圧症患者を対象にした時の結果も気になる所。

 本研究の結果では有害事象として、プラセボ群とあまり大きな差のある物はないので、すでに服用している患者であれば無理に中止する必要もないとは思う。

 しかし、少なくとも本研究の結果からすると、脳卒中の再発予防を目的として積極的に使う必要性もあまり感じられなかった。

 テルミサルタンには、血圧改善作用や臓器保護作用のほかに糖尿病改善作用があるとも言われている。本研究では、あくまでもSecondary outcomeであり、新規発症の検討という事で条件も異なるが、糖尿病新規発症に関しては差が見られていない。糖尿病の新規発症をPrimary outcomeとして検討した研究もあれば、今後調べてみる必要があると感じた。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。