ナトリウム摂取量と脳卒中による死亡にはどの程度関連がありますか?
ご訪問ありがとうございます。
基本的なことでですが、塩分摂取を控えると本当に脳卒中などのリスクは下がるのか?というのが気になったので調べてみました。
参考文献 Sodium intake and risk of death from stroke in Japanese men and women.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15143292
PMID:15143292
研究デザイン:一般集団対象コホート研究(日本 岐阜県高山市)
論文のPECO
P:1992年に岐阜県高山市に在住の35歳以上の男性13,355名と、女性15,724名
E:高用量or中等量ナトリウム摂取
C:低用量ナトリウム摂取
O:脳卒中による死亡
※脳卒中、虚血性心疾患、悪性腫瘍の患者は除外
研究対象集団の代表性
→岐阜県高山市の一般人口を対象にしており、大きな問題は無いと思われる
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
マッチングされているか?
→不明(記載が見つけられず)
調節した交絡因子は何か?
→年齢、教育水準、婚姻状態、BMI、喫煙、アルコール消費量、糖尿病と高血圧の病歴、タンパク質、カリウム、ビタミンE摂取量。
☆ナトリウム摂取量の推定の仕方
①半定量食物摂取頻度調査票を使用して食事歴を評価。
※半定量食物摂取頻度調査票・・・日本人が比較的よくとっている100種類以上の食品について、どのくらいの頻度で食べるのか、1回にどれくらいの量を食べるのかを答えて頂き、代表的な食品や栄養素について、1日当りの摂取量を計算するという仕組みのもの。
②前年の各食品摂取頻度とナトリウム摂取量から、日本食品組成標準表を用いて摂取量を推定した。
追跡期間
1992年~1999年(7年間)
結果
(男性)
ナトリウム摂取量
低用量群:4070mg/day 中用量群:5209mg/day 高用量群:6613mg/day
脳卒中による死亡
低用量群:23/30,670人年
中用量群:40/30,779人年 HR=1.60(95%CI:0.92-2.80)
高用量群:74/29,587人年 HR=2.33(95%CI:1.23-4.45)
(女性)
ナトリウム摂取量
低用量群:3799mg/day 中用量群:4801mg/day 高用量群:5930mg/day
脳卒中による死亡
低用量群:40/36,719人年
中用量群:39/36,874人年 HR=1.33(95%CI:0.80-2.21)
高用量群:53/36,530人年 HR=1.70(95%CI:0.96-3.02)
感想
ナトリウム摂取量は、個々に質問するような形で確認しているので、摂取量の評価方法としてどの程度妥当であるのかは疑問であるが、摂取量が高くなると脳卒中による死亡は増加傾向にある。
ちなみに、ナトリウム量(mg)×2.54÷1000=食塩相当量(g)であり、日本人における食塩摂取目標は男性8g未満、女性では7g未満とされている。
確かに、ナトリウム摂取量が増加すると脳卒中による死亡は男女ともに増加傾向にはあるが、そもそもの発生頻度が少ないので、絶対数的な違いはあまり大きくないのかもしれない。男性では、喫煙率や飲酒などの関係なのか、女性に比べてやや脳卒中による死亡のHRが高くなる傾向にある。
日本人では、醤油や味噌などをよく使用する事もあり、塩分摂取量は多くなりがちと言われている。この結果のみを基にすると、案外塩分摂取量を控えても脳卒中による死亡に対する影響は大きくないのかなという印象である。この論文のみで結論することは出来ないので、関連論文についても追跡していく必要がある。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。