重度慢性心不全患者はカルベジロールで死亡を減らせますか?

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今回は、慢性心不全患者に対するカルベジロール使用についてです。

 

参考文献 Effect of carvedilol on survival in severe chronic heart failure.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=11386263

 

PMID:11386263

 

研究デザイン:ランダム化比較試験

 

 論文のPECO

P:安静時または最小限の労作時に心不全の症状を有し、正常体液量であり、駆出率<25%の慢性心不全患者

E:心不全の標準治療+カルベジロール→1156名

C:心不全の標準治療+プラセボ→1133名

O:(Primary) 総死亡

 (Secondary)死亡と入院の合計

 

 ※除外基準

原発性の弁疾患または可逆性の心筋症による心不全、心臓移植歴、心臓移植の予定、重度の原発性肺疾患、腎疾患、肝疾患、βブロッカー禁忌、2か月以内の冠動脈再建術、急性心筋梗塞、脳虚血イベント、不安定心室性頻拍、心室細動、4週以内のαブロッカー、CCB、クラスⅠ抗不整脈薬使用、2か月以内のβブロッカー使用、収縮期血圧<85mmHg、心拍数<68/min、血清クレアチニン>2.8mg/dL、血清カリウム<3.5mmol/Lまたは血清カリウム≻5.2mmol/L、スクリーニング期間(3-14日)中に血清クレアチニン0.5mg/dL以上増加、体重1.5kg以上増加

 

ランダム化されているか?

→されている

 

一次アウトカムは明確か?

→明確

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

盲検化されているか?

→されている

 

サンプルサイズ

→具体的な数字は記載なし(パワー90%、α=0.05)

 

ITT解析を行われているか?

→ITT解析されている

 

脱落率は結果を覆すほどあるか?

追跡率=100%

 

追跡期間

→平均10.4カ月

 

結果

死亡

E群:130/1156名 vs C群:190/1133名

C群に比べ、E群で35%(95%CI:19-48%)のリスク減少 p=0.0014

 

※累積年間死亡リスク(Kaplan-Meierより)

E群:11.4% vs C群:18.5%

 

死亡と入院の合計

E群:507/1156名 vs C群:425/1133名

C群に比べ、E群で24%(95%CI:13-33%)のリスク減少 p<0.001

 

感想

今回の研究の平均追跡期間は10.4カ月とあまり長くないが、この期間でもカルベジロール服用群の方が総死亡は有意に低下したという結果。(しかも、カルベジロールの有益性が早い段階で分かったので、研究が途中で打ち切りになっている)

 本研究患者のカルベジロール平均用量は37mg/dayなので、国内の慢性心不全に用いる通常量(2.5~10mg×2回/day)よりはやや高用量ではある点や、4週以内にCCBを使用している患者など除外されている点は、結果の適用時に注意が必要。

 対象患者の平均年齢は約63歳、平均追跡期間は10.4カ月なので、患者年齢もまだ若く、差が出にくそうなセッティングにも感じたが、この条件でも死亡に差が見られている。もう少し低用量を用いた場合の結果も気になる所。

 しかし、Kaplan-Meier曲線を見てみた感想として、死亡を何年も先延ばしにするという事は期待できないかな?と感じた。

 この結果のみでは結論できないので、関連論文も後日読んでいく必要がある。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。