慢性心不全患者の治療にはオルメサルタンを上乗せした方がいいですか?
ご訪問ありがとうございます。
今回は、慢性心不全患者を有する高血圧患者への、オルメサルタンの使用に関する研究についてです。
参考文献 Clinical impacts of additive use of olmesartan in hypertensive patients with chronic heart failure: the supplemental benefit of an angiotensin receptor blocker in hypertensive patients with stable heart failure using olmesartan (SUPPORT) trial.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25637937
PMID:25637937
研究デザイン:ランダム化比較試験
論文のPECO
P:症候性慢性心不全を有する高血圧患者で、ACE-Iまたはβブロッカー治療を受けている者
E:既存治療にオルメサルタン追加→578名
C:オルメサルタン追加無し→569名
O:(Primary) 総死亡、非致死性急性心筋梗塞、非致死性脳卒中、心不全悪化による入院の複合アウトカム
(Secondary)心血管因性死亡、心血管系による入院、心不全マーカー、心血管疾患の進行、心房細動、糖尿病、腎機能障害
※除外基準
腎機能障害、慢性血液透析、オルメサルタンに対する過敏症、重度肝機能障害、血管浮腫の既往、悪性腫瘍、生命を脅かす病状、妊婦・妊娠の可能性、6か月以内の心血管手術歴、6か月以内の急性心筋梗塞、6か月以内の経皮的冠動脈置換術
ランダム化されているか?
→されている
一次アウトカムは明確か?
→4つのアウトカムの複合アウトカムなので明確かとは思うが、オープンラベルでの研究なので、入院というソフトエンドポイントが含まれている点は注意
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
盲検化されているか?
→オープンラベル
サンプルサイズ
各群565名(パワー80%、α=0.05)
ITT解析を行われているか?
→ITT解析が行われている
脱落率は結果を覆すほどあるか?
追跡率=99.9%
追跡期間
→中央値4.4年
結果
(Primary endpoint)総死亡、非致死性急性心筋梗塞、非致死性脳卒中、心不全悪化による入院の複合アウトカム
E群:192/578名(33.2%) vs C群:166/569名(29.2%)
HR=1.18(95%CI:0.96-1.46) p=0.112
※サブグループ
総死亡、非致死性急性心筋梗塞、非致死性脳卒中、心不全悪化による入院の複合アウトカム
・ACE-I(+)、βブロッカー(-)治療患者
HR=1.12(95%CI:0.75-1.66) p=0.588
・ACE-I(-)、βブロッカー(+)治療患者
HR=0.66(95%CI:0.39-1.12) p=0.118
・ACE-I(+)、βブロッカー(+)治療患者
HR=1.47(95%CI:1.11-1.95) p=0.005
感想
期間全体では、オルメサルタン上乗せの有無で、Primary outcomeは抑えることが出来なかったという結果。さらに言えば、ややイベントを増やすかもしれないという結果。
複合アウトカムを構成する個々のアウトカムに関しても、特に差が見られているものは無い。
サブグループ解析において、ACE-I、βブロッカーにオルメサルタン上乗せの3剤併用では、オルメサルタンを上乗せしない場合に比べ、優位にイベント発生を増やすという結果が出ている。この結果を鵜呑みにする事は出来ないが、少なくともオルメサルタンの上乗せによるメリットはあまり大きくないのではないだろうかという印象。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。