2型糖尿病患者は血圧をしっかり下げた方がいいですか?
ご訪問ありがとうございます。
今回は、2型糖尿病患者に対する厳格な降圧治療と、標準の降圧治療の比較です。
以前取り上げた、ACCORD試験で同時進行された研究になります。
過去の記事→http://pharm-niiyan.hatenablog.com/entry/2016/07/11/020325
参考文献 Effects of intensive blood-pressure control in type 2 diabetes mellitus.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=20228401
PMID:20228401
研究デザイン:ランダム化比較試験
※ACCORD試験の、血圧に着目した研究
ランダム化されているか?
→ランダム化されている
論文のPECO
E:厳格治療(降圧目標を120mmHg未満)
C:標準治療(降圧目標を140mmHg未満)
O:(Primary) 非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、心血管死亡の複合アウトカム
※除外基準
BMI>45、血清クレアチニン>1.5mg/dL、その他重篤な疾患
一次アウトカムは明確か?
→複合アウトカムなので明確
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
盲検化されているか?
→nonblind(盲検化されていない):血圧の変化で分かってしまうので、盲検化出来ないのではないか?
サンプルサイズ
→4,200名(パワー94%、α=5%)
ITT解析を行われているか?
→ITT解析されている
追跡期間
→平均4.7年
脱落率は結果を覆すほどあるか?
→追跡率94.8%??
結果
血圧の変化
ベースライン→139.2mmHg/76.0mmHg
1年後→E群:119.3mmHg/64.4mmHg C群:133.5mmHg/70.5mmHg
Primary outcome(非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、心血管死亡の複合アウトカム)
E群:208/2363件 1.87%/年 vs C群:237/2371件 2.09%/年
HR=0.88(95%CI:0.73-1.06) p=0.20
Secondary outcome
非致死性心筋梗塞
E群:126/2363件 1.13%/年 vs C群:146/2371件 1.28%/年
HR=0.87(95%CI:0.68-1.10) p=0.25
全脳卒中
E群:36/2363件 0.32%/年 vs C群:62/2371件 0.53%/年
HR=0.59(95%CI:0.39-0.89) p=0.01
非致死性脳卒中
E群:34/2363件 0.30%/年 vs C群:55/2371件 0.47%/年
HR=0.63(95%CI:0.41-0.96) p=0.03
総死亡
E群:150/2363件 1.28%/年 vs C群:144/2371件 1.19%/年
HR=1.07(95%CI:0.85-1.35) p=0.55
心血管死亡
E群:60/2363件 0.52%/年 vs C群:58/2371件 0.49%/年
HR=1.06(95%CI:0.74-1.52) p=0.74
有害事象
全体 E群:77/2363件 3.3% vs C群:30/2371件 1.27%
低血圧 E群:17/2363件 0.7% vs C群:1/2371件 0.04%
徐脈・不整脈 E群:12/2363件 0.5% vs C群:3/2371件 0.13%
高カリウム血症 E群:9/2363件 0.4% vs C群:1/2371件 0.01%
感想
2型糖尿病患者への降圧目標を120mmHgとした場合、140mmHgとした場合と比較して、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、心血管死亡の発生を減らす事はできなかったという結果である。複合アウトカムを構成する個々のアウトカムのうち、脳卒中だけは有意に減らす事が出来ているが、その臨床上の意義はあまり大きくないように感じる。
一方、有害事象に関しては厳格治療群(3.3%)の方が標準治療群(1.27%)より多い。本研究の結果からだと、2型糖尿病患者ではそこまで厳格に血圧を下げなくても、140mmHg程度でいいのかもしれない。
ACCORD試験は、もう一つ脂質に関しても同時に行われているようなので、こちらも日ほど読んでみる。
ACCORD lipid https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20228404
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。