2型糖尿病患者はTGをしっかり下げた方がいいですか?

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今回は、前回少し触れたACCORD lipid試験の論文を読んでみました。

 

参考文献 Effects of combination lipid therapy in type 2 diabetes mellitus.

リンク   https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20228404

 

PMID:20228404

 

 研究デザイン:ランダム化比較試験

 

ランダム化されているか?

→ランダム化されている

 

論文のPECO

P:HbA1c>7.5%の2型糖尿病患者(臨床上の心血管イベントがある場合は40~79歳、無症状の心血管イベントまたは、2つ以上の心血管リスク因子がある場合は55~79歳)。※LDL-コレステロール60~180mg/dL、HDLコレステロール<55mg/dL(女性と黒人)、HDLコレステロール<50mg/dL(女性と黒人以外)、TG<750mg/dL(脂質低下療法を受けていない場合)、TG<400mg/dL(脂質低下療法を受けている場合)

E:フェノフィブラートを追加

C:プラセボを追加

O:(Primary) 非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、心血管性死亡の複合アウトカム

 (Secondary)Primary outcomeと、血行再建術、うっ血性心不全による入院の複合アウトカム、致死性冠動脈イベント、非致死性心筋梗塞、不安定狭心症の複合アウトカム、非致死性心筋梗塞、致死性または非致死性脳卒中、総死亡、心血管因性死亡、入院または心不全による死亡

 

※1か月前にシンバスタチンを開始。1か月後にフェノフィブラートorプラセボを開始

 

一次アウトカムは明確か?

→複合アウトカムなので明確

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

盲検化されているか?

→masked(盲検化されている)

 

サンプルサイズ

→5,800名(パワー87%、α=5%)

 

ITT解析を行われているか?

→ITT解析されている

 

脱落率は結果を覆すほどあるか?

E群:77.3%、C群:81.3%(?)

 

追跡期間

→平均4.7年

 

結果

血清脂質レベル

・LDLコレステロール

E群:100.0mg/dL → 81.1mg/dL  C群:101.1mg/dL → 80.0mg/dL

 

・HDLコレステロール

E群:38.0mg/dL → 41.2mg/dL  C群:38.2mg/dL → 40.5mg/dL

 

・TG

E群:164mg/dL → 122mg/dL  C群:160mg/dL → 144mg/dL

 

(Primary outcome

非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、心血管性死亡の複合アウトカム

E群:2.24%/年(291/2765)vs C群:2.41%/年(310/2753)

HR=0.92(95%CI:0.79-1.08) p=0.32

 

(Secondary outcome

Primary outcomeと、血行再建術、うっ血性心不全による入院の複合アウトカム

E群:5.35%/年(641/2765)vs C群:5.64%/年(667/2753)

HR=0.94(95%CI:0.85-1.05) p=0.30

 

致死性冠動脈イベント、非致死性心筋梗塞、不安定狭心症の複合アウトカム

E群:2.58%/年(332/2765)vs C群:2.79%/年(353/2753)

HR=0.92(95%CI:0.79-1.07) p=0.26

 

非致死性心筋梗塞

E群:1.32%/年(173/2765)vs C群:1.44%/年(186/2753)

HR=0.91(95%CI:0.74-1.12) p=0.39

 

脳卒中

E群:0.38%/年(51/2765)vs C群:0.36%/年(48/2753)

HR=1.05(95%CI:0.71-1.56) p=0.80

 

総死亡

E群:1.47%/年(203/2765)vs C群:1.61%/年(221/2753)

HR=0.91(95%CI:0.75-1.10) p=0.33

 

心血管因性死亡

E群:0.72%/年(99/2765)vs C群:0.83%/年(114/2753)

HR=0.86(95%CI:0.66-1.12) p=0.26

 

入院または心不全による死亡

E群:0.90%/年(120/2765)vs C群:1.09%/年(143/2753)

HR=0.82(95%CI:0.65-1.05) p=0.10

 

感想

 フェノフィブラート服用群では、トリグリセリドが164mg/dLから122mg/dLに低下、プラセボ服用群では160mg/dLから144mg/dLに低下という結果。トリグリセリドは、フェノフィブラート内服群の方が変化は大きい。確かにフェノフィブラート内服群が、若干検査値を改善している。

 一方Primary outcomeについては、フェノフィブラート内服群とプラセボ群で減少傾向にあるものの、有意差は見られなかった。Figure2のKaplan-Meier曲線からも、両群で曲線がほぼ重なっている。個々のSecondary outcomeについても、大きく差が見られているものは無い。

 あらかじめ計算されたサンプルサイズは5,800名と計算されたが、実際研究に組み入れられたのは5,518名とやや少ない。しかし、βエラーが生じるほどの違いではないかもしれない(あまりよく分からないけど・・・)。

 本研究の結果から考察すると、少なくとも2型糖尿病患者で、基準値を少し超えている程度の高トリグリセリド血症であれば、フェノフィブラート追加により得られるメリットはあまり大きくなさそうだという印象。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。