オセルタミビルはどれぐらい効果がありますか?
ご訪問ありがとうございます。
皆様の病院や薬局、地域のインフルエンザ流行状況はいかがでしょうか?
今が一番のピークなのかもしれませんね。
さて、先日卸の担当者さんがオセルタミビルカプセルのパンフレットを持ってこられたのですが、そこに、まだ読んだ事のない論文の情報が載せてありました。
自分が持っていた印象よりも効果があるような感じのデータだったのですが、ここで元論文を自分でも読んでみました。
参考文献 Oseltamivir treatment for influenza in adults: a meta-analysis of randomised controlled trials.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=25640810
PMID:25640810
研究デザイン:メタ分析
論文のPECO
P:インフルエンザ様症状を感じて36時間以内の成人
E:オセルタミビル75mg×2回/日
C:プラセボ
O:症状(鼻づまり、咽頭痛、咳、疲労感、痛み、頭痛、悪寒または発汗)軽減までの時間
※追跡期間は21日間
※インフルエンザ様症状:65歳未満では38℃以上、65歳以上では37.5℃以上の発熱があり、かつ、以下のうち2つ以上の症状のあるもの(咳、のどの痛み、鼻カタル、頭痛、筋肉痛、発汗、寒気、疲労感)
一次アウトカムは明確か?
→明確
真のアウトカムか?
→症状は患者の日常生活に影響を及ぼすので真のアウトカム
4つのバイアス
1、評価者バイアス
→記載なし
評価者バイアス不明
2、出版バイアス
情報元:ロシュがスポンサーとなって行った9つのRCT(未出版のものを含む)、Medline、PubMed、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials
言語制限など詳しい記載は見当たらないが、未出版の物も集められており、出版バイアスはさほど問題なさそう
3、元論文バイアス
・元論文の質的評価結果の具体的な記載は無いが、全て二重盲検が行われているRCTで、ITT解析も行われているようである。
・FDAによりデータの質は保証されたと記載あり
元論文バイアスはさほど問題なし(?)
4、異質性バイアス
各結果のフォレストプロットを見てみると、それぞれの研究の結果は、おおよそ同じ方向を示しているようなので、大きな問題は無さそう。
結果
○症状改善までの時間(time ratio)
★Intention-to-treat infected population(インフルエンザ確定診断を受けた患者のみ)
time ratio:0.79(0.74~0.84) p<0.0001 異質性P=0.31
症状改善までの時間の中央値 E群:97.5hr vs C群:122.7hr
両群の差:-25.2hr(95%CI:-36.2~-16.0)
★Intention-to-treat population(全患者)
time ratio:0.85(0.80~0.90) p<0.0001 異質性P=0.46
症状改善までの時間の中央値 E群:99.4hr vs C群:117.2hr
両群の差:-17.8hr(95%CI:-27.1~-9.3)
★Intention-to-treat not-infected population(確定診断を受けていない患者のみ)
time ratio:0.99(0.88~1.12) p=0.91 異質性P=0.46
症状改善までの時間の中央値 E群:99.4hr vs C群:117.2hr
両群の差:-17.8hr(95%CI:-27.1~-9.3)
※インフルエンザの確定診断を受けた患者では、症状改善までの時間を短縮。確定診断を受けていない患者では、プラセボ群とほとんど差が無い。
○下気道感染症の合併(インフルエンザ確定診断を受けた患者のみの結果)
E群:65/1544(4.2%) vs C群:110/1263(8.7%)
RR=0.56(95%CI:0.42~0.75)p=0.0001 異質性:P=0.58 NNT=23名
○入院(インフルエンザ確定診断を受けた患者のみの結果)
E群:9/1329(0.6%) vs C群:22/1045(1.7%)
RR=0.37(95%CI:0.17~0.81)p=0.013 異質性:P=0.97 NNT=71名
○有害事象
吐き気 E群:247/2401(9.9%)vs C群:118/1917(6.2%)
RR=1.60(95%CI:1.29~1.99)p<0.0001
嘔吐 E群:201/2401(8.0%)vs C群:63/1917(3.3%)
RR=2.43(95%CI:1.83~3.23)p<0.0001
感想
このメタ分析は、ロシュが協賛しているRCTが統合されたものであり、若干のバイアスは生じている可能性はあるので、この点は念頭に置いておく必要があるかと思う。また、評価者バイアスや元論文バイアスが判断しにくいと感じた点も少し気になった。
インフルエンザの確定診断を受けた患者では、症状軽減までの時間がプラセボ群で122.7hrのところ、オセルタミビル群で97.5hrへ短縮されたという結果。大まかにいうと、症状軽減までに約5日かかっていた所を、オセルタミビル服用により約4日に短縮できた。
このおよそ1日の差に関しては、個人個人で大きい差と感じるか、わずかな差と感じるかは意見の分かれる所ではあると思う。仕事や家事などで、1日でも早く日常生活と同じレベルの体調に回復しなければ困る患者さんも多いと思う。そのような患者さんではオセルタミビルを服用してもらうのも1つであろう。
また、主な合併症である下気道感染症はRR=0.56(NNT=22)へと、入院もRR=0.33(NNT=71)に有意に減らす事が出来た。肺炎リスクなどが高いと予想される患者では念のため服用した方が安心するという事もあると思う。
いずれにせよ、この論文の結果を患者全員に当てはめるのではなく、個々の事情や想いが重視され、個々に合わせた柔軟な対応が必要となるであろう。
今回のメタ分析に組み込まれた、個々の論文も読んでみようと思う。
今年は例年よりはピークもなだらかな印象がありますが、まだまだ気が抜けない季節なので、皆様も感染しないようにお気を付け下さい。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。