手指衛生の指導とフェイスマスクでインフルエンザの家庭内感染を防ぐことが出来ますか?

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今回は、手の衛生とフェイスマスクで、インフルエンザの家庭内感染が予防できるかについての論文を読んでみました。

 

参考文献 Facemasks and hand hygiene to prevent influenza transmission in households: a cluster randomized trial.

リンク   https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=19652172

 

PMID:19652172

 

研究デザインクラスターランダム化比較試験

 

ランダム化されているか?

→ランダム化されている

 

論文のPECO

P:インフルエンザ様症状で外来受診し、インフルエンザ迅速検査でインフルエンザA型またはB型陽性となった(index member)407名のうち259家族の794名(contact)が解析された

E:①手指衛生(H群) ②手指衛生+フェイスマスク(HF群)

C:生活スタイルの指導(C群)

O:(Primary) RT-PCRにより確認されたインフルエンザ二次感染

 (Secondary)7日後に臨床症状として確認されたインフルエンザ二次感染

 

Clinical definition1:37.8℃以上の発熱、咳、頭痛、咽頭痛、筋肉痛のうち2つ以上の症状を呈する者

 Clinical definition2:37.8℃以上の発熱+咳または咽頭

 

C:感染予防と症状緩和の両面で食生活と生活習慣の重要性を伝えた。

 H:感染予防のために手指衛生が重要であることを伝え、提供された液体石鹸を使用して手洗いをするように、また、くしゃみや咳などで手が汚れたらアルコールを刷り込むように指導。

 HF:H群の介入+家庭内感染を防ぐためにフェイスマスクが有効であることを伝え、家で出来るだけフェイスマスクを着用するように指導された。

 

一次アウトカムは明確か?

→明確

 

真のアウトカムか?

→Primary outcomeは代用のアウトカムかもしれない。Secondary outcomeは真のアウトカムと思われる。

 

盲検化されているか?

→盲検化されていない(盲検化できないと思われる)

 

サンプルサイズ

→各群100~200世帯(パワー80%、α=5%)

※100世帯では55~70%の差を検出、200世帯では45~55%の差を検出できる

 

ITT解析を行われているか?

→不明(Participants were analyzed in the group to which they were randomly assigned, regardless of adherence…と記載があるためITT解析されているかも。)

 

脱落率は結果を覆すほどあるか?

追跡率=63.6%

 

追跡期間

→7日間

 

結果

RT-PCRにより確認されたインフルエンザ二次感染(vs C群)

H群 vs C群 OR=0.57(95%CI:0.26~1.22)

HF群 vs C群 OR=0.77(95%CI:0.38~1.55)

 

Clinical definition1(vs C群)

H群 vs C群 OR=0.92(95%CI:0.57~1.48)

HF群 vs C群 OR=1.25(95%CI:0.79~1.98)

 

Clinical definition2(vs C群)

H群 vs C群 OR=0.81(95%CI:0.33~2.00)

HF群 vs C群 OR=1.68(95%CI:0.68~4.15)

 

★index memberが症状発症後36時間以内に介入した患者のみの結果

RT-PCRにより確認されたインフルエンザ二次感染(vs C群)

H群 vs C群 OR=0.46(95%CI:0.15~1.43)

HF群 vs C群 OR=0.33(95%CI:0.13~0.87)

 

Clinical definition1(vs C群)

H群 vs C群 OR=0.46(95%CI:0.22~0.96)

HF群 vs C群 OR=0.86(95%CI:0.48~1.53)

 

Clinical definition2(vs C群)

H群 vs C群 OR=0.64(95%CI:0.20~2.02)

HF群 vs C群 OR=1.45(95%CI:0.49~4.24)

 

感想

 RT-PCRにより確認されるインフルエンザウイルス二次感染は、H群、HF群ともに、有意差こそ無いがオッズ比が小さくなる傾向が見られている。一方、臨床上のインフルエンザウイルス二次感染は、Clinical definition1の36時間以内のH群のみ有意な減少、他は差が無く、むしろHF群では増加傾向が見られよく分からない結果となっている。

 まず、Table6を見てみると、介入のアドヒアランスが非常に低いと思われる。例えば、H群でも、手指衛生を保てたと判断されたのは全体の54%程度、HF群に割り当てられた世帯者でも、確実にマスクをしたのは全体の26%に過ぎなかったようである。また、C群でも、45%は手指衛生を保てたと判断されているし、液体せっけんによる手洗いは77%がしている。これらから、最終的によく分からないような結果となっているような気がする。

 何かよく分からない結果ではあるが、少なくとも手洗いやフェイスマスクを否定するようなものではないので、どちらもしないよりはした方がいいのかもしれない。

 今回の介入で、看護師からマスクの重要性の指導をしっかり受けたにも関わらず、アドヒアランスがここまで低いというのも考えさせられるので、どのように指導すればアドヒアランスが高まるのかについても検討する必要があるのかもしれない。

 

私、少しインフルエンザにビビりながら生活していますが、皆さんもまだまだ気を抜かずに行きましょう。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。