心房細動患者へのイルベサルタンは心血管イベントを抑制できますか?
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今回は、ARBの1つであるイルベサルタンに関する論文です。
参考文献 Irbesartan in patients with atrial fibrillation.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=21388310
PMID:21388310
研究デザイン:ランダム化比較試験
ランダム化されているか?
→ランダム化されている
論文のPECO
P:収縮期血圧>110mmHgの持続的な心房細動または、過去6か月以内に2回以上の断続的な心房細動があり、脳卒中リスクファクター(75歳以上、高血圧治療、脳卒中・TIAの既往、非中枢神経系全身塞栓症、左心室駆出率<45%、末梢血管疾患、55~74歳でかつ糖尿病または冠状動脈疾患のある者)のうち1つ以上ある患者
E:イルベサルタン300mg/日
C:プラセボ
O:(Primary) ①脳卒中、心筋梗塞、血管が原因の死亡の複合アウトカム ②脳卒中、心筋梗塞、血管が原因の死亡、心不全による入院の複合アウトカム
※除外基準
クロピドグレルまたは経口抗凝固薬を要する患者、過去6か月以内に消化性潰瘍の診断、脳内出血、血小板減少症、僧房弁狭窄症
一次アウトカムは明確か?
→明確といえる
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
盲検化されているか?
→二重盲検されている
サンプルサイズ
→9000名(パワー80%、α=0.045)
ITT解析を行われているか?
→ITT解析されている
追跡期間
→平均4.1年(中央値4.5年)
脱落率は結果を覆すほどあるか?
→4年の追跡率は約70%?(脱落が多い気がするので注意が必要かと思う)
結果
・平均年齢は約70歳
・CHADS2スコアの平均は2点
・ベースラインの血圧:E群→138.3/82.6mmHg C群→138.2/82.2mmHg
・血圧の平均低下値:E群→6.8/4.5mmHg C群→3.9/2.6mmHg
Primary outcome
E群:963/4518件(5.4%/100人年)vs 963/4498件(5.4%/100人年)
RR=0.99(95%CI:0.91~1.08) p=0.85
②脳卒中、心筋梗塞、血管が原因の死亡、心不全による入院の複合アウトカム
E群:1236/4518件(7.3%/100人年)vs 1291/4498件(7.7%/100人年)
RR=0.94(95%CI:0.87~1.02) p=0.12
感想
イルベサルタンを服用しても、脳卒中、心筋梗塞、血管性死亡の低下は見られなかったという結果。今回のイルベサルタン服用量は300mg/日となっており、国内での最大用量である200mg/日よりやや高用量であるので、国内で用いられる用量だと、よりその差が小さくなる可能性が考えられる。
そもそも、イベント発生率が少なくて、予定されていた研究期間より平均1.1年延長したという経緯もあるようで、どちらにしてもアウトカムの絶対発生数が少ない。
除外基準として、クロピドグレルや抗凝固薬を必要とする患者は除かれているという記載があるが(METHODSのPATIENT SELECTION AND STUDY DRUGS12行目)、ベースラインの患者情報(Table1)には経口抗凝固薬を服用している患者も含まれており、この解釈がよく分からなかった。
イルベサルタン服用で、血圧はベースラインから平均6.8/4.5mmHgの低下という事で、この程度の変化でしかないというのも気になった。もう少し、ベースラインの血圧の高い患者では大きく下がるのだろうか?
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。