心房細動患者に対するアピキサバンvsワルファリン

 

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今回は、心房細動患者に対するアピキサバンとワルファリンの有効性、安全性の比較をした研究についてです。

 

参考文献 Apixaban versus warfarin in patients with atrial fibrillation.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=21870978

 

PMID:21870978

 

研究デザイン:ランダム化比較試験(非劣勢・優越性)

 

ランダム化されているか?

→ランダム化されている

 

論文のPECO

P:脳卒中リスクファクターのうち少なくとも1つを持つ、心房細動患者18201名

E:アピキサバン5mg×2回/day(80歳以上、体重60kg未満、血清クレアチニン>1.5mg/dL以上のち2つ以上を満たす患者は2.5mg×2回/day)→9120名

C:ワルファリン(PT-INR2.0~3.0を目指す)→9081名

O:(Primary) 有効性:虚血性・出血性脳卒中または全身性塞栓症 

      安全性:大出血

 

脳卒中リスクファクター:75歳以上、脳卒中TIA・全身性塞栓症の既往歴、3カ月以内の症候性心不全または、左室駆出率40%未満、糖尿病、薬理学的治療を要する高血圧

 

除外基準

可逆的要因による心房細動、中等度または重度の僧房弁狭窄症、心房細動以外の要因により抗凝固薬を必要とする状態(例:人口心臓弁)、7日以内の脳卒中、1日165mg以上のアスピリンまたは、アスピリンとクロピドグレルの併用が必要な患者、重度の腎機能不全(血清クレアチニン>2.5mg/dL、クレアチニンリアランス<25ml/min)

 

一次アウトカムは明確か?

→明確と言える

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

盲検化されているか?

→二重盲検されている

 

ITT解析を行われているか?

→有効性:ITT解析されている  安全性:mITT解析

 

追跡期間

→中央値1.8年

 

サンプルサイズ

→18000名(パワー90%)

 

脱落率は結果を覆すほどあるか?

→追跡率99.6%

 

結果

・患者年齢:中央値70歳

・CHADS2スコアの平均:2.1点

 

★有効性:Primary outcome脳卒中・全身性塞栓症)

E群:212/9120件(1.27%/年)vs C群:265/9081件(1.60%/年)

HR=0.79(95%CI:0.66~0.95) p=0.01

 

★安全性:Primary safety outcome(大出血)

E群:327/9088件(2.13%/年)vs C群:462/9052件(3.09%/年)

HR=0.69(95%CI:0.60~0.80) p<0.001

 

感想

 もともと非劣勢試験だったが、非劣勢は証明されたし優越性も見ておこう!みたいな感じの研究だろうか?最終的に、脳卒中・全身性塞栓症予防効果はアピキサバンがワルファリンに対して優れている事が示されたという結論になっている。

 有効性のPrimary outcomeである脳卒中・全身性塞栓症は、ワルファリン服用と比較して、アピキサバン服用群の方が有意にリスクを抑えられたという結果。一方、安全性のPrimary safety outcomeである大出血は、ワルファリン服用群に比べ、アピキサバン服用群の方が有意に少ないといった結果。計算してみると、有効性のNNTは169名であり、大出血のNNHは67名という事でワルファリンよりもアピキサバンの方が大出血のリスクは低い可能性が示唆されている。

 大出血のリスクは確かにまずまずアピキサバンの方が優れているのかな?という印象も有りながら、やはり値段がどうしても違いすぎる(アピキサバン錠2.5mg:149.00円/錠、5mg錠:272.80円/錠、ワルファリン錠1mg:9.6円/錠)。

 HAS-BLEDスコアなどで出血性合併症高リスク群にあたるような患者では、ワルファリンからの切り替えも1つの選択肢にはなるのかもしれないが、この論文のみでそれを結論付けることは難しいので、関連する論文も読んでいく必要がある。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。