高齢者のゾルピデム服用と骨折リスクに関連がありますか?

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今回は、いわゆるZ-drugの1つであるゾルピデムと、骨折リスクに関する論文を読んでみました。

 

参考文献 Zolpidem use and risk of fracture in elderly insomnia patients.

 

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=22880153

 

PMID:22880153

 

研究デザイン:ケースクロスオーバー研究

 

論文のPECO

P:不眠症の65歳以上の高齢者のうち骨折をした患者

E:ゾルピデム服用あり

C:ゾルピデム服用無し

O:骨折発生のオッズ比

 

※骨折が発生した日の前日をHazard period、その5・10・15・20週前の1日間をそれぞれControl periodとした(Hazard period とControl period を1:4で対応させている)。ゾルピデムの服用をHazard periodとControl periodで比較し、骨折の発生とゾルピデム服用の関連性をオッズ比と95%信頼区間で評価。

 

 研究対象集団の代表性

→韓国の健康保険審査・評価サービスのデータベースが用いられており、大きな問題は無さそう

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

調節した交絡因子は何か?

→同じ患者から、Hazard periodとControl periodの間のゾルピデム服用を比較しているので、年齢、性別、生活習慣、認知機能レベル、可動性、社会経済状況、住居環境、併存疾患などの時間に左右されない交絡因子は、あらためて調整する必要が無い研究デザイン。時間に左右される、併用薬(抗精神病薬、カルシウムチャネルブロッカー、抗コリン薬、抗てんかん薬、鎮痛薬)については調整されている。

 

 結果

骨折のオッズ比

(非ベンゾジアゼピン系)

ゾルピデム Hazard:236/1508 vs Control:722/6032

調整オッズ比=1.72(95%CI:1.37~2.16)

 

(ベンゾジアゼピン系)

トリアゾラム Hazard:364/1508 vs Control:1394/6032

調整オッズ比=1.12(95%CI:0.83~1.21)

 

ロラゼパム Hazard:146/1508 vs Control:550/6032

調整オッズ比=1.04(95%CI:0.82~1.33)

 

フルラゼパム Hazard:23/1508 vs Control:101/6032

調整オッズ比=1.06(95%CI:0.79~1.44)

 

フルニトラゼパム Hazard:25/1508 vs Control:108/6032

調整オッズ比=0.78(95%CI:0.38~1.58)

 

ミダゾラム Hazard:3/1508 vs Control:15/6032

調整オッズ比=0.60(95%CI:0.12~2.92)

 

ブロチゾラム Hazard:7/1508 vs Control:27/6032

調整オッズ比=0.97(95%CI:0.31~2.97)

 

※性別ごとの骨折オッズ比

ゾルピデム 

男性 OR=1.74(95%CI:1.09~2.77) 女性 OR=1.87(95%CI:1.45~2.41)

 

ベンゾジアゼピン系 

男性 OR=1.52(95%CI:0.97~2.32) 女性 OR=1.09(95%CI:0.80~1.49)

 

感想

    65歳以上の高齢者では、ゾルピデム服用と骨折の間に関連がありそうな結果である。個人的に、非ベンゾジアゼピン系は筋弛緩作用が少なく、ゾルピデムは比較的安全な薬剤という位置づけとして認識していた。しかし、少なくともこの結果から、ゾルピデム服用で骨折リスクは上昇しないとは言い切れない印象。

 ゾルピデムは、CYP3A4やCYP2C9、CYP1A2などにより代謝される。CYP3A4やCYP1A2などは加齢により活性が低下すると言われており、ゾルピデムは高齢者においてAUCが大きく上昇することが知られている(山本雄一郎先生著 実践薬学@日経BP社を参照)。

 このことも関係しているのかもしれないが、高齢者ではゾルピデム服用中の転倒に注意する必要があるだろうし、必要最低限の服用にとどめた方が無難なのかもしれないと感じた。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。