心不全のある高齢者はロスバスタチンを飲んだ方がいいですか?
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今回は、NYHAⅡ~Ⅳ度の心不全がある60歳以上の高齢者が、ロスバスタチンを服用した場合に、心血管死亡や非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中が減らせるかを検討した研究です。
参考文献 Rosuvastatin in older patients with systolic heart failure.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17984166
PMID:17984166
研究デザイン:ランダム化比較試験
ランダム化されているか?
→ランダム化されている
論文のPECO
P:60歳以上で駆出率<40%のNYHA分類Ⅱ~Ⅳ度の虚血性の収縮期心不全患者5011名
E:ロスバスタチン10mg/日→2514名
C:プラセボ→2497名
O:(Primary) 心血管死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合アウトカム
※除外基準
過去のスタチンによるミオパチー・過敏症既往、非代償性心不全、変力療法を要する心不全、6か月以内の心筋梗塞、3カ月以内の不安定狭心症または脳卒中、3カ月以内のPCI・CABA・除細動器の植え込み・ペースメーカー植え込み、過去または今後予定がある心臓移植、コントロール不良の原発性弁膜症または人工弁の機能不全、肥大性心筋症、急性心内膜炎または急性心筋炎、心臓疾患、アミロイドーシスのような全身性疾患、急性または慢性肝疾患、アラニンアミノトランスフェラーゼまたはチロトロピンが基準値上限の2倍以上、血清クレアチニン>2.5mg/dL、慢性の筋肉疾患または正常範囲上限の2.5倍のクレアチンキナーゼ、シクロスポリンによる治療歴、寿命を大幅に短縮したり、プロトコル遵守を制限する条件
一次アウトカムは明確か?
→複合アウトカムなので明確と言える
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
盲検化されているか?
→二重盲検されている
ITT解析を行われているか?
→ITT解析されている
サンプルサイズ
4950名(パワー90%、α=5%)
追跡期間
→中央値32.8カ月
脱落率は結果を覆すほどあるか?
→追跡率に関する記述が見つけられなかった・・・。
結果
・平均年齢:およそ73歳
・LDLコレステロール
ロスバスタチン群:ベースライン→137mg/dL 3か月後→76mg/dL
プラセボ群:ベースライン→136mg/dL 3か月後→138mg/dL
ロスバスタチン群:ベースライン→48mg/dL 3か月後→50mg/dL
プラセボ群:ベースライン→47mg/dL 3か月後→47mg/dL
Primary outcome(心血管死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合アウトカム)
E群:692/2514件 vs C群:732/2497件
HR=0.92(95%CI:0.83~1.02) p=0.12
感想
60歳以上の高齢者のロスバスタチン服用の有無で、心血管死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合アウトカムは減らす事が出来なかったという結果。
ロスバスタチン服用で確かにLDLコレステロールの低下は見られているが、この事と患者の予後に影響を与える心血管死亡等を減らす事が出来るかは、やはり乖離があるような気がする。
今回の患者のベースライン時点におけるLDLコレステロール値は、平均で約136~137mg/dLと、ものすごく高いという印象ではないため、この事からもアウトカムに差が出にくいという事もあるのかもしれないが。
少なくともLDLコレステロール値が突出して高いわけではない、70歳を超えた心不全の高齢者が、ロスバスタチン服用によって得られるメリットはあまり大きくないのかもしれない。現時点では、服用しないという選択肢もアリかと感じているが、関連論文にも当たってみる必要がある。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。