イチョウ葉エキスは認知症予防に有効ですか?

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今回は、ドラッグストアでもサプリメントとして購入できるイチョウ葉エキスの認知症予防効果についての論文です。

 

参考文献 Ginkgo biloba for prevention of dementia: a randomized controlled trial.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19017911

 

PMID:19017911

 

研究デザイン:ランダム化比較試験

 

ランダム化されているか?

→ランダム化されている

 

論文のPECO

P:認知機能が正常(2587名)または軽度認知機能障害のある(482名)75歳以上の高齢

E:イチョウ葉エキス120mg×2回/日(1545名)

C:プラセボ(1424名)

O:認知症アルツハイマー認知症の発症

 

除外基準

→もともと認知症の患者、ワルファリン服用中、認知症に対してコリンエステラーゼ阻害剤服用中、研究機関中にOTCイチョウ葉エキス摂取を拒む患者、三環系抗うつ薬抗精神病薬・顕著な抗精神作用または中枢性抗コリン作用を有する薬物による治療中(SSRIは対象外)、400IU/日以上のビタミンE摂取、出血性疾患の既往歴、1年以内のうつ病による入院または10年以内の電気痙攣療法、パーキンソン病既往歴または抗パーキンソン病薬服用、甲状腺検査異常、血清クレアチニン>2.0mg/dL、肝機能検査で標準値上限の2倍以上の数値、ベースラインのビタミンB12<210pg/mL、ヘマトクリット値<30%、血小板数<100×103/μL、平均余命<5年、イチョウ葉アレルギー

 

一次アウトカムは明確か?

→明確と言える

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

盲検化されているか?

→二重盲検されている

 

ITT解析を行われているか?

→ITT解析されている

 

サンプルサイズ

→3000名(パワー96% α=5%)

 

脱落率は結果を覆すほどあるか?

→追跡率=93.7%

 

追跡期間

→中央値6.1年

 

結果

・ベースラインの平均年齢:79.1歳

 

認知症

①全患者

E群:3.27/100人年 vs C群:2.94/100人年

HR=1.12(95%CI:0.94~1.33) p=0.21

 

②ベースラインで認知機能正常の患者

E群:2.25/100人年 vs C群:2.16/100人年

HR=1.05(95%CI:0.84~1.30) p=0.67

 

③ベースラインで軽度認知機能障害があった患者(MCI)

E群:9.82/100人年 vs C群:8.68/100人年

HR=1.13(95%CI:0.85~1.50) p=0.39

 

アルツハイマー認知症

①全患者

E群:3.04/100人年 vs C群:2.63/100人年

HR=1.16(95%CI:0.97~1.39) p=0.11

 

②ベースラインで認知機能正常の患者

E群:2.09/100人年 vs C群:1.86/100人年

HR=1.13(95%CI:0.90~1.42) p=0.30

 

③ベースラインで軽度認知機能障害があった患者(MCI)

E群:9.12/100人年 vs C群:8.28/100人年

HR=1.10(95%CI:0.83~1.47) p=0.56

 

有害事象

2群間で発生に大きな差のあるものは無さそう

 

感想

 本研究の結果、イチョウ葉エキスを摂取した群では、プラセボを摂取した群より全認知症アルツハイマー認知症ともにやや増加傾向(ただし有意差は無し)という結果であった。

 私の勉強不足により、この認知症の定義の妥当性がどれほどのものなのかが分からないし、イチョウ葉エキスの摂取が認知症を増やすという事を示唆しているわけではないと思う。対象患者のベースラインにおける平均年齢が79歳と高齢で、少なくともこのような高齢患者に対する認知症予防効果はあまり期待できないのかと感じた。

 薬局店頭においても、相談に来られたお客様に対して積極的な摂取を勧める根拠となる結果ではない。

 一方、有害事象に関しては、プラセボと比較して大きく発生が起こりやすいものも無さそうであり、お客様が積極的な購入の意志を持っておられる場合は、それをあえて止める必要もないのかなという印象を持った。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。