リバーロキサバンとダビガトランで出血リスクに違いはありますか?
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今回は、DOAC(Direct oral anticoagulants)であるリバーロキサバンとダビガトランの出血リスクについて検討されたSR&MAの論文です。
参考文献 Bleeding outcomes associated with rivaroxaban and dabigatran in patients treated for atrial fibrillation: a systematic review and meta-analysis.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28056795
PMID:28056795
研究デザイン:システマティックレビュー&メタ分析
論文のPECO
P:非弁膜症性心房細動患者
E:リバーロキサバン→1581名
C:ダビガトラン→3314名
O:(Primary)出血イベント、頭蓋内出血、消化管出血
(Secondary)脳卒中/全身性塞栓症/TIA、静脈血栓塞栓症、死亡
一次アウトカムは明確か?
→明確
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
4つのバイアス
1、評価者バイアス
5名の評価者が独立してデータ抽出
評価者バイアスはさほど問題なさそう
2、出版バイアス
情報元:EMBASE、Medline、Cochrane Central Registry of Controlled Trials
・英語で書かれたもののみ
・参考文献についても検索している
・ファンネルプロットでは、個人的にはやや左下のデータが欠損しているような印象(これぐらいは問題ないような気もするが・・・)
出版バイアスは大きな問題はなさそうだが、個人的には少し慎重に評価したいと感じた
3、元論文バイアス
→5つの観察研究のみを統合している(観察研究なのでRisk of biasの評価はしていない)
元論文バイアスもさほど問題なさそう
4、異質性バイアス
→Primary outcomeのいずれもI2=0%なので異質性は低いと考えられる
結果
総出血イベント
リバーロキサバン:79/1578件 vs ダビガトラン:124/3311件
OR=1.28 (95%CI:0.95~1.72) I2=0% P=0.11
頭蓋内出血
リバーロキサバン:3/507件 vs ダビガトラン:4/1417件
OR=2.18 (95%CI:0.51~9.25) I2=0% P=0.29
消化管出血
リバーロキサバン:9/507件 vs ダビガトラン:17/1417件
OR=0.98 (95%CI:0.43~2.25) I2=0% P=0.97
リバーロキサバン:32/1581件 vs ダビガトラン:91/3314件
OR=0.81 (95%CI:0.53~1.23) I2=0% P=0.32
リバーロキサバン:7/695件 vs ダビガトラン:8/1593件
OR=2.06 (95%CI:0.73~5.82) I2=0% P=0.17
死亡
リバーロキサバン:45/730件 vs ダビガトラン:100/1627件
OR=1.42 (95%CI:0.99~2.06) I2=38% P=0.06
感想
総出血イベントは有意差こそ出ていないものの、ダビガトランと比較してリバーロキサバンでリスクが高くなる傾向にある。頭蓋内出血は、そもそもイベント発生数が少ないため何とも言えない印象であり、消化管出血は両群でほとんど差が無いという結果。
個人的には、ダビガトランの出血リスクはDOACの中でも高いという認識でいたが、実はリバーロキサバンは更に出血リスクが高い可能性がある事が示唆されており、リバーロキサバンが出血リスクの低いDOACという認識は改めなければならないと感じた。
実際、抗凝固薬の中で出血リスクがどのあたりに位置するのかを検討するためには、他のDOACやワルファリンとの比較に関する論文も探して読んでみる必要がある。
ところで、この2剤間では腎機能についても注意が必要な薬剤である。この辺りも加味する必要はあるであろう。リバーロキサバンの他、アピキサバン、エドキサバンはクレアチニンクリアランス<15mL/minで禁忌となるが、ダビガトランはクレアチニンクリアランス<30mL/minで禁忌とされている。ちなみに、肝消失型薬剤であるワルファリンも、重篤な腎障害患者においては禁忌となっている。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。