日本人ではスタチンにEPAを併用した方がいいですか?

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今回は、高コレステロール血症の日本人患者に対して、スタチンにEPAを併用する事で心血管イベントに変化はあるかをみた研究(JELIS研究)の論文です。

 

参考文献 Effects of eicosapentaenoic acid on major coronary events in hypercholesterolaemic patients (JELIS): a randomised open-label, blinded endpoint analysis.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=17398308

 

PMID:17398308

 

研究デザイン:ランダム化比較試験

 

論文のPECO

P:総コレステロール>6.5mmoL/L(約250mg/dL)の日本人患者18645名

E:スタチンにEPA1800mg/日を併用→9326名

C:スタチン単独→9319名

O:(Primary) 主要冠血管イベント(心臓突然死、致死性・非致死性心筋梗塞、不安定狭心症、血管形成術、ステント挿入、冠動脈バイパス術)

 

 

ランダム化されているか?

→ランダム化されている

 

一次アウトカムは明確か?

→複合アウトカムのようなので明確といえる

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

盲検化されているか?

→PROBE法が用いられている

 

均等に割り付けられているか

→均等に2群に割り付けられていると思われる

 

ITT解析を行われているか?

→ITT解析されている

 

サンプルサイズ

→パワー80%、α=5%で、具体的なサンプル数の設定数に関する記載は見つからず

 

脱落率は結果を覆すほどあるか?

→追跡率=98.9%

 

追跡期間

→平均4.6年

 

結果

【ベースライン】

平均年齢:E群:61歳 C群:61歳

併用スタチン:両群ともにプラバスタチンが60%、シンバスタチンが36~37%

 

主要心血管イベント(Primary outcome

E群:262/9326件(2.8%)vs C群:324/9319件(3.5%)

HR=0.81(95%CI:0.69~0.95) p=0.011  NNT=148名

 

サブグループ解析

①primary prevention(過去に心血管イベント発生が無い患者のみ)

主要心血管イベント

E群:1.4% vs  C群:1.7%

HR=0.82(95%CI:0.63~1.06) p=0.132 

 

②secondary prevention(過去に心血管イベント発生がある患者のみ)

主要心血管イベント

E群:8.7% vs  C群:10.7%

HR=0.81(95%CI:0.66~1.00) p=0.048 

 

感想

 Primary outcomeである主要心血管イベントは、HR=0.81という事でEPAを併用した方が19%ほど減らす事が出来るという結果。ただし平均4.6年の追跡でNNT=148と、服用しなくてもあまり大きな影響は無いのかもしれない。

 この研究は、二重盲検ではなくPROBE法が用いられており、その上で血管形成術、ステント挿入、冠動脈バイパス術などのソフトエンドポイントがアウトカムに含まれているため、解釈には注意が必要であり、結果は割り引いて考える必要がある。

 複合アウトカムに含まれる個々の要素としては、いずれもEPA併用でリスクは低下傾向にはあるが、有意差が出ているのは不安定狭心症のみ(HR=0.78 95%CI:0.62~0.95)で、これもNNT=334と大きなインパクトは無い。

 有害事象としては、吐き気などの消化器症状や、出血がやや増える可能性があるようである。

 EPA製剤は、カプセルも大きく1度に2Capを1日3回の服用が必要、粒状カプセルも飲みにくいと訴える患者さんは結構多いと感じている。その飲みにくさを上回るだけのベネフィットを得られるかは疑問が残るという印象。海外の物などで同様の研究の論文も読んでみる必要がある。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。