2型糖尿病患者に対する低用量アスピリンの一次予防効果は?(JPAD)
ご訪問ありがとうございます。
実は、本日でこのブログも2年目に突入します。
この1年、いろいろありました。いろんな先生方の支えもあり、居酒屋抄読会という企画も5回ほど開催させていただきました。
飽き症の自分が1年も続けることが出来るとは、開始時点では思いもしていませんでしたが、ひとえに支えて下さっている皆様のおかげであります。感謝申し上げます。
2年目の1発目は、2型糖尿病患者に対する低用量アスピリンの一次予防効果を検討した論文(JPAD)です。
参考文献 Low-dose aspirin for primary prevention of atherosclerotic events in patients with type 2 diabetes: a randomized controlled trial.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=18997198
PMID:18997198
研究デザイン:ランダム化比較試験
論文のPECO
P:30~85歳で、動脈硬化性疾患の病歴の無い2型糖尿病患者2536名
E:低用量アスピリン(81または/100mg/日)
C:アスピリン無し
O:(Primary) 動脈硬化性疾患(突然死、冠動脈性・脳血管性・大動脈性の死亡、非致死性急性心筋梗塞、不安定狭心症、狭心症の新規発症、非致死性虚血性・出血性脳卒中、TIA、非致死性大動脈・末梢血管疾患:動脈硬化症、大動脈解離、腸間膜動脈血栓)の複合エンドポイント
除外基準
→心電図におけるST低下、ST上昇、異常Q波、冠動脈心疾患の既往、脳血管疾患の既往、治療を必要する動脈硬化性疾患の既往、心房細動、妊婦、アスピリン・チクロピジン・シロスタゾール・ジピリダモール・トラピジル・ワルファリン・アルガトロバンの服用、重度の胃・十二指腸潰瘍既往、重篤な肝・腎疾患、アスピリンアレルギー
ランダム化されているか?
→ランダム化されている
一次アウトカムは明確か?
→複合アウトカムなので明確と思われる
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
盲検化されているか?
→PROBE法が用いられている
均等に割り付けられているか
→均等に2群に割り付けられていると思われる
ITT解析を行われているか?
→ITT解析されている
サンプルサイズ
→2450名(パワー95%、α=5%)
追跡率は十分か?
→追跡率=92.4%
追跡期間
→中央値4.37年
結果
【ベースライン】
平均年齢:E群:65歳 プラセボ群:64歳
動脈硬化性疾患の複合アウトカム(Primary outcome)
E群:68/1262件(5.4%)13.6/1000人年vs C群:86/1277件(6.7%)17.0/1000人年
HR=0.80(95%CI:0.58~1.10) p=0.16
冠動脈・脳血管性死亡
E群:1/1262件(0.08%)0.2/1000人年vs C群:10/1277件(0.8%)2.0/1000人年
HR=0.10(95%CI:0.01~0.79) p=0.0037
有害事象(Table3)
消化管出血、その他出血、消化管潰瘍などいずれもアスピリン群で多い
感想
Primary outcomeに関しては、アスピリン群と非アスピリン群でHR=0.80と減少傾向はあるが有意差はないという結果。ベースラインの平均年齢は64~65歳で、そこからの4年ほどの追跡なので、もう少し長期間の追跡の結果も気になる所ではある。
冠動脈・脳血管性死亡はアスピリン群で有意に減らす事が出来たという結果であるが、あくまでこれはSecondary outcomeであり、さらに発生数がそもそも多くないので、死亡を減らす事が出来るとは言い切れないと思う。
出血や消化器症状などの有害事象は、アスピリン群で明らかに多い印象であるが、アスピリン服用群ではPPIを併用していた割合はどうだったのか気にはなる・・・。
有害事象のリスクと得られるベネフィットで考えると、過去に動脈硬化性疾患の既往の無い2型糖尿病患者のうち、少なくとも65歳未満の患者では一次予防効果は大きくは期待できないかもしれない。使うにしても、これまで私が読んできた文献の結果から、PPIの併用はした方がいいかなという印象を持っている。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。
そして、2年目も引き続きどうぞよろしくお願い致します。