コリンエステラーゼ阻害薬はアルツハイマー型認知症患者の心筋梗塞・死亡は減らしますか?

ご訪問ありがとうございます。

 

個人的に、ドネペジルの効果に関しては非常に気になっているが、なかなか調べられていなかったため今回1本読んでみました。

 

参考文献 The use of cholinesterase inhibitors and the risk of myocardial infarction and death: a nationwide cohort study in subjects with Alzheimer's disease.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23735859

 

PMID:23735859

 

研究デザインコホート研究

 

論文のPECO

P:アルツハイマー認知症患者7073名(平均年齢79歳)

E:中枢性コリンエステラーゼ阻害剤使用→5159名

C:中枢性コリンエステラーゼ阻害剤使用無し→1914名

O:心筋梗塞、死亡

 

研究対象集団の代表性

スウェーデン認知症登録簿を基にしており、大きな問題は無さそう

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

調節した交絡因子は何か?

→年齢、性別、認知症の混合、同居人の有無、在宅ケア、MMSEスコア、抗うつ薬、神経遮断薬、降圧薬、血糖降下薬、冠血管疾患の既往歴

 

追跡期間

→平均503日

 

結果

(コリンエステラーゼ阻害剤)

E群;心筋梗塞 74/5159名  死亡;427/5159名(571日)

C群;心筋梗塞 42/1914名  死亡;329/1914名(392日)

 

心筋梗塞と死亡の複合

HR=0.66(95%CI:0.56~0.78) NNT=11

 

・死亡

HR=0.64(95%CI:0.54~0.76) NNT=12

 

心筋梗塞

HR=0.62(95%CI:0.40~0.95) NNT=132

 

※E群とC群を1:1でマッチング(3352名)した場合

心筋梗塞と死亡の複合

HR=0.66(95%CI:0.55~0.79)

 

・死亡

HR=0.60(95%CI:0.50~0.72)

 

心筋梗塞

HR=0.52(95%CI:0.32~0.86)

 

(メマンチン)

心筋梗塞と死亡の複合

HR=1.16(95%CI:0.97~1.38)

 

・死亡

HR=1.15(95%CI:0.95~1.38)

 

心筋梗塞

HR=1.22(95%CI:0.76~1.97)

 

感想

 あくまで1つのコホート研究の結果であるが、アルツハイマー認知症患者が中枢性抗コリン薬を使用することで、1年半程度の期間で見ると生存確率は上がるかもしれない事を示唆する結果である。また、心筋梗塞も少ない傾向にある。

 ベースラインの患者条件を見てみると、70代後半~80代前半でありここからの生存という事にはなるが、その中で家族は、本人とやり残したことを出来る時間を捻出できる可能性もある。

 しかし、この1本の論文から寿命が延びるので中枢性抗コリン薬を服用させる方がいいと結論する事は早計と感じているので、MMSEやADAS-cogについて検討したものなど関連論文や、反対に有害事象に関する論文も読んでおかなければならない。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

 

PS 

このような場合、患者からの視点よりも、その介護者や患者の視点という物が重要視される方がいいのではないかというご意見を頂きました。非常にありがたいです。少なくとも、延伸しているのは健康寿命ではないという。非常に難しいですね。

 

私自身、薬局での服薬指導時に患者さんのご家族からお話を伺う機会も多いです。

その中で、患者さんご家族から介護の苦労についてお話を聞かせてもらう事もあれば、「まだまだ一緒にいたい。」、「まだまだ長生きしてほしい。」、「100歳まで生きてほしい。」というような希望を伺うこともあります。

 

認知機能の低下が見られまだ薬を飲んでまで寿命を延ばすということ、難しいテーマです。今回の論文については社内にも持ち込んで、社内抄読会のお題にするか、または、このテーマについてディスカッションする機会を作ってみようかと思います。