厳格な血糖値コントロールで心血管イベントは減らせますか?(ADVANCE)

ご訪問ありがとうございます。

 

今回は、まだ読んでいなかったADVANCE試験の論文を読んでみました。

 

参考文献 Intensive blood glucose control and vascular outcomes in patients with type 2 diabetes.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=18539916

 

PMID:18539916

 

研究デザイン:ランダム化比較試験

 

論文のPECO

P:30歳以上の時点で2型糖尿病と診断された55歳以上の患者のうち、大血管イベントまたは細小血管イベント既往あり、または血管疾患リスクファクターを1つ以上持つ者11140名

E:厳格血糖コントロールHbA1c<6.5%)

C:標準血糖コントロール(その地域のガイドラインに従った目標値)

O:(Primary) 主要な大血管イベント(心血管死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中)、主要細小血管イベント(腎症や網膜症の新規発症や増悪)、また、その複合アウトカム

 

除外基準

→被検薬に対する禁忌、長期間のインスリン療法

 

ランダム化されているか?

→ランダム化されている

 

一次アウトカムは明確か?

→大血管イベント(3つの複合アウトカム)、細小血管イベント(2つの複合アウトカム)、また、大血管イベントと細小血管イベントの複合アウトカムが一次アウトカムとして設定されているため、少し注意かも。

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

盲検化されているか?

→記載が見つからなかったが、HbA1cを測らなければ研究が成り立たないと思われるので、二重盲検は不可能かと思われる。

「An independent End Point Adjudication Committee, unaware of the group assignments」 →PROBE法?

 

均等に割り付けられているか

→均等に2群に割り付けられていると思われる

 

ITT解析を行われているか?

→ITT解析されている

 

サンプルサイズ

→具体的なサンプル数の記載は無い(パワー90%、α=5%)

 

追跡率

→99.8%

※lost to follow-upは厳格コントロール群で7名、標準コントロール群で10名

 

追跡期間

→中央値5年間

 

結果

【ベースライン】

平均年齢:両群ともに66±6歳

 

HbA1cの変化

厳格コントロール群:ベースライン平均7.5% → 治療後6.5%

標準コントロール群:ベースライン平均7.5% → 治療後7.3%

 

【Outcome

主要大血管イベントと、主要細小血管イベントの複合アウトカム(Primary outcome

厳格コントロール群:1009/5571件(18.1%)vs 標準コントロール群:1116/5569件(20.0%)

HR=0.90(95%CI:0.82~0.98) p=0.01

 

主要大血管イベント

厳格コントロール群:557/5571件(10.0%)vs 標準コントロール群:590/5569件(10.6%)

HR=0.94(95%CI:0.84~1.06) p=0.32

 

主要細小血管イベント

厳格コントロール群:526/5571件(9.4%)vs 標準コントロール群:605/5569件(10.9%)

HR=0.86(95%CI:0.77~0.97) p=0.01

 

腎症の新規発症または悪化

厳格コントロール群:230/5571件(4.1%)vs 標準コントロール群:292/5569件(5.2%)

HR=0.79(95%CI:0.66~0.93) p=0.006

 

網膜症の新規発症または悪化

厳格コントロール群:332/5571件(6.0%)vs 標準コントロール群:349/5569件(6.3%)

p=0.50

 

感想

 厳格な血糖コントロール群では、HbA1cが7.5%から6.5%に低下した。一方、標準コントロール群では、7.5%から7.3%への変化であった。

 ところが、血糖値を厳格にコントロールしても大血管イベントは、HR=0.94(95%CI:0.84~1.06) p=0.32と、標準コントロールした場合と変わりなかった。

 細小血管イベントに関しては、HR=0.86(95%CI:0.77~0.97) p=0.01と有意に減っている。標準コントロールに比べ、厳格に血糖をコントロールした場合、14%細小血管イベントを減らす事が出来たという結果だが、網膜症については有意差無しであり、有意差が出ているのは腎症の発症または悪化である。

 腎症についても、HR=0.79(95%CI:0.66~0.93) p=0.006と21%リスクを減らす事が出来るという結果であるが、実際はそもそもどちらにしても発症しない患者が大部分であるところも認識しておく必要があるのではないだろうか。

 

 ACCORD試験の結果も含め、血糖値は厳格にコントロールしても、イベント発生は案外そんなに変わらないかもしれないという印象であります。

 引き続き、VADT試験についても読んでみようと思います。まずは、有名論文を一通り読んでみようかなあと思っています。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。